第16話 この彼岸花を月に届けて

草原を歩いている一人の少女


長い臙脂色の髪と瞳をした少女は両手に彼岸花を抱え365の空からも見える月を見上げる



「届けなくてはのう…時が止まった今だからこそ、ずっと満月に近くいられる



そう






【ワシの故郷】に」




年寄りじみた口調の13歳ほどに見える少女、その美しき臙脂の瞳で見つめるのは時が止まりずっと輝く永遠の満月、それは彼女の故郷



そう彼女は






【月星人】なのである









「あっ!!満月!!」



窓から空を見上げるレイ、その美しく大きな満月に目を輝かせる





「きれ~



って関心てるばあいじゃない!! 時が止まっちゃったからずっと満月なんだ!! これじゃほんとは駄目なんだって!!💦」



腕をぞい!!と構え我に帰るレイ




「…でもきれ~」



でも綺麗な物は綺麗なのだ!!






「…ん?」



ふと空を見上げると満月の前に影が見える





「なんだろ…なんかこっち近づいてない!?」




影が段々とレイの目線に近くなってくる



なんかこっち来てるような



いや、確定で来てるな


  



「え!? え!?わああああああ!!!!!こっちに来る!!こないでええええええ!!!!!」


そのまま勢いおく窓ガラスを割りながらガッシャーン!!と入ってきた!!



影が赤くなり横たわるのは臙脂色の髪と目をした少女



「うん…え!?女の子!?」





「うう…」




「だ、大丈夫ですか!?」




倒れる少女は力無く答える





「は…腹」




「へ? お腹?」






「腹が…減った








ガクッ」







「ちょ!? えっ



えええええええええ!?」




 そのまま意識を失って倒れてしまった!!









~暫くして(最近便利だなこの言葉)




「ぱくぱくぱくぱく!!いや~すまぬなお主!!死ぬところが何とか生き返ったわい!!」




「あっ、あはは…(凄い食欲)」





臙脂の少女はレイに出されたこの世界のお団子【ダンゴン】を凄い勢いで食べる





「あっ、あの…どうして空から降ってきて」



恐る恐るレイは少女に尋ねる




「ん? おお!!そうじゃったな」



最後のダンゴンを上に投げパックン!!とキャッチ!! そのままゴックンと飲み込みレイの前で微笑む




「(お茶飲まないでつっかかんないの!?)」





「自己紹介が遅れたのう、ワシの名は【クゥー】9月の管理者じゃ!!」



「え!?管理者さんだったんですか!!」



管理者と聞いてあたふた慌ててレイは姿勢を正す




「ああいやまあまあ、そんな畏まらないでよい、お主の見た目的にもワシと歳が近そうだしな」




「あっ、はぁ…」



確かにレイとクゥーはタメに見える




しかしクゥーの次の発言で「いや、畏まらなきゃ駄目でしょ」となり綺麗に正した正座を崩さないと誓った








「まあ…ワシ【5500歳】じゃからお主達よりも遥かに歳上じゃがな!!ガッハッハッー!!」



「…………(2行上に戻る⬆️)」








そして正座を崩さないままのレイにクゥーが訳を話す、クゥーが指を指したのは割れた窓の上に浮かぶ綺麗な満月





「月に行こうとしたんじゃ」



「」





「はい?」





「お主今一瞬鼻で笑わなかったか?」





「い、いえ…」



内心もう何がなんだかわからなくて鼻で笑うしかないなんて言えない






「何故…お月様に?」



理解が追い付かないままレイは恐る恐る聞く





「うむ、これじゃ」



うむ、これじゃと後ろから取り出したのは赤い花





「えっと、これって確か」





「【彼岸花】じゃ、お主達の元の世界でもあるはずじゃろ?」




「あっ、はい、確かにありますけども」



365にあるかどうかはわからない、一体何処から持ってきたのだろうか、彼女が元の世界にいた頃に持ってきたのだろうか、時が止まったお陰で枯れない状態でずっと保っているのだろうかレイの頭の中が疑問の疑問でいっぱいになる




「この彼岸花をな、ワシの故郷である月に持っていく予定だったのじゃ」




「はあ、なるほど…」










「ん?」






今故郷って言いました? byレイの心






「実はワシ【月星人(げっせいじん)】でなあ、ワシが旅行でお主達の元の世界に行った時【ある男】から貰ったのじゃ」







んんんんんんんん?





お願いこれ以上疑問を増やさないでくださいbyレイの心






「えっと…つまり纏めると」



ちんぷんかんぷんのままレイが纏めてみる






「クゥーさんは5500歳のお月さまに暮らす月星人で私達の元の世界(現実世界)に行った時にとある人から彼岸花を貰ったと」





うむ!!と力強く頷くクゥー





「理解が速いの~お主!!、時が止まったお陰で彼岸花も枯れなくてすんだわい!!」




「ああは…良かったですね」


 

気を取り直してレイはそれでと聞く





「何故お月様に彼岸花を?」





「ほら、お主達の世界には【秋のお彼岸】というのがあるじゃろ?」




「あっ、そっか」




レイは理解した、恐らくクゥーが出会った現実世界のとある人物に【この世界には9月に秋のお彼岸という行事がある】と教えて貰ったのだろう




「月星人だって命はあるし墓場はあるのじゃ」



つまりクゥーは満月に向かい故郷にある墓地に彼岸花を供えたいのだろう





「しかしのう…腹が減って途中でエネルギーが切れてしまったワイ」




なるほど、それで燃料切れでこっちに落ちてきたとレイは理解する。いや、そのまま真っ直ぐ落ちないのも器用だけども!!





「お主達の世界の人間には感謝している、9月の管理者として守らなければいけない行事が増えたワイ、今までは十五夜だけだったからのう」




「なるほど…」












「(あれ?でも)」




レイは頭の中に何か引っ掛かる





「(お彼岸ってお墓に彼岸花お供えして良いんだったっけ?確か昔おばあちゃんに教えて貰ったような)」




記憶の深く深く辿っていくレイ






「さてと…そろそろ行くかのう」




考え込んでいるレイを他所にクゥーは立ち上がる





「…あっ!!ちょっと!!」




「お陰で月に帰る力もついた、いや~、365と故郷を直ぐに行き来出来るなんてワシは何て恵まれているのじゃろうか」




そう言いながらクゥーの頭からぴょん!!と2つ兎の耳が!!




「これは髪の毛じゃ、もふもふじゃ」




「もふもふ…ってそうじゃなくて!!



あの!!」




「ん?」






「私も月に連れていってくれませんか!?


気になることがあるんです!!



何か記憶に引っ掛かるような…」




「なんじゃと?」






「お願いします!!!!!」




レイはクゥーに顔を近づけ頼む、急に顔を近づけてきたからおっとりしていたクゥーも目を丸くするが、冷静になりレイを見つめる





「………」







  


「…真剣じゃな、年の功で本気度がわかるわい」




「じゃ,じゃあ」




「まあ、食事をくれたしな、礼にワシの故郷に連れてってやろう」




「!!」





「ありがとうございます!!!!!」




近づくレイ





「じゃ!!じゃから近いわい!!」




「必ず何か記憶に引っ掛かるものがあるんです!!彼岸花について、おばあちゃんに教えて貰ったことが…!!」




「わかった、わかった、ワシの故郷を堪能しながらゆっくり思い出すと良い」




そう言いながらクゥーは背を向けちょいちょいと





「…乗れってことですか?」




「他に何があると言うんじゃ」





「…大丈夫なんですか?」




「月星人の力量をなめるでない、お主の世界のハイ◯ースなら指一本で持ち上げることが出来るわい」




「…信じます」




クゥーにおぶさるレイ





そのままクゥーの頭のウサミミがピョコピョコ動き気合いに満ちてるのがわかる




「じゃから毛じゃ」



「…モフッて良いですか?」




「今は力抜けるからやめて」





そしてそのまま足を曲げて兎が跳ぶように構える








「よし」











「跳ぶぞ!!!!」




そのまま勢いよく満月に跳躍した!!






「えっ!びゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」





高い高いこわいいいい!!と叫ぶレイ





「我慢せい!!


…そう言えばお主の名前聞いてなかったのう」





レイも落ち着いて呼吸を整えながら答える





「はぁはぁ…レイです0月の管理者やってます」





「お主が最近噂の…0月…レイ…良い名前じゃのう」





「ま、まあ、仮名ですけどね」






「…所でお主よ」



「はい?」








「幽霊なら自分で浮遊できたんじゃなかろうか?」






「………」





  


 










「…クゥーさんの耳もふりたい」






「今やめてね?ホントに(だから毛!!)」



てか最初に乗れって言ったのクゥーなのに










「…さて、着いたぞ」



ゆっくりと月面に着地するクゥー、レイも背中から降りて周りと見てみると目が飛び出るほど驚いた





「……お団子」







🎑



「建物が全部お月見団子でできてるうううう!?」





そう、この星では建物が全部お月見団子!!



さらには辺り一面に臼!!




まさに【ウサギの餅月!!】






「あっ!!クゥー帰ってきたのかぴょん?」



後ろから他の月星人達が話しかけてくる





「おおー、丁度昨日旅行から帰ってきたばっかでのう」




そんな月星人達のやり取りを見ているレイはジト目になって気になる





ぴょこぴょこ



ぴょこぴょこ






「(…皆してウサミミ…いや、髪の毛が動いてる)」




恐らく月星人は皆そういう髪型なのだろうとレイは悟りにはいる






ぴょこぴょこ



ぴょこぴょこ





「(…ホントに髪の毛だよね?)」



てか昨日365に帰ってきたばかりなのかと




「それでな~これを見るとよい」




クゥーは他の月星人達に彼岸花を見せる






「おお!!不思議な花だぴょん!!」




「お彼岸にはお墓にこの花を供えるのが向こうの世界の風習らしくての~」





「なるほどぴょん!!きっと供えればご先祖様達も喜んでくれるぴょん!!」



さっさっと言ってくるぴょんと月星人達はクゥーの背中を押す





「ああわかっとるわかっとる!!おすでない!!」




「ああちょっと!!」





慌ててレイも着いていく










二人で歩いている途中でレイが尋ねる




「そういえば何故お月様だけ365も私の世界も行き来できるのでしょう」



クゥーはそれはなあと指をたてて教えてくれた





「月には【境界線】がない、空に浮かんでどんな次元の世界も見渡すことが出来るのじゃ」




「へえ~」




どんなに異世界があっても、空に浮かぶ月は全ての世界を見渡すのは共通している一つらしい





「所でお主よ」


それはそれとしてクゥーは話を切り替える



「はい?」




「月に来たのは良いが酸素は大丈夫なのかの?」




「へ、酸素?」






あっ、そういえばここ月じゃんと思い出しレイの顔がサーッと真っ青になっていく






「い…息が!!息が!!息があああああああ!!!!!」




慌ててバタバタするレイ、しかし冷静になってみると






「息が…あれ?」




なんと、息ができるのだ





「何で…? なんここに効力とかってあるんですか?」



クゥーは首を横に降る




「いや、月で何も無しに生きれるのは月星人のみじゃ、お主は元々人間じゃろ?」




「あっ、はい…」





「不思議な奴じゃのお




お主…もしかして【本当に幽霊】なんじゃないかの?」






「え?いや、まさかあ!!」




だって一応感情あるし食事も出来るしジューサも幽霊のコスプレって言ってたし、だけどと悩むレイ








「(…ホントに私が【死んでたらと】したらこれは一体


私って



ホントに【生きてる】の?)」




そう考えてるレイを気にせずクゥーが「着いたぞ」とレイを考えさせるのを止めさせる






「あ…ここが」




~ 【月星人の墓場】 ~



特にレイの元の世界とも変わらない墓場だ


しかし辺り一面は何故か更地である






「…お花の一本もない」




クゥーは頷く



「うむ、月では花が育てられる環境ではない、だから今まで墓石にも花を添えられなかった



しかし」





クゥーは彼岸花を取り出す





「秋のお彼岸を守るのは9月の管理者の役目と教えて貰った、時が止まりいつでもお彼岸になることができた。極楽浄土に繋がりやすい


これを教えてくれたお主の世界の男には感謝してもしきれん、さて、この花を供えて極楽浄土のご先祖様に弔いと思いが伝わるといいのう」




クゥーは彼岸花を墓地に供え、手を合わせ弔う


「ご先祖様、亡き我が同胞達よ…ほれ、月にもようやく花がやってきたぞ」



「……」



レイも手を合わせ目を瞑る…





そんな時だった






「……ん?なんじゃ?」




何か紫の煙が漂ってくる



「げほっ、苦しい…」




レイも目を開けコホコホと咳き込む





「うっ、ごほ…一体何処から」




クゥーが目を向けた先





煙の出所は








彼岸花だった





「これ…毒ガスですよ…何で…」




苦しみに耐えながら原因を考えるレイ…そして




「……あ!!思い出した」





思い出したのだ、おばあちゃんとの会話を!!




---------------------



「おばあちゃん、この赤いお花なーに?」



「それはねえ、彼岸花よ~お彼岸の頃に咲く不思議な花なの」




「じゃあお墓にお供えしていいお花なんだ!!」




「んー、それは駄目よ」




「ええ!?何で!?お彼岸の頃に咲くお花なのに!!」





「彼岸花はね~」


















「【毒がある】から供えちゃいけないの」





----------------------



「!!クゥーさん、彼岸花を取って、折って捨てて!!」




「!? わかった!!」





口元を押さえながらクゥーは供えた彼岸花を手に戻しペキッ!!と折る!!





「はぁはぁ…まさかこの花に毒があるとはのう」



「おばあちゃんの言葉を思い出せて良かったです…後花言葉」




「花言葉じゃと?」




「彼岸花には【情熱】等いい花言葉もあります



けど」














「【諦め】など後ろ向きな言葉もあるらしいんです」





「……!!」



その言葉を聞き目を大きく開くクゥー





「じゃ、じゃあワシにお彼岸に彼岸花を供えろと言ったあの男は…」





「恐らく嘘、いえ、多分【この花の毒で月を諦めろ】って言いたかったかのしれません、この彼岸花を供えて毒で月星人を全て滅ぼすつもりだったんでしょう」





「そんな…騙されたというのか」



地面に手を付き、落ち込むクゥー




「……」




そんなクゥーの背中に手を当てレイは励ます




「…レイ?」




「まだ希望はあります



何も【私達の元の世界の花を】供える必要はないと思うんです




きっと【365の花でも】大丈夫だと思います」






「……!!」



クゥーは立ち上がる






「……レイよ」



「…はい」







「一度…365に降りようかの」




レイも微笑み







「はい、探しましょう


【365のお彼岸に供えられるお花】を!!!!!」







それから数日が立ち(時間は止まってる)





「良かったですね、ジューサに聞いて正解でした」




365に戻ったレイ達は植物に詳しいジューサに聞いてみた



すると教えて貰ったのは【菊の花】



なんと365にも咲いていたのだ!!




月に戻った二人は菊の花を墓に供え、改めて手を合わせる





「…本当にお主達には感謝しておる」


目を開いたクゥーはレイに礼を言う




「いえ、良かったです、ホントにお役に立てて」





「これからも、何かワシが困っていたら助けを頼めるかの?」




「……!!」





レイを満面の笑みで












「はい!!喜んで!!」




頼りにされた嬉しさを込めて答えた!!






その頃ジューサは考えていた、クゥーに彼岸花を渡した犯人の事を




「(普通に考えたらテン辺りだろうが…何故月星人までも?)」



腕を組んで考え続ける









~ レイ達の元の世界 ~




「ねー、あいつら絶対僕が彼岸花渡してると思ってるじゃん」



ブーブーと文句を垂れているのはテン、話を聞くになんと【彼ではない】らしい





「君のせいだからね!!ブーブー!!」




話し相手の男はニヤニヤと笑いながら




「いや、それだけは君の今までの日頃の行いだろう」





「…にしても何で月星人まで?クゥーだけで良かったんじゃない」






「いや…滅ぼしたいからね」




男の口は更に広くニヤリと不気味に笑みを浮かべる












「【管理者は全て滅ぼす…彼らの故郷すらも全部】



逃げ場は…作らせないよ?」






- 続く -




























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