タイムリープしちゃったけれどさ、俺別に人生偶然とはいえ上手く行っていたしなんで巻き戻らされたんですか?元の時代に返してくれ。プロポーズの前夜だったんだぞ。

緑川 湖

巻き戻し、10年前。

 今日俺は一世一代の大勝負をするはずになっていたはずなんだ。だけどこれはどういうことなんだ。


 俺は今、現実を受け入れられないでいる。けれど頬をつねっても痛いだけだし『目覚めろ!』と念じてみても夢から覚めるわけじゃない。それでもって自分の目がおかしくなったのかと思い目を擦ってみても目の前にある光景が一昨年区画整理で取り壊したはずの実家の自室であることは変わらない。


 トドメとばかりにとっくのとうに買い替えたはずのガラケーを開いて見れば表示されてる日付は10年前の高校の入学式の当日が表示されている。


 ここまでなら恐ろしく手の込んだドッキリと思える。金と時間さえあれば再現できるっちゃできるし。けれど……。


 大学時代に付けたはずのケガの傷跡が完璧に消失するなんてのは絶対にありえない。昨日だってシャワーを浴びた時にいつ見てもハデな傷跡だとか思いながら見てたのだから。


 つまり、ここから導かれる結論というのは……俺はどうやらタイムリープをしてしまったらしい、ということだ。

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