第14話 春の嘘つき

「おーい!!」


町中を1人の少女がバタバタ走ってくる


身長は小さく格好は幼げ、赤い瞳で桃色の髪に頭の左上には桜の紋章を着けて、その中に【4】と書かれている





「ギガントオロチが出たぞ~!!!!」




「な、なにいいいいい!?」



「逃げないと!!」



「きゃああ!!助けてええええ!!」




と町中の人間はわーきゃー大パニック!!




全員遠くの方や自分の家の中に避難し町の人はすっからかん!!




…しかし1人残された少女は不適な笑みを浮かべている






「にっしっしっ」








「うっそだよ~エイプリルフール大成功!!」




そう、彼女こそ4月の管理者【シィ】





【嘘つき少女】



なのだ






ぱたぱたと走るシィは目の前でニーを発見した



「あっ!!ニーお姉ちゃん!!」



元気よく、あざとくニーの元に走っていくシィ



「あら?シィどうしたの?」



子供に合わせてしゃがんでくれるニー、シィもニコニコして彼女の耳元に口を近づける



「えっとね~」













「イチお兄ちゃんってもうお嫁さんいるんだって~!!(大嘘)」





「…………」



目を開けたままカチーンと固まるニー




「バイバーイ!!」



そんなニーを放ってシィは去っていった





次に川に来たシィ、そこではナナが空を眺め星達とたわいもない会話をしていた




「ナナお姉ちゃん!!」



「あら~どうしたの?ニーちゃん~」




ナナも優しく幼いシィの目元に視線を合わせる体勢になってくれる




「えっとね~」








「ナナお姉ちゃん、街の方で年増って噂流れてるよ-!!!! 【ナナおばあちゃ】だって~!!」




「ピキイイン」



何がナナの頭の中で激しく鳴り石化した





「ナナおばあちゃん…ナナおばあちゃん…」


 あははうふふ…と笑顔のまましゃがむナナ




「バイバイ~おあばちゃん!!」



 止めの一撃を浴びせシィは去っていった





その後もいろんな人に嘘を付き街中をはしゃぃで走るシィ




「あー!!嘘つくの楽しいなあ!!




あっ!!あれって!!」




キキキィと足に急ブレーキをかけて止まるシィ、そこで見たのは




「最近噂のレイだあ!!」



見かけたのはレイだった


どうやら買い物帰りらしい






「新人が最近調子乗ってるみたいだね~」



ニヤリと悪い顔をするシィ




「よーし、先輩がお灸を吸えてやりましょう!!!!!」




タタタタっとレイのところへ走っていく




「レイお姉ちゃん-!!!!大変!!」



「え!?なに!?だれ!?」


声の方向に慌てて振り向くレイ





「ここだよ!!」



レイの目の前に立つシィ



「ええと…どうしたのかな?(子供にはタメ口)」



それがホントに大変なの!!と慌てる不利をして両手を大きく広げてレイに事情を話す





「んとね、私は4月の管理者のシィだよ!!えっとね!!えっとね!! 【ラナキュスの森】でジューサお兄ちゃんが大ピンチなの!!」



勿論嘘なのだが




「ええええええええ!?ジューサが!?」





「そう!!」


そういってレイの手を掴み走る




「ラナキュスの森は北の方にあるから!!ついてきて!!」



「あ!!あ、うん!!わかった!!」



頷いて共に走るレイ



先頭に立って走るシィだが不適な笑みをこっそり浮かべて




「(ふふふ、残念、ラナキュスの森なんてないよーだ!!、あそこの森は私がよく嘘で使う【悪戯の森】)だから!!」




なんと、ラナキュスの森というのは存在しないのだ!!




そうとは知らずレイは森に着いてしまった!!




 - 悪戯の森 -



「この森にジューサが…?」



「うんそうだよ!!」



と頷くシィ



「さ!!はやくお姉ちゃん!!


こっちだよ!!」



と走る姿勢でレイを誘い、レイも慌てて「う、うん!!」と一緒に走っていった!!




「あっち、あっち!!はやく!!」


とレイを先頭に急かす



慌てて走るレイだけどそこは





「!?ぴゃああああ!!!!」



「(私が作った落とし穴だよ~♪)」


あっかんべーとレイを騙すシィは心配するふりをして穴に落ちたレイの所へ向かう




「お姉ちゃん大丈夫!?(内心笑いながら)」




「だ、大丈夫…浮けるから」


浮遊して落とし穴から抜けるレイ




「ごめんなさい道間違えちゃった!!」



今度は指を左に向ける




「ホントはこっち!!」



「わ、わかった!!」




進む二人だけど今度は






「グルガアアアア!!!!!」




「いやああああああ!!!!!」



そっちの方向は狼型の魔物【ウルフス】が大量に生息してる場所だった!!




「(嘘の為に地形は把握済みですよ-だ、さてと…)」




その後も道間違えたとてへぺろ☆していろんな場所へレイを誘う、勿論全て嘘である



落石


【ハッチン(蜂型の魔物】の巣が大量にある場所



蔦が生い茂って体を拘束してくる場所等レイはボロボロだった





「はぁはぁ…」



疲れながらもレイは段々と察してくる





「シィちゃん…いくらなんでもこれは可笑しくないかな…ってあれ!?」




気付いたらシィがいない!!



レイがトラップにあってる間に何処かへ向かったのだ!!





「シィちゃん!?


シィちゃーんどこー!?」



大声でレイは名前を叫ぶが反応がない





「(まさかいつの間にか何処かではぐれた…?)」


レイの胸の鼓動が焦りと不安で高鳴りが激しくなっていく



そんな時だった





「…ちゃん…レイお姉ちゃん助けてえええええええええ!!!!」



「!!シィちゃん!!」




シィの声が聞こえた!!


「(待ってて…!!)」



不安に狩られながらもシィの声の方向にレイは走る!!




そして到着した場所、そこは…





「!!シィちゃん!!!!」




「あぷっあ、…レイお姉ちゃん…助け…」


 

そこは大きな川、溺れてあぷあぷしているシィはレイに手を伸ばすが段々と沈んでいき…





「…駄目えええええええええ!!!!!!!」




レイは思い切りダッシュして飛び込んだ!!






飛び込んだ!!





飛び






ゴチン!!(頭をぶつける音)





「いたあ!?」





「アッハッハ!!元々ここ浅いもんね~、エイプリルフールも大成功!!」




そう、これも嘘、溺れた不利をしていたのだ!!






「にしてもホントにレイお姉ちゃんってたんじゅーん♪ぜーんぶ嘘に引っ掛かってくれるんだもん!!」




「……」


無言で立ち上がるレイ





「ジューサお兄ちゃんのことも嘘!!



ぜーんぶうっそ!!




アーッハッハッハッ!!!!」




高笑いして嘲笑うシィ



その時だった















バチイイイイン!!!!





「……は?」




シィに近づいたレイはシィの頬をぶったのだ



その目には涙が溜まり怒りや憎しみ以上の感情が籠っている



そして




「え…!!」




シィを優しく抱き締めた





「バカ…バカ!!!!!



ほんっっっとに心配したんだよ!?」





「……なんで?」



理解出来なかった



あんなに人を騙してモテ余したのにそのレイは嘘を沢山つかれた怒りや憎しみをぶつけるのではなく、シィの身を心配して何もなかった事への安堵とやり過ぎなシィの嘘への説教の感情だった



その眼差しが、涙が、レイの感情を物語っている




「どうして…どうしてこんな嘘つきを抱き締めるの!? 許すっていうの!?」




レイも涙を吹き笑いながら頷く



「うん、許す…許すよ」



「なんで!!どうして!!」




「だって…」













「シィちゃんの今の顔…とっても悲しそうだから」




「……!!」



レイの純粋な言葉にシィの心も揺れ動く


そして次第に涙が溢れてきた、それはレイの優しさ、嘘を付き続けてきた自分への罪悪感


次第に自分も何故か素直になって








「…ごめんなさい」













「ごめんなさあああい!!!!



嘘をついちゃってごめんなさあああい!!!!」



森に響くように、1人の少女は涙を流し、泣き叫んだ








暫くして森を出た二人は広場のベンチへ座りシィの話を聞く




「どうして…嘘つきになっちゃったの?」



「………」



暫く黙っていたシィだが、自分を優しく抱き締めてくれた相手だ、ここで黙るのは失礼だろう


そう決意して、ゆっくりと口を開く






「……れたから」



「え?」













「元の世界でたくさん騙されたから、誰も信用出来なくなった


だから自分も嘘つきになって皆騙してやろうと思ったの」



「……!!」



シィの言葉は同じ悪戯者でも前回のテンの悪戯とは違うように感じた、彼女が元の世界で傷つき、心が淀んでしまった悲しい出来事が彼女を嘘つきに変えたのだろう



その過去を話してくれた





----------------------


元の世界、私は大親友とも呼べる女の子達がいた



私とその子達はいつも仲良し!!学校でもお休みの日でも毎日たっぷり遊んで充実していた



当時の私って嘘が下手で自分でいうのもなんだけど【素直で純粋】な女の子だったんだ


そんな私を皆「いいこだねー」って優しくしてくれた、全てが優しかった



私達は誓ったの





「これからもずーっと、皆友達でいようね!!!!!」




けど…そんな誓い立てなきゃ良かったって後悔した




ある日の出来事、私達は森に遊びに行っていた


何でも【大きな幻の蝶々を見つけた!!】ってその頃は凄く噂になってて、勿論子供だった私達は信じてた…ううん、正確には私だけだった




皆で森の中を歩き回って、幻の蝶々を探してた時友達だった1人の女の子が「あっちに幻の蝶々見つけたよ!!」と走ってきた


私達は喜んで探そうとした、だけど皆は




「幻の蝶々譲ってあげる!!、一番頑張ってたもんね!! だから行ってきなよ!!」



そう私の背中を押してくれて、優しさのあまり私はあの子達に申し訳なさと感謝の気持ちと嬉し涙を流した



「うん…ありがとう!!行ってくる!!」



そして私は森の奥に行ったの…1人で




その言葉を…あの時の言葉を信じなければ良かったって、後悔する前に引き返せば良かったってその時学んだよ








「!?きゃあああああああ!!!!!」




私は落ちた、あの子達が作った落とし穴に



レイお姉ちゃんと違って打ち所が最悪…両足骨折だよ



虚ろになる意識の中で上からあの子達が覗いてた



皆笑ってたんだ…だけどそれは笑顔なんかじゃなくて



【いじめに成功した悪い人の嘲笑い】だったの




なんで?どうして?私は聞いたよ


あの時「これからもずっと友達でいようね!!」って言ってくれたのは嘘だったの!?って 



そしたら皆クスクス笑って言われたよ








     







「バアーカ!! あんたなんか最初から友達じゃないよー!!!!」




その言葉が私の胸を貫いた


ずっと固かったガラスが砕かれたように痛くて、何も考えられなくなった



そう、私が友達だと思っていた子達は友達なんかじゃなかった




【騙された】んだ、自分が素直で純粋な人間だったから騙されやすかったんだってその時わかったんだよ



皆が私に優しく接してくれてたんじゃない





【このムカつく素直な野郎をいつおとしめてやろうか】って様子を伺って接してきてたんだ


「いいこだね-」って言ってくれたのは


【こいつ扱いやすい】って意味だったの



あの子達はゲラゲラ笑いながら「もうあんたとは遊ばないよー!!」って捨て台詞を吐きながら去っていった



届かない穴の底から必死で私は手を伸ばした




やだ…待って…行かないで…



私達…友達じゃなかったの?



そう思いながらも意識が薄れて眠りについた


発見されたのは三日後だったんだって





暫くして私は病院から退院した、学校であの子達に声をかけても全部無視



その時私は誓ったんだよ







【いいこなんてやめてやる、嘘をいっぱいついて騙して皆を困らせるんだ…あの子達よりももっと大きく!!】って




----------------------




「そんな時、カボチャのお化けさんがやって来て私を365に連れてきてくれたんだ」



「!!それってテンさん!!」




シィを連れてきたのはテンだった


シィは頷きながら話を続ける



「カボチャのお化けさんは私を誘ってきた


【誰にも邪魔されずたくさん嘘をつける世界があるよ】って、それに私も乗ってこの世界に来たんだよねー」




「そうだったんだ…」


「まあ私を365に送った後カボチャさんは「そんじゃ後は後勝手に~♪」って何処かに行っちゃったけどね」




その話の後、暫く黙っていた二人は話を再開する、最初はシィからだ




「ホントにごめんなさい…私もね、ホントはこんなことして何になるの?って薄々感じていたの、嘘を付き続けて、人を騙し続けて、そんなんじゃ私をいじめていたあの子達とおんなじになっちゃうって…でも、止められなかった



【誰かに構ってもらえるのがこの方法しかない】ってなっちゃったから」




シィの嘘は【自分も嘘をついて人を騙す】からいつの間にか【自分を構って欲しいから】に変わっていたのだ、悪戯をしながらも悲しい表情をしているとレイは既に見切っていた




そんなごめんなさいを連呼するシィをもう一度抱き締める




「もう…皆を困らせないね?」


「うん…」



「私が…たくさん構ってあげるね」



「……ありがとう、お姉ちゃん」





その時、枯れていた木からたくさんの桜の花が咲いた


ホントのシィの能力は【嘘をつくのが上手い】


ではない



【桜の花を咲かせて操る】



なのだ



「…綺麗な桜だね、シィちゃん」



「えへへ~凄いでしょ?」





涙を拭ったシィの顔は満開の桜のように花が咲いた笑顔だった









それから暫くして




あの後シィは嘘を付いてきた人達に謝りお詫びにお手伝いをしていたらしい


 

「頑張ってるみたいだよ~シィちゃん」



「ふむ、やっと管理者らしくなってきたな」


飲み物を飲みながらジューサも感心する



するとノックのおとが響き「レイおねえちゃーん!!」と元気な声で入ってきた



「シィちゃん!!」



「えっとね!!今日もね!!たくさん人助けしたよ!!」




「そうなんだ!!よしよし」


偉い偉いとシィの頭を撫でるレイ


シィもえへへ~ととても嬉しそうな笑みを浮かべる




「そうだこれ!!」



シィがとっさに後ろに隠してた箱をレイに渡す



「これって?」




「お姉ちゃんに日頃のお礼!!


いつもありがとうレイお姉ちゃん!!



大好き❤️」




「!!」




ずっきゅううううん!!♥️♥️♥️♥️♥️♥️♥️♥️♥️



レイのハートをシィの言葉が矢となって撃ち抜いた!!




「…んもーう!!シィちゃんったらあ!!


私もシィちゃんだーい好き!!」



ナデナデが加速する



「開けてみて!!開けてみて!!」


とウキウキなシィ



「なんだろうなあ、楽しみ♪」



レイもニコニコしながら箱を開ける、すると中身は











🐛




「!!」






「いびゃあああああああああああああ毛虫いいいいいいいい!!!!!!」




「へへーん!!引っ掛かったよーだ!!」



とあっかんべーしながらレイの家を出て逃げる!!



「こら~!!待ちなさ-い!!」



レイも飛び出して追う!!



それをやれやれと飲み物を飲みながら目を瞑るジューサ


「(懲りないな…けど)」













「(良かったな、楽しそうな顔になって)」






「にっげろ~♪」



「待ちなさ-い!!お仕置きだよー!!」




ニシシとレイから逃げるシィ、どうやらレイにはまだ嘘を付いているようだ


けどそんなシィの顔はあの時の悲しげな顔ではない、とっても楽しそうだ





だって













レイがいっぱい構ってくれるから






- 続く -


























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