新しい道

それから1週間がたち、琴子は女流棋士に転向し、将棋界に携わり続ける事を選んだ。


 俺は就職活動を始め、ある会社で面接にこぎつけたが、やはりかというツッコミを受けた。


「ところで履歴書に書いてある奨励会とは何のことです?」

「はい、将棋のプロを目指す養成機関で10代より在籍しておりました」

「将棋ねえ……」


 あまりいい反応ではなさそうだ。


 そして数日後その予感は的中した。


「あ、そうですか、ありがとうございます」


 不採用の電話が来た。中々、一般企業への就職は厳しいな。


 そして玄関から誰かが帰って来た音がした玄関に向かうと琴子だった。


「琴子か?今日の対局はどうだった?」

「負けたわ、お兄ちゃんは?」

「中々就職が決まらないな」

「そう、ごめんね私、次の対局の準備があるから部屋にこもるね」


 そう言って琴子は自室にこもった。


 この頃あいつ、対局以外にもいろんな仕事が入っていて結構疲れが見えるな。以前より口数も減っているし。


 その後、父の知り合いの社長さんが俺が元奨励会という話を聞いて、面接したいという話があった為、俺はその面接を受ける事とした。


 何でも会社の将棋部が中々団体戦で勝てないと言うので、入社して入部して欲しいとのことなのだ。


 元奨励会員がアマの大会に出場するには退会後1年が経過している必要がある事も告げ、俺は就職が決まる。


 まさか奨励会経験がこんな形で役に立つとは。

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