蝶蝶/喃喃

 酷くなまぬるい惰性のような道に、人知れず影を落としている、その頭上には光があることを拭い去ろうとしたところで、塗り替えることもできずに重く深く包むように秘されている。

 古いふしを併せたこの灌木のささめく声を、触れただけで流れるように、わたしたちのからだは侵蝕されていきます。

 黒く深く溢れ、個々にいて底にいる、どこそこに/かんじあえなくても。「噫、これが皓蛾なのですか。」無垢な薄片は小さく慄えていた。明朗に突き抜けた浄瑠璃で粧し込んだ万華鏡で覗く、ところで これは(ただ色をなくしたミッシング・リンクみたいだ。)

 ……トビウオが白群の大空に翔ける銀龍を、そのおおきなひとみで見聞きしたことを経て、「あなたは憶えているのでしょう。」

 ――鱗や鰭に空の痕跡を引き寄せる、大いなる海の子供たちは、(真っ白な画布に産み落ちた今キミらが、)触れている『死すべき運命』の、その物憂げな生成りの糸を染める、

 さんざ・・・、黄昏時にあって何を紬畫つむぎえがくのか。

〈くだらないほど滑稽な夢物語は膨らんでいく。〉

 神風が吹くときに女神が微笑んでいる、

 対岸を捉えた眼差しの強さを(愛したものは、)ただ一縷のわたつみと藻掻き、そして思う限りの意図は合間を縫うように汲み出されたものです。

 このアステリズムと成り得る光を信じあったからこそ――グロテスクな生き様が 奇っ怪な輝きを放ち、先を争うように沢山の犠牲とともに青い鳥はお花畑に漂着するのだとしても。

 どうせ砂時計に燃え残る、星のかけらを集めた終着駅は夜の中心と或り、定刻通りの晩鐘で街に明かりを灯すのだと云う。噂が独り歩きして寂しげにうたいあげる、それは薄紅の花弁の唄だった。野畑に微笑むのか大輪を放つのかわからないけれども。ただそんな風に背を押されている気がするだけで、言葉が溢れていく。



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