第43話 大人の勤め

「はぁはぁ…!!」



息を切らしながら走る幼き少女


フリフリのお姫様の格好をしている彼女はサンだ






「いたぞ!!」




「追え-!!」





「あうっっっ!!!!!」




住民達に襲われながら必死に逃げる、すると目の前に子供しか通れないような隙間を見つけた!!





「よし…ここなら」





隙間の中に急いで隠れるサン






「どこ行きやがった」




「あっちだ!!探せ!!」




どうやら追手を撒けたようだ




「はぁはぁ……ここなら安心」





ホッとしたサン、だが







にゅっ


「ハロー、サンちゃん、脳ミソちょうだい♥️」






「ひっ!?」





サンの耳元に囁く少女、首をろくろ首のように細く長くしたNo.0だ!!








「いやあああああ!!!!!」




No.0に頭をがっしり捕まれるサン!! じたばた暴れるが力が強すぎて離れない!!





「こぉら、暴れないの♥️」




「やめて!!離して!!いや!!いやあ!!」



隙間の中から持ち上げられるサン、万事休すの時だった!!







「!!ぐあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」




ドン!!と何者かの銃声が響きNo.0の頭に直撃した!!





「あうっ!!」



そのまま手から離れるサン、その彼女を受け止めたのは







「ふぅ、護身用の銃を持っていて良かったよ…」




「あ……ジュイチ」




眼鏡をかけた冴えない青年、ジュイチだ




「もーう!!襲いわよ!!」




ポカポカとジュイチを叩くサン




「いててててて!!ごめんごめんね💦」





「で、でも……」



そっぽを向きながら顔を赤くするサン




「助けてくれて…ありがとう…( 〃〃)」






「…………」





「うん」




ジュイチもクスリと笑って返した




サンをそっと降ろし手を繋ぐ





「さっき撃ったのは麻酔銃だから暫く起きないはずだ」




「よく作ったねそんなの💧」



たはは💧と頬をポリポリしながらジュイチも教える




「僕には戦う力が無いからね😅代わりにこういう護身用の物を作っておくしかないんだ」




 「…………」




その言葉を聞いてサンも微笑む





「(嘘だよ…武器を作れるなんて立派な才能だもの……ジュイチ、自分では気づいてないけどあなたは)」










「(凄い人だよ)」





ふぅと息を吐くジュイチ




「よし、話も長くなったし危ないからそろそろ」




ジュイチが言いかけたその時だった!!









ぐしゅっ






「………かはっ」




背後から何者かに刺される音



刃に貫かれる生暖かい感覚






「………俺達の犠牲になってくれるってか」



 


「イ…イチ……!!」




ボヤける視界の中、振り向くと自分を指してるイチの姿がそこにあった





「あ…あ……」




ジュイチが自分の肩に倒れるのを目の前で見たサン




段々と彼の肌の感触が…冷たくなっていく…






「いやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」



泣き崩れるサン、いくら呼んでもジュイチは返事をしない







「はぁはぁ…そんなわけないでしょ……なんか人間の肌のように語ってるけど、あんた達はオートマタ……元々冷たいんだから」




後ろから息を切らしてやってくるNo.0




「おせーぞ、どうしたんだ?



いつものお前ならあんな銃弾余裕で交わせただろ」






「わからない……何故か鈍った」


 



自分でも不思議とわからないNo.0、どうして自分の調子がいつも通りでない?




知らないのも無理はないはずである。





何故なら全て【過去が干渉しているのだから】





------ 過去 -----




一方のジューサは過去でレイを殺しまくっていた




そして次にたどり着いたのはイチとレイと3人でテンと遭遇したあの時間(10話)





「どうして…管理者は人々を守る存在じゃなかったんですか!?」




「正義の管理者がいるなら、裏切り者の悪の管理者もいるに決まってるじゃ~ん♪」





隠れて聞いているジューサ




同じ場所、同じ言葉、あの時と同じシーン



けどひとつ違うのはあの時の自分ならテンに怒りをぶつけていた




けど今はもう違う、テンのその言葉を聞いて胸に手を当て思う





「テン、君は………」






「【自らを裏切り者の悪者にしてナクヨとミナゴを助けるために演技】を………!!」




それとは対極な事もわかっている。次のイチの言葉だ

 




「レイ…下がってろ…俺は今無性に腹が立っている」





パッと見、レイを守る為に前に出てくれているように見える。けど真相を知ったから









「(【俺の計画の邪魔をしやがって!!!!レイを殺すのだ俺だ!!!!!】)」



 



「…………!!」




悲しいけどこれが現実



震える手は悲しみと怒りが混じあった震え



深呼吸をし、震える手を落ち着かせる





そして剣を抜き背後から姿を現す!!





「いや!!レイを殺すのは!!」





「!?なに!?」



「誰だ!?」





そしてレイに向かって勢いよく飛んでいった!!





「レイを殺すのは…僕だああああああああああああああああああああああああ!!!!!」





「…………」



自分の所に剣を構え飛んでくるジューサ




しかしそれを見て驚くこともなく安堵した目でまるで受け入れるかのように立つ過去のレイは両手を広げた








「………ジューサ」











   ザシュッ











------ 現代 -------





「!?うああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!!!!!!!!」





「!?どうした!?」




突如大声で苦しみ出すNo.0に驚くイチ






「ああああ…苦しい…痛い……」





「(…何がおきてんだ?)


………まあ、良いか」







「ジュイチ!!ねぇ、ジュイチってば!!」




必死にジュイチを呼ぶ前に立つサン、その前にイチが立つ





「あっ………」






「お前らを殺して脳ミソを奪えば良い話だ……


ジュイチの持つあらゆる物を作れる【ビルディング=システム】そしてお前の持つ鳥の姿に自分を変えられる【バードランス=システム】


……そうか、もう使えないんだったよな



秒が戻ってしまったから、鳥の姿でいられなくなった」






刃をサンの頬に向ける



「あ…あ……」





「お前もう【無個性】ってこった




………じゃあな」





剣をサンに振り下ろす!!




「……っ!!」




目を瞑り覚悟したサン、だが!!






「………っ!!」 






グサッ






「なっ……!!」







「え………」





目の前に立つ青年、左手にはいつの間に出したか槍を持っている




「はぁはぁ………させるか、絶対に守る!!」





「………ジュイチ!!」




泣きながら喜ぶサン






「何故…その槍どこから……」




ふっと笑みを浮かべるジュイチ




「君が教えてくれたんじゃないか…僕のそのビルディング=システム、あらゆる物を作れるんだよね?つまりは【材料が無くても願えば物を具現化出来る】ってことで良いかな?」




 「……!!」



しまったとイチ





「まさか…さっきの銃も…?」



 へへっと笑い答える




「ああ、種明かしするとこの前願ってみたら出たんだよ

【こんな戦闘ができない僕でもみんなを守れる力が欲しい】ってね」






ジュイチは何も個性がない存在ではなかった








とても充分強かったのだ!!






「不覚…お前だけでも逃げれば良いものを…」





倒れる間際にそう言ったイチ、けどジュイチは横に首を降る





「そうはいかないよ、最後まで子供を守るのは





【大人の勤め】だからね」







イチが倒れるのを確認し、サンの方を振り向くジュイチ




「さぁ…逃げよう」


 

「うん…でも」




 考えるサン、ジュイチはボロボロ、歩けるような体力はもう無いだろう、どうすれば






「………願ってみる」 





「え」






「イチが願えば力が具現化したように私も!!」





手を合わせまるで神に祈るような姿勢になるサン





「(お願い…鳥になれなくても良い…どうかジュイチをここから助け出せる力を…!!)」





深く願い続けた







すると







「あ………」







バサッ







サンの思いに答えたのか、背中に大きな翼が広がった!!!!!






「バードランス=システム…これが私の本当の力」





「あ……」




鳥にも見える、天使にも見えるその姿にジュイチは見惚れてしまった






「なんて…美しいんだ」





「さぁ、ジュイチ」




ジュイチに手を差しのべるサン






「行くよ」






「………うん」





サンの手を握り二人は飛び立った




























ズドオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオンンンンンンンンンンンンンンンン!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!










筈だった





「……………!!」




 

真っ黒焦げになり再び地に落ちる二人


   






「………飛ばせねぇよ、地に落ちろ哀れな雛鳥が






お前は一生飛べねー雛鳥だよ…サン」








刺された部分を支えながらイチが立つ






「ここまで良いシチュエーションだったな…ま




俺の【ファーストップ=システム】の前じゃ無意味だけどな」





そうだった、イチにはあったのだ



一秒先を見ることが出来る能力【ファーストップ=システム】が




全て自分が刺される事も、サンが能力を解放することも把握していたのだ





「だから予め地雷を設置しといたんだよ」




サンを蹴飛ばし背を向け彼女の翼をブチッとむしりとる!!







「!!………っ!!」






「ははは、焼き焦げた痛みで悲鳴すらもうでねーかwwwけどなあ、こんなの俺にとっちゃ日常茶飯事だったんだよ」





 

グサッ





「【戦争の中を生きてきた半人間】の俺の中ではな」






最後にサンを片手剣の刃で突き刺した



それはまるで餓えた猟師が野生の鳥を絞めて殺すかのように







「うう……ぐ………」


 


恥でうずくまっているNo.0に話しかける





「おい!!いつまで苦しんでんだ!!速く脳を取れ!!」






「はぁはぁ……うるさい」


 



苦しみながらよたよたとイチの方に向かうNo.0




「だったら…自分が取って私に食べさせてよ」



   



「………しゃーねーな」



 

ジュイチとサンの頭を開け脳を取る






「……さっきの爆撃て香ばしくこんがり焼けてなきゃ良いけどな」






「はぁはぁ……そんな風になってたら殺すからね!?」




 



ジュイチとサンも脱落







それを屋根の上から見ていたサンタの格好をした少女が一人







 「……ふーん」








- 続く -


















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