芳墨

 五ツの石は破砕した 台座に統べられたばかりの黄土が度状を繋いでいた、その衝動がどこか 上の空に愛た形を盗み見たような、ただそれだけの骨格を剥ぎ取られたのだと。霊鳥や神獣と祀られる虚栄の狼煙や蹄 その目玉や翼に至るまで、風雪を呑み下した高みに供える 刻は虚ろう影に同じく


キミ未だ哭かず。


 こうなんていうかわちゃわちゃした感じの…不透明な瓶になにか沢山の塊が…靄がかったこの手が敷かれている場の、歪であって。柔らかく富んだものだと…展示されているものすべて、巧く形を定めずに、それでいていいんだよと背の君は言いました。幾ばくもない欠片は冷ややかで消え入りそうで底がない。


 これがモダンな寿命なのだよ。運悪くでも生憎でもいい、外が雨ならば?不条理と立ち止まる、さて巡り合せが悪くガラス張りの室内から明かりが漏れ出ている。いくら払っても塵や埃が舞う、外套は限りなく穢い。道はすぐそこまでを示す街灯が煌々と、眩んでは、その背を押す風だけが生ぬるくウザったい。


 口を挟むような騒音が耳垂れてあり、けたたましい滑舌が発熱球よりまくし立てる。腐った能書きがじっとりとしたバグを引き連れ、グロテスクな家畜を連想させた。だがそれが面妖のせいなのか自分の姿すら曇り硝子の向こうに立つものの、名前すら分からぬ。と告白記を捲るがやはり代筆された芝居じみて。


 ナニか生きているような気が、市街を渡り歩く、光を奪って見た、ひとみ/ひとみ/ひとみ、わたしたちの天使を知っていらして、深海のスケッチからアンタレスまでを、何処を切り取っても氷上の壁にて。そうろう。蕩けるだけの薄闇はひろがり尽くして、ドレープの青が透けるような、這い上がる へぬるさで


 これは胚芽の ひとつの イロケを以て 小さな笑みを咲かせるであろう、今死角に夜せられる青磁の皿に すすぅと手を伸ばしたもの。白いことりの――と ス/ウと溜息がケムに不意て それをまたシケモクの肺で吐き戻した 渋い封緘。言いたかったことのひとつも形にならないままで。散ってしまった痕。


『私が』花に成るのでしょうか。


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