第21話 泣き虫女の子と皆殺し男の子
「375(ミナゴ)…?」
時止めの狭間の中で襲いかかってきたジューサと向かい合う少年【375(ミナゴ)】、なんと彼はジューサそっくりなのだ
「(そういえばテンが言っていた…)」
ジューサは思い出した、以前テンが言っていた言葉
「【794(ナクヨ)と】【375(ミナゴ)】の為」
テンが魂を狩り時止めの狭間に閉じ込める理由である本人の1人だ
「……」
ジューサは恐る恐る、それでいて鋭い目付きでミナゴに訪ねる
「……テンっていうカボチャ頭を知ってるか?」
「!!」
その言葉を聞いてさっきまで冷めた目付きで襲いかかってきたミナゴの目付きがまるで殺意の籠った憎悪の眼差しに変わる!!
「貴様……テンに何かしたというのか」
「ふふっ、したというよりかはされたんだけどね」
少しずつ冷や汗をかきながらも嘲笑し煽るジューサ
そんな彼にミナゴは怒りを爆発させる!!
「黙れ!! よくもテンを…!!」
サーベルに憎悪の念を込めるミナゴ、そして不気味に呟く
「18782(嫌な奴)…18782(嫌な奴)……」
「(!!雰囲気が変わった!!)」
警戒し構える姿勢を直すジューサ、その時だった!!
ヒュンッ!!
「(!!いなっ)」
目の前のミナゴが一瞬にして消えた!!
次の瞬間!!
ガキイン!!
「37564(みなごろし)!!!!!」
「(なっ!!速い!!)」
咄嗟に自分のサーベルを構えて何とかミナゴのサーベルを防いだジューサ!!間一髪だった!!
「(憎しみ…憎悪で身体能力が上昇するのか……!?)」
しかしそんなことを考える暇もなくミナゴはまるで狂人になったようにがむしゃらにサーベルを振り回してきて、ガキイン!!、ガキイン!!とそれを防ぐジューサのサーベルの音と交じり合い何もない時止めの空間に響き広がる!!
「(な、何て乱暴に…なにも考えないで戦ってくるのは僕の苦手なタイプだ!!)」
冷静なジューサの苦手とする相手、それは今のミナゴのように【何も考えずがむしゃらに攻めてくる敵】なのだ、考える隙が見つからないからである
「皆殺し!!
皆殺し!!」
「くうううっ!!」
押されるジューサ
そんなことはどうでも良いようにミナゴは皆殺しと叫びながら攻め続ける!!
「僕は375…」
「【18782(嫌な奴)】+【18782(嫌な奴)】は
【(375)64(みなごろし)】の
【375(ミナゴ)】だあああああああ!!!!!」
「(…【64(ろし)】の部分は何処だ!?)」
そんなこと考えてる暇はないジューサだった
- その頃レイ -
「ううううう……えぐ……ぐす…」
しゃがみこんで泣き続けるレイそっくりな女の子、彼女の名前は【794(ナクヨ)】というらしい
「(ナクヨ……)」
その言葉にレイ頭の中で何かが浮かぶ
「(……【うぐいす平安京】は何処だろう!!)」
いや、そこじゃなかった
レイも思い出した
テンが言っていた「【ナクヨ】と【ミナゴ】の為」というあの言葉、テンの大きな行動理由の1つ
「………」
レイはしゃがみこみ、にこりと笑いナクヨに優しく訪ねる
「…ねぇ、ナクヨちゃん、テンっていうカボチャ頭の人を知ってるかな?」
「えぐ……?」
その言葉に一瞬泣き止みレイの方を振り向くナクヨ
「……テンちゃん、知ってるの?」
「(テンちゃんって呼んでるんだ…)うん、私ね、その人に大切な物いっぱい取られちゃったんだ」
その言葉にミナゴの目は大きく見開く
「…!! テンちゃん、まさか私達の為にやっぱり悪いことしてたの!?」
「あ、うん…私達から見るとそうだね」
レイはナクヨの言葉に一瞬にして疑問を浮かぶ
「……?私達の為にやっぱりってナクヨちゃんは知ってたの?」
ナクヨは大きく頭を縦に降る!!
「うん!! もう!!テンちゃん、悪いことしちゃ駄目って言ったのに-!!
うえええええええええん!!!!!!!」
また大泣きし始めるナクヨ、それにおどおどと「ああ!!泣かないで!!」と宥めるレイ
ナクヨが落ち着いたところでレイは訪ね直す
「それでね…私達【秒】っていう、私達の世界の時間を動かす物を取られてここに隠されちゃったの……ナクヨちゃん、何処にあるかわかるかな?」
ナクヨは素直に頷く
「うん…知ってるよ?」
その言葉にレイの表情は明るくなる
「良かった!! ごめんね!! もし良かったら秒の所まで案内してくれないかな?
それはお姉ちゃん達の世界でどーしても必要な物なの!!!!!
……お願いできる?」
まるで妹に…小さな子供に聞くように姉のように母のように訪ねるレイ、それにナクヨは嫌がる素振りもなく、寧ろ申し訳なさそうな顔で答える
「うん…わかった、レイちゃん達の世界に必要な物なんだよね…それなら返さないと」
「(いいこ!!)ありがとうナクヨちゃん!!
ごめんね!!我が儘言っちゃって」
ナクヨは横に首を降りそれは違うよと
「ううん、テンちゃんを止めないでレイちゃん達の大事な物取っちゃったのはこっちだもん…こちらこそごめんなさい」
深く頭を下げたあとナクヨは背を向けて指を右の方角へと指す
そしてレイの方を向き直り不器用そうな笑顔で
「こっちだよ」
「うん!!行こう!!」
- その頃ジューサ -
「皆殺し!!皆殺し!!皆殺し!!」
「うっ、くっ!!」
ガキイン!!ガキイン!!とサーベルを振り回すミナゴに対して防ぐのが精一杯のジューサ
「お……落ち着け!!」
しかし隙を見てミナゴの右足に自分の右足をかけ、体勢を崩させる!!
「うっ!!」
「(今だ!!)」
一瞬で消え、ミナゴの背後に回るジューサ
「貰った!!」
首元を狙い気絶させることが目的だった
だが!!
「……【鉄砲!!】」
「!!何!?」
ミナゴの背中から突如鉄砲が現れたのだ!!
しかもそれは現代の鉄砲とは違いそれこそ戦国時代で使っていそうな鉄砲だ!!
ダアンッ!!と弾が放たれる!!
「くそっ!!」
左の膝にかすり血が出たが何とかギリギリ避けることができた
「あっ!!」
勢い置く反動で転がるジューサ
「…やはりこの時代の鉄砲は中々当たらないか」
ちっ、と舌打ちをするミナゴ、そのまま体勢を立て直し倒れたジューサの方を振り向く
「…な、何故鉄砲が…!!しかもこの時代の物じゃ…!!」
左膝を負傷し、立てないジューサ
そこにミナゴがゆっくりと歩いてくる
「そうだ……【ドリル】!!」
すると今度はミナゴの左手が現代でも使われているようなドリルに!!
「まだ驚くなよ…【アノマロカリス】!!」
更に両足が古代生物のアノマロカリスに!!
「【ドラゴン】!!」
今度は背中がファンタジー作品に出てくるようなドラゴンの翼に!!
「僕は……」
そして信じられないことを言う
「体の一部を【あらゆる時代、あらゆる世界、あらゆるフィクションに登場する【攻撃に使えるような物質】に変えることが出来る】んだ」
「なっ!!」
その言葉に驚愕した
まさか365だけでなくレイ達のいた世界、あらゆる時代、そして空想であるファンタジーやSF、都市伝説に登場する攻撃的な物に体のパーツを変えることが出来るというのだ
「どんな遺伝子を持っているんだ君は…!!」
驚くジューサに構わずドラゴンの翼を広げ飛来する!!
お喋りは終わりだ」
そしてジューサ目掛けてドリルを構え、勢いを付け急降下しドリルを回転!!更に下のアノマロカリスのおお顎を広げジューサに向かう!!
「18782(嫌な奴)、18728(嫌な奴)
37564(皆殺し)!!!!!」
「うっ、うわあああああ!!!!」
動けないジューサにミナゴが急降下して迫ってくる!! その時だった!!
「やめてえええええ!!」
泣きながら1人の少女がジューサの前に立つ!!
それはナクヨだ!!
「ジューサ!!」
更に遅れてレイも来る!!
「レイ!!」
ナクヨは両手を上げて目を瞑り泣きながら叫ぶ
「【ヘルメット】オオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!」
するとナクヨの両手が光り輝き巨大なヘルメットとなり3人を守るように囲む!!
「え!?」
「なっ!!」
それに驚くレイとジューサ、ミナゴも「何!?」と攻撃の勢いを押さえられずヘルメットにドリルが辺り反動で吹っ飛んだ!!
「うあっ!!」
回転しながら体勢を立て直すミナゴ
「はぁはぁ…ナクヨ!!邪魔するな!!」
「止めてお願いミナゴ!!、この二人は敵じゃないよ!!」
二人を見てポカンとするレイ
「ナ、ナクヨちゃん、い、今の何!?」
あっ、とレイの方を振り向きナクヨは説明する
「うん…私はね
体の一部を【あらゆる時代、あらゆる世界、あらゆるフィクションに登場する【守りに使えるような物質】】に変えることが出来るの」
「!!」
その言葉に二人は驚く
ジューサも訪ねる
「…つまり君はそこのミナゴとは逆…防御型ということかい?」
ナクヨは頷く
体の一部を攻撃的に出来るミナゴ
体の一部を防御に特化することが出来るナクヨ
まるで対照的な二人だ
「一体君達は何者なんだ…」
ジューサの言葉に二人は横に並び答える
「…僕達は【あらゆる記憶を遺伝子に組み込まれて造られた】」
「双子の…【人造人間】」
- 続く -
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