第7話 雨が止まない
あるところに1人の少女がいました
紫の髪をした少女の瞳は白で前髪は少し隠れ陰湿的な雰囲気が漂い、左手の甲には【6】と書かれています
少女は空を見上げて囁きました
「…晴れがみたい」
それは少女の小さな願いでした
けど少女の願いは叶いません
だって
少女の周りには雨しか降らないのですから
「う~ん、じめじめしますね~」
まるでナメクジのように溶けているレイ、どうやら体質的に雨が苦手らしい
「そんなところ申し訳無いけど」
とジューサがレイに依頼の紙を渡す
「え~雨の中行くんですか~!?」
ぶーぶーとうだってるレイだが素直に受け取ることにした
「ふむふむなになに」
紙の文章を読んでみる、そこには
― 私に晴れを見せてください、【オルディアンの城の廃墟】 でまっています
6月の管理者より ―
という不思議な文章が書かれていた
「うーん、どういうことでしょう」
と頭を押さえて悩むレイ
「というか1、2と来て次3じゃないんですねえ」
「なにいってんの」
今日は雨で調子が出ないレイ
取り敢えずオルディアンの城の廃墟に行くことに
ザーザー
ザーザー
ザーザー
「おお、どしゃ降り」
レイがたどり着いたオルディアン城の廃墟、しかしそこだけはとても謎で不気味なのだ
なんせ【一年中雨が降り続ける城】
なのだから
「なんでこんなところ呼び出したんでしょうか」
悩みながら門の前に立つレイ
すると小さくギィィという音が鳴り次第に大きく響いて…
「きゃあ!!」
勢いよく門が開いたのだ!!
「…入れって事ですかね」
違和感を感じ、少し恐怖で震えるが
「例え怖くても依頼者のお願い…助けないと行けませんね!!」
レイは城の中へ入っていった!!
暗い暗い部屋の中、中には埃にまみれたカーペット、割れたシャンデリア、斜めに倒れ書けている誰かの肖像画、蜘蛛を壁を這っている
「うう、なんだか気持ち悪くなってきました」
口を塞ぎながら二階階段を上ると奧に扉を発見した
「一体なんでしょう…」
見るからに怪しい巨大な扉、恐る恐る開いた先
そこは
「え」
それはとても美しい花園だった
「綺麗です…」
咲いているのは紫陽花のみ、しかし瑠璃色や紫、桃色など色とりどりな紫陽花が咲いていて、花の上にはカタツムリやカエルに似た生き物が平和そうにのんびりしていた
「でも私の傘が小さくてこの量の雨は…」
レイの持っている傘は小さな傘
花園の雨は大量でありレイの持っている小さな傘では防ぎようがない
するとレイの後ろで声がした
「なら…私の傘…使って」
「ああ、ありがとうございます…ってわあ!?」
振り向くと紫の髪をして前髪で少し両目が隠れている陰湿的な雰囲気のある少女が立っていた!!
「私…【6(ムー)】…6月の管理者」
ムーから大きな傘を借りて花園を歩く二人
「ムーさんは雨に濡れて大丈夫なんですか…?」
レイに傘を貸してムーはびしょ濡れになっている
しかし本人は気にしていないのかふひひと不気味な笑みを上げ
「大丈夫…濡れるの…好き…青春…
うーひひひひ!!」
「(こ、この人怖い!!)」
気を取り直してレイは依頼の内容を聞くことに
「あの、晴れがみたいというのは」
「その通り…私…このお城から出たこと無い…」
「え(何か出れない深刻な問題が…!!)」
心配するレイ、しかしムーはゴロゴロ転がりながら泣き叫んで
「お外怖い!! 人怖い!!
だから出れなかったのおおおおお!!!!」
「(ただの人見知り!!)」
しかしムーはコロンと立ち上がり
「でも…変わらなきゃ駄目って思った…このままじゃ駄目だって…だからお願い!!
私をお外に迎える勇気を頂戴!!
雨ばかり降らない晴れのある街へ!!」
レイの手を握り必死に訴えるムー
「(よっぽど怖かったんだな…)
分かりました!! 協力しましょう!!」
「!!
ありがとう…!!」
ムーは大喜び
「これで…雨が止む…うひひひひひひひ」
「(やっぱやめようかなあ!!)」
城の門の前
緊張するムーをレイが宥めながら扉を開ける
「こ、ここここここから先がお外
がくがくぶるるるるるるるるる」
まるでブレーカーのようだ
「私もいるから大丈夫ですよ
さ!!お外に出ましょう!!」
レイが門を開きムーの手を繋ぎ一緒に外へ出た!!
「そういえばなんでずっとお城にいたんですか?」
「あそこの暗さ…冷たさ…湿ったさ…最高…快感…♥️」
「………」
暫く歩いてレイは考えた
「(外に連れてきたはいいけど何処に連れていこう!! 雨が降ってない方面って何処!?)」
そう、レイさん
ムーの手を引っ張ったは良いが行き先に困っていた!!
「う~ん…そうだなあ」
考え込むレイ、暫く悩んだ結果
「悩んだら…お店の多い街でしょ!!
雨が止むってお願いするしかありませんね!!」
― ルーベルの商店街 ―
たくさんのお店が並ぶストリートである
「ひぃ!!お店いっぱい!! 人がたくさん!!こわいいいいい!!」
「大丈夫ですよ~」とレイは宥める
ここは雰囲気の通りたくさんの人がお買い物に来ているのだ
まずは街中に慣れて貰わないと
というのがレイの考えである
― パン屋さん ―
「いい臭い…」
「ここのメローヌパンは最高ですよ~」
― 骨董品屋さん ―
「うへへ…ここしゅきぃ」
「ちょっと!!品物を撫でちゃ駄目です―!!」
― 魚屋さん ―
「ひいっ!!足いっぱい!!」
「ターコンですよ~」
それからいっぱい二人で遊んでベンチで一緒にクレープを食べる二人、幸い雨も止んだようだ
「うへへ…美味しい…」
下手くそながらも笑みを作るムー
「(……)」
しかしレイは疑問を抱いていた
確かに雨が降る城から離れて雨がふいていない場所へ来た
しかし妙なのだ
「(やっぱそうですよね)…
ムーさん」
「なーに?」
「その…やっぱり雨は
【ムーさんの個性】なんですね」
「………」
そう、何故か【ムーのいる所だけ雨が、いや、寧ろムーに集中して雨が降っている】
のだから
ムーは小さく頷く
「そう…これが私の力…【私にだけ永遠に雨が降り続ける】
感情が爆発していると雨の範囲…広がる」
城の廃墟はムーが住み着いている場所
恐らく寂しさから雨が城全体に広がったのだろう、しかし外に出られない恐怖、心が葛藤していたのだ
「私…もとの世界ではいじめられていたから」
「!!」
いじめから生まれた心の雨、明るい所よりもじめじめした暗いところを選んだ
それが6月の管理者として選ばれた理由なのだ
「でも…雨が能力では私じゃ何も」
悩むレイ
しかしムーは首を横に降り
「ううん…レイちゃんに…会えて…良かった」
「え」
「レイちゃんといっぱい遊んで…楽しかった…きっと…能力の雨じゃない…止んでほしかったのは心の雨…お陰で…心が晴れた」
レイは見た、次に見せたムーの顔はとても美しく、眩しく輝いていた事を
「ありがとう」
とても美しい晴れた笑顔を
数日が立ち
「わあ~!!!!!買い忘れですよ~!!!!」
慌てて商店街に買い物にやってきたレイ
「すみません通ります~!!!!」
人の列を避けて走る走る
切り抜けたこの先、1人の人影が立っていた!!
影は明るく移されて紫の長い髪をした少女を映し出す
「あ!! おはようございます!!」
少女の前髪は短く、白色の瞳がはっきり見えていた
「ムーさん!!!!」
彼女の不器用ながらの微笑みはまるで
雨が止んだ後のように輝く晴れた空の太陽だった
― 続く ―
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