第8話 大切な主

今日も今日とでお仕事のレイ、早速ツリーから紙を取ると内容はこう書かれていた




 ―  亡くなった主に会いたい 【ラモラマスの墓地】で待っています byロム ―




「亡くなった主さん…ですか」



そんなのどう探せばいいんでしょうかとレイは腕組みして考える事に万策が尽きたレイはジューサに相談することにした



「困った時のジューサですね」



一度家に戻ったレイ、ガツガツコーンフレークを食べているジューサに話す




「死んだ者に会いたいか…それならば8【ハチ】に頼むといいよ」



「あ!!それは絶対8月の管理者さんですね!!」



ジューサは頷く



「ちょうどハチはラモラマスの墓地に住んでいるから一緒に会いに行こうか」


「(お墓に住んでるの!?)」




取り敢えず二人でラモラマスの墓地へ行くことに





― ラモラマスの墓地 ―


 「うう、怖いです」

  


たくさんのお墓が立ち紫の煙が所々に漂っている、見るからに不安になってくるのだ



「大丈夫、今ハチを呼ぶから」


とジューサはピイイイと口笛を吹く


何故口笛なんですか?と首を傾げるレイにほら来たよと告げると目の前から黒い影がたったかたったか走ってきた!!





「え!?なになになになんですか!?」



慌てるレイに大丈夫だよと宥めるジューサ


やがて影が近づき現れたのは…







「ワンワンワンワンワンワンワンワン!!!!!」



「え!?ワンちゃん!?」



どう見ても柴犬だった、いや、この世界では【イーヌン】という生物らしい




「彼が8月の管理者…【ハチ】だよ!!」





「えええええええ!?」


 


流石に驚くレイ、確かに背中には大きく8の数字が書いてある




「なんでワンちゃん!?」



「なんでって…犬と言えばハチだろ」


 何を言ってるんだ?と首を傾げるジューサ



 

「(…ハッ!!【中堅ハチ公!!】)」




きゃううううんとレイの足に顔を付けてすりすりしはじめる



「わあ、可愛いですねえって…ジューサ?」



何故かジューサは羨ましそうにレイを見ていた




「いいな…」


「え?」



試しにとジューサがハチの前に手を出す、すると





「グウウウウウガルルルル…ワン!!」


ガブッ!!と嫌な音がした



「なっ…なっ」




「そうだ、僕には動物が懐かない」



どうやらジューサは動物が懐かない体質らしい


特にハチにはとても嫌われている


ジューサの手からは痛々しい血がドクドク流れている



レイに包帯を巻いて貰いながらジューサは呟いた


「…似ているらしいんだ」


「似てる…?」





「【ハチの主を殺した黒い男】に」



「!!」



つまりハチはジューサを自分の主を殺した男の影と重なって見えてしまっているのだろう、その目は愛くるしい犬の目ではない、獲物を睨み付ける狼そのものだ 




「イーヌンになっても犬だった頃の記憶と古傷は残っているんだ」



「……」



落ち込むレイの前でパン!!と手を叩くジューサ



「さ、こんな話は忘れて依頼者を探しに行こう」



「…そうですね」




ハチのリードはレイが持つことに



歩き続けて依頼者を探す二人と一匹、すると






「ワン!!ワン!!ワン!!ワン!!ワン!!ワン!!ワン!!ワン!!ワン!!ワン!!」




「わ!!どうしたんですか!?ハチさん…」


 右側の奧に向かって吠えるハチ、すると





「ぬううううう!!!!


こやつ何者!!」




吠えた先からガチャリガチャリと重たい鎧の音を響かせながらガタイの良い巨大な甲冑騎士がこちらにやって来た!!





「お!!大きいです―!!」


「君が依頼者かい?」    




あまりの巨大さにレイとジューサは首を上に上げながら話し掛ける



   

「いかにも、我輩が依頼者の【ロム】である!!」



偉そうに腕を組みながら答える甲冑騎士ロム



「我輩は亡くなった主に会いたい!!


しかし時間が止まり【お盆の日】が来なくなってしまった!!」




8月13日~15日までの期間、亡くなった魂がこの世に帰ってくるお盆の日、それは365の管理界でも同じだ、国の住人達も亡くなった人と再会できることを心から楽しみにしてた



だが秒が盗まれてからの事、時間が止まりお盆の日が来なくなってしまったのだ



これではあの世からも魂が帰ってこれない、ロムは大泣きしてレイ達に頼む




「うおおおおおおん!!!!!!どうじでもおおおおおおおお主に会いたいのだああああ!!」



「わ!!分かりました!!分かりましたから!!」


 どうどうとロムを宥めるレイ




「要はあの世から主さんをこの世に招待すれば良いんですね?」とレイは悟る、しかしどうやってあの世に行こうかと



「ほら、そういう時こそ君の出番じゃないか」


とクスッと微笑みながらレイの姿を見る




「…あ!!そうですね」












「私はレイ




【幽霊(れい)】



でもありました!!」



更にハチを連れていけとジューサ



ハチの能力は「霊探知」らしい



「ハチがいればあの世へのゲートと繋がることができる、後は二人に任せたよ」




「ワン!!ワン!!」とハチが吠えた方向に進むレイ



そこには【ランスロトルの墓】と書いてある



「それこそが我が一族ランスロトルの墓である!!!!!」



するとロムの声に共鳴したかのように墓石から紫の煙が天へと伸びた!!




「あれがあの世へのゲートになる煙ですか!?」



頷くジューサ



煙が天で渦を巻き大きな穴が出来る!!



「今だレイ!!ハチを抱えて飛べ!!」



「は、はい!!」



レイはハチを抱えて浮遊し天の大きな穴へと向かった!!





「…頼んだよ」










  ― あの世 ―



眩しい光に包まれた白き世界、恐らくここは天国だろう



「なんだかとても暖かい…おっと!!早くロムさんの主さんを探さないと!!」



「ワン!!ワン!!」  


急に吠えるハチ

 

「どうしたんですか!?ハチさん!!」



ガシャン!!


ガシャン!!




「へ?」




なんだか重たい鎧の音が鼻唄を歌って歩いている




ガシャン!!


ガシャン!!


   




「わっがはいが~最強の騎士~【トム】~!!」



 

「………」



黄金の鎧を着た巨大な騎士に声をかけてみた



 「あの~ひょっとしてロムさんの主さんですか?」





「ぬ!?何奴!!」









~ この世 ~



天の穴からレイとハチがトムを連れて降りてきた



「速いな!!」



「ぬおおおおあおおおお!!!!!!主いいいいいいいいい!!!!!!!」



「おおおおおおおん!!!!ロムよおおおおお!!!!元気だったかああああ!!!!!」




「元気ですぞおおおおおお!!!!今では戦死したあなたの代わりにあなたのお坊っちゃまが主として頑張っていますぞおおおおお!!!!」




「おおおおおおおん!!!!流石我が息子おおおおお!!!!」




男泣きをして抱き合う二人、暑苦しい





「…騒がしい」



「まあまあ…しかしあのお二人は解決しましたけど」



「?どうかしたのか?」




レイはハチの方を向く




「ホントに主さんを探さなくて良かったんですか?ハチさん」



「………」



黙っているハチだったがとことこレイの前に歩いてきてごまかすようにレイの手のひらを舐める



レイはハチの主も探すつもりだったのだ、だが一向にハチは乗らないでいた





「どうしてなんでしょう」



「………」








そのレイ達を見つめる人影が1人




「ふふふ、ばっかだねぇ~見付かるわけ無いじゃん



だって



【僕が殺した相手はあの世にいけない】んだから」




― 続く ―



















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