彼方とは

 その陽の影は細々と間に射る 姿形もわからないが。春を連れ山を超え風見鶏を踊らせ せぜらぎ。愛、プラスチックボトルのケセランパサランが何処連れ去られたあとになって/今更/もう遅いって(振り返ること 無く。)ゆらゆらと死戒を装飾するステンドグラスを吐く 破れた声帯から聖体へ受諾する


 彼方とは


 放った吐息が胸を遮り無数の針を突き立て、衝撃のひとつも返さず無駄に縫われた。口を開くこともできずに/ただ白い糸が幾重にも崩れた。遮られた未知はそれでも続いて、幻だ!と。外れた躰ごと抱き寄せそのものに齧りつく。小さな獣、それを飼っていたのは他でもない、自身の枷を握るは想い人だった


 正直外はちいさく折り返されおおきく弓なりに撓り、曲がりくねってへろへろに鈍り光ひとつ見えない。それほどに遠く遥か先にあって死角と絆ぐことが叶わない。根本は平坦で転回するデフォルメが撓み、苦しげであった。狂信者の倒錯的な道が在ったのかもしれないけれど


 息の根を塞ぎ生を吹き込む。まばゆいだけの日々は呪いへ。抱き停めてこの身を蹂躙する、鬱血した熱が耐え難い氷と壊疽していく。既に心は屈服し産み付けられたものは汚泥よりも当然で糞尿より大義があった。私自身ではなく、馴染んでいたよう見せかけ、殺され、不純の奉り。未来の私より愛おしく、あれ


「羽根が在った気がするだけ、なんでしょうけど」……ほらここに。指し示したあたりに、破られた痕があって。――キレイな背が映り込む青写真は大層古ぼけていたので誰なのかもわからない。陽に透かして魅せたが、欠けた場所に天使の忘れ物が丁度いて、それがまた彩雲に梳けて綻ばせ焼き付かせ疼かせる


 知らない男がいる。多分忘れただけだ。ただ白檀の香りだけを頼りに『自分が要る。』それだけの己の姿も声色も性別すら超えてしまったと、鏡の前の己だと模造する。見知っていた、モニターにはじっと影がある。酷似した歩み正確に準じ、この先起こり得る総てを畫き込む(私は。なぜ、易しくわらうのか)


「貴方こそどうしてこんなところへ」等しくほざくが惑いもない。人の皮を被った何か得体の知れないものの、伽藍堂の背をそのままに、武器は効きませんよと飄々と被せ宣う。ことに気づかず視界ごと切断されたようだった。青藍の瞳に還る、(蠟燭がふっと立ち消えたよう、)だが、焔が死に目に刺さり込む、その黄昏。


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