二度目の初顔合わせ
嘆いたってしょうがないのでなんにも知らないフリをしていつぶりかの実家の朝飯を食って既に卒業したはずのなつかしの母校へ登校した。
何かの始まりには相応しい青空が広がり、風流に桜の花びらが舞う中、新品の制服に身を包んだ初々しい新入生たちが入学式会場と書かれた看板の脇で記念撮影をしている。懐かしいなぁ。こんなこともあったっけとか思いながら俺も親父と一緒に写真を撮ってもらった。一瞬既に写真あるのに必要か?と思ったが今回はまだ無いんだった。……さっさとこの状況慣れないとな。気をつけないとボロが出そうだ。
その後は一旦両親とは別れて教室の方へと向かった。張り出された案内にしたがって一周目のとき同様に1年B組の教室に一番乗りで入って俺の席に座った。勝手知ったる我が母校だ。何も迷わなかった。……あれ?一度目は確か一回フロアをミスった後この教室に来たはずだな。だから俺は一番乗りじゃなかったぞ?……まぁいいか。こんなんで未来変わったりしないだろ。バタフライ・エフェクトなんて知るか。
ぼんやりしながら、
ちらとその方向を
「おはようございます。」
「あぁ……おはよう。」
挨拶をされたため思わず俺も挨拶を返す。女子生徒はそのまま教室に入ってきて黒板に張り出されていた座席表を確認すると自分の席に向かって行った。
あの子は確か……木村さんとか言ったかな。俺の記憶が正しければ一年の終わりに親の仕事の都合とかで転校していった筈だ。その時はなんとも思っていなかったけれどまたこうして顔を見ることになるのはなんとも感慨深いものがある。本当ならもう二度と見るのことは無かったはずなのだから。
「
木村さんが声をかけてきた。……どういうことだ?なぜこのタイミングで俺の名前を知っているんだ?本来なら……秋ごろに授業の中で行われたグループワークで初めて自己紹介をしていた筈だ。……いや座席表の名前を見ていたのか?それも違うか?木村さんは俺が名前の読み方を教えるまで俺の名前を読めてなかったし。……まさか一周目とは違うパラレルワールド?タイムリープがあるならそれもありうるか?
「あの……どうかしましたか?」
「あ、いや。突然話しかけられてびっくりしただけだよ。ごめんね。」
とりあえず取り繕う。
「それにしても、木村さん。よく俺の名前初見で読めたね。ぶっちゃけ木村さんが初めてだよ。」
「あぁ……それはまぁ昔の知り合いに同じ名前居たので。」
同じ名前の知り合い。やはりこの世界は前回の世界と違う可能性が出てきた。
「ああ。そうなの?……だったらその人とどこかで関わりあったりしてね。生天目なんて名前そうそう居ないし。」
「そうなのかも……しれませんね。……所でなぜ私の名前を知っているんですか……?まだ名乗ってませんでしたよね?」
しまった。早速しくじった。そうだ、本来ならまだ木村さんの前を知っているはずが無いんだった。木村さんは座席表の名前を見ているから俺の名前を知っているのはおかしくないけど、俺はわかるはずがない。……いや理論上は座席表の名前を全て覚えてどこに座ったかで顔と一致させるてのもできるだろうがそんなの非現実的だ。
「さて、どうしてでしょう?」
結局できる誤魔化しなんてのはいつぞやの青春映画のあの青年みたいに澄まし顔で言って見せるしかない。……バイオリンなんて作れもしなければ弾けもしないけど。
「……まさか、生天目くんもですか?」
「俺も……ていうのは……?」
「……いえ、こっちの話です。気にしないで。」
余計気になる。一体何が俺と共通しているというのか。あるいは勘違いしているのか。
「その言い方気になるよ。……別に失礼なことでも良いから言ってみてよ。」
「失礼というか……気が触れたとしか思われなさそうで言いたくないんです。」
「じゃあさ、口外しないからさ。頼むよ。でなきゃ気になって入学式集中できなくなっちゃうから。」
「じゃあ……。」
木村さんは深呼吸してから悪ふざけの色を全く見せずに言った。
「私は……10年後の未来からタイムリープしてここにいます。」
……冗談?偶然にしては出来すぎている。なぜかも分からずタイムリープした人間がここで出会うなんて。
「……冗談、ではないみたいだけど……それを証明する方法はある?」
「言って信じて貰えるかわからないけれど、このあとの入学式で市会議員さんが挨拶することになっていますけれど、その途中でやめて帰っちゃうんですが……信じてくれる訳ないてすよね。ごめんなさい。」
……そうだ。ご機嫌に挨拶してる最中に秘書っぽい人が登ってきて何か耳打ちされたあと血相を変えて途中で帰ったんだよな。当時はこんなこともあるんだなとか思ってたけど……。今の時点で知れるわけがない。
「確か……急に止めて帰ったのは奥さんが倒れて救急車で運ばれたとか後で聞いたけれど……。まさか本当に?」
本当は少し違う。議員さんの大事な人が救急車で運ばれたのは事実だけど、運ばれた人は娘さんで原因は交通事故だ。……このブラフに引っかかったら木村さんは俺を担ごうとしているだけ、ということになる。
「いえ、そんなはずは……。娘が交通事故で、ということだったはずなんですが……。」
引っかからなった。しかも俺が聞いた話ドンピシャだ。……まさか本当に木村さんもタイムリープしているのか?そうでなきゃ説明つかない。
「マジ、かぁ……。本当にタイムリープしているんだな。」
「……信じてくれるんですか?」
「……まあな。そうじゃないと説明つかないからな。あ、試すような真似して本当にごめんね。」
「いえ、気にしてませんから。」
木村さんはなんてことないように微笑んだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます