第6話 メンヘルバレンタイン
「うわああああ!!」
外から誰かの悲鳴が聞こえてくる
「?誰でしょうね」
悲鳴の主がドン!!ドン!!ドン!!っとレイの家のドアを激しくノックしてきた!!
「い!!入れてくれ!!頼む早く!!」
「あ、は、はい!!」
慌ててドアの鍵を開けて開くとそこには疲れ果てたイチがいた
「イ、イチさん!?」
「か!!かくまってくれ!!
…ってうんぎゃあああ!!」
いきなり悲鳴を上げたイチ、レイが「どうしたんですか!?」と尋ねるとイチは体を震えさせ後ろ後ろと指を指す
「後ろですか?」
振り向くとそこには
「見つけたわよ~イッちゃん~」
「ひっ!!ひぎゃああああ!!!!!」
不適な笑みを浮かべた少女がレイの0距離にいた
落ち着いた3人は互いに顔を合わせるというか少女はレイを睨んでいるようだ
「ぬぬぬぬぬぬぬ」
「ぴぃ!!私何かしてしまいましたか!?」
怯えて涙目になるレイ
するとイチが少女の頭にチョップして助け船に入った
「きゃん!!」
「あまりビビらせんなよ【2(ニー)】」
ピンク色の長い髪に紫の瞳、頭には二本の小さな角が生えていて腰にはハート型のチョコレートをたくさんぶら下げている彼女の呼び名は【2(ニー)】、2月の管理者だ
「だってぇ~最近イッちゃんをこの泥棒猫がぁ~」
クネクネするニーにイチが若干引きながら聞く
「…お前もしかして俺とレイが歩いてる所全部見てんの?」
「うん♥️木の裏に隠れて」
「(こっっっわ)」
ため息をつきながらイチが説明する
「あのなあ、俺達はそういう関係じゃない、仕事の依頼を手伝って貰ってるだけだ」
「そうですよ!! 確かに最初イチさんに会ったときはかっこいいなと思いましたけど今は…」
ドン!!(テーブルを叩く音)
「ひいいいいい」
「今は何…?今はイッちゃんがかっこよくないっていうの…?」
ゴゴゴゴゴと凄い音がニーから聞こえる
「じゃなくて!!元の世界に戻るつもりでいるからかっこよくて恋しても意味ないと思ったんです!! お仕事仲間です!!」
「関係あるかあああああ!!!!!」
「いやああああ!!!!」
凄い威圧
と思ったら自分のほっぺに手を当ててやんやんと語り始めた
「イッちゃんはねぇ、それはもうホントにかっこいいのよ?
もうおはようからお休みまで毎日付けてるんだから~」
「ゾクッ」
イチの背中に悪寒が
壁に手を当てため息をつく
「先代…先代さぁ
なんでこんなやつ管理者に選んだんだよ」
「(確かに!!)」
同感するレイ、「それはそうとお!!」と切り替えてニーはレイを指差す
「あんたをイッちゃんの横にいる事自体が認められないのよ!!」
「ええええええ!?」
「…レイ、正直若干あいつめんどくさいと思ってきてんだろ?」
「お!?思ってません!!
ませんよ!?」
割りと図星で焦った
「ってな訳で勝負よ0月!!
どちらがイッちゃんに相応しいか決めるの!!」
「エェェエエエェ( ̄Д ̄ )」
なんか凄くダルくなってきた
「いや、俺の許可はよ!?」
勝負方法はこうだ
ニーの依頼に書かれた【バレンタインを諦めきれない俺達に希望をください!!by血涙を流した男一同】
「…なんですかこれ?」
「時が止まってバレンタインデーが来なくなったことを受け入れられずまだ貰えるんだ!!バレンタインデーは来るんだあああ!!!!と信じている哀れな男達の依頼よ」
「はぁ、」
「この男共にチョコを作って美味しかったが多い方が勝ちよ!! あ、最後はイッちゃんにも二人の食べて貰うからね♥️」
「はあ!?」
「ええええええ!?」
すごーいどうでもいいー!!と思いながら嫌勝つの無理でしょ!!と思ったレイ
相手は2月の管理者だしバレンタインの事だって心得ているだろう、それに取り柄の無いレイにお菓子作りは難易度が高い
「もう勝負なんていいですからイチさんあげますよ~」
「ホントに♥️」
「やめてえ!!」
何言ってんだお前!!と叫ぶイチ
「その勝負、レイと組ませて貰おう!!」
「だ、誰よ!!」
ドン!!という効果音と共にシルエットから現れた彼の名は
「ジューサ!! もしかしてチョコレート作ったことあるんですか!?」
「無い!!」
じゅるり
「あ!!違います!!この子絶対私の作ったチョコ食べたいだけだ!!」
「2対1、ふふっ、良いわよ受けてあげる♪」
「あ、あの~俺の意見は」
涙を流すイチを無視して3人の勝負が決まった!!
「勝負は明日の正午!!楽しみしててねイッちゃん♥️」
「(楽しめない!!)」
「逃げるんじゃないわよー!!」
と超ダッシュでニーは去っていった
「…とんでもない事になってしまいました」
「なんで俺がこんな目に…」
「まあ
チョコレート食べれられるならよし!」
じゅるり
「はーい、ジューサよだれ吹きましょうね~」
取り敢えず作り方とか街中の人達に聞いておくことにした
― そして(ぶっちゃけどっちが勝ってもどうでも良い)決戦の日 ―
ドン!!
「ふっ」
腕を組み余裕のニー
ドン!!
「ぐっ」
拳を握り緊張するレイ
ドン!!
「ぐ~ぎゅるるるるる」
今日のチョコレートの為に昨日の夕飯と今日の朝御飯を抜いてきたジューサ!!
ドン!!「えぐえぐしくしく」
そして縄に縛られて囚われのヒロイン(?)のイチ!!
「なあなあどっちのチョコがうまいと思うよ」
細身の眼鏡の男が息の臭そうなデブ男に話し掛ける
「そりゃあニーたんだろ、2月の管理者だし」
その答えにチビで出歯な男が返した
「いやいや、小生的にはあの最近やってきたレイたんっておにゃのこにも期待値があるでやんすよ」
「取り敢えず二人とも応援だな」
眼鏡にデブが答える
「そうだな、チョコ貰えるならどっちが勝っても良いよな、はふはふ」
出歯が大声で二人にエールを送った
「ニーたーん!!
レイたーん!!
頑張るでやんすよー!!」
その3人を見てうげっと青ざめるニー
「うわっ、きんもいわねぇ、あんた達はオマケだってことまだわかんないのかしら」
そう言ったニーはイチの方をクルっと向いてウインクした
「うふふ、待っててねイッちゃん♥️
美味しいチョコレート食べさせてあ・げ・る・か・ら♥️」
「い、いやだあ!!いやだああああ!!!!」
ニーは怖いしオマケ3人の嫉妬の視線は辛いし散々なイチだった
ジューサが二人の前に立つ
「では、二人とも
…よーい」
「うふふ」
「ごくり」
ドン!!
「始め!!
じゅるりじゅるりじゅるりじゅるり」
「ああもう!!早くチョコ作って食べましょうねジューサ!!!!!」
かくして二人のチョコ作りが始まった!!
「おーほほほほほほ!!」
ニーは流石2月の管理者だけチョコ作りに慣れている!! 華麗なる裁きでチョコを混ぜていく!!
「は、はやいでやんす!!」
「はふはふ、これは勝負ありか?」
一方のレイ&ジューサ!!
やはりレイは慣れていないのかゆっくりとかき混ぜている!!(ジューサはよだれ垂らして立っている!!)
「んしょんしょ💦」
と一生懸命かき混ぜながら後ろに下がってしまっているレイ、次の瞬間石につまずいて
「きゃあ!!」
ガシャーン!!と大きな音を立てて宙をまったチョコの入ったボウルから溶けたチョコが溢れだしレイの体にたくさんかかった
「いたた…う~、ベトベトぉ」
「うおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!!!!!!!!!
もう後悔はねええええぜえええええ!!!!!」
モブ三人の大きな叫びが響いた!!
「ちょっとお!!そういう勝負じゃないわよ!!」
そして長きチョコ作りを終えて審査タイム
ニーは綺麗なハート型のチョコ(モブにはチ◯ル型のチョコ)
レイは形は汚いが花形のチョコだ
モブ三人とイチとジューサがそれぞれ食べ、結果の時…
ジューサは目を閉じ勝者を発表する
「この勝負…」
「まあ、当然私でしょうね」
「う~緊張~」
ジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカ
デン!!!!!!!
「勝者…レイ!!」
「え!?」
「な!!なんですってぇ!?」
なんとレイが勝ったのだ!!
「というわけでイチは自由だ」
「うおっと」
イチが縛られた縄をジューサがサーベルで綺麗に斬った
「ありがとおおおおおレイイイイイ!!」
喜びのあまりレイにしがみつくイチ
「あ、いえ、紛れですよ」
しかし納得がいかないニーは全員に訴える
「認めないわ!!どうして!? 私の方がチョコ作りうまいはずよ!!」
全員声を合わせてそれに答える
「レイの方が甘い
ピュアなハート
カエルの肉入れんな!!」
「ぐぬ!!」
レイが作るとかなり甘くなる+レイ自身のピュアな心、そしてニーのいたずら心が敗因だった
うう~と涙目になるニーは地面でじたばたダダをこねる
「やだやだやだやだやだも~ん!!」
「あらら…どうしましょうか」
困るレイの肩を叩き後は任せろとイチが目の前に立つ
「すーこーしーはー」
手にじゃらじゃら持っているのは【マーメ】この世界でいう豆だ
「反省しろー!!」
「やあああん!!」
そのマーメをニーに目掛けて思いっきり投げた!!
「マーメやーなの!!やー!!」
どうやらニーはマーメが大嫌いらしい
「…あっ!!そっか!!」
と手をポンッと叩きレイは気づいた
「節分!!」
そう、2月といえばバレンタインだけではない、節分もあるのだ
2月の管理者ニーには角が生えている、つまり鬼でもある
ジューサがクスッと笑い
「これが【バレンタインの鬼】」
としょうもない事を呟いた
うわんうわん泣きじゃくりながらニーはレイに指差す
「お、覚えてなさいよ!!
イッちゃんは私の物なんだからああああ!!!!!」
とよくある捨て台詞を吐きながら去っていった
「…俺は誰の物でもねえよ!!」
これで一件落着、めでたしめでたし!!
しかし3日後
「うう…」
痩せ細ったイチがレイとジューサを訪ねてきた
「ど、どうしたんですか!?」
「ニーが…」
「え?ニーさん、まだ懲りてないんですか…?」
「ニーが…」
「俺のベッドの下に隠れて「マーメを投げてイッちゃん♥️」と毎晩囁いてくる…」
レイとジューサはぞくぞくして震えた
女の愛怖い
続く
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