いざ出陣!

そうして5日の時は過ぎ、今回の戦に合わせ約300人ほどの兵が集まり、信長も甲冑を装備し、各々の前に姿を見せる。それはうつけと呼ばれている姿からは想像もつかない立派な若武者の姿だ。


「おお、信長様、ご立派ですぞ!」

「ふん、世辞は良い、皆の者、これより吉良大浜城に討って出るぞ!我が織田の力を憎き今川の犬どもにみせつけてやろうぞ!」

「おーーーー!」

「よし、出陣じゃ!」


 信長の檄と共に、織田軍は那古野城より出陣し、三河の吉良大浜城を目指し進軍する。


 出陣当日は強風であったが、それでも織田軍は現代でいう約50Kmの道を駆け抜け、強風をものともせず吉良大浜城の眼前まで到達していた。


「あれが吉良大浜城か」

「信長様、此度の戦は城を落とすのが目的ではございません。城を包囲し織田軍ここにありと示せば十分かと」

「ふっ、それではぬるいは、城の周辺に火を放てい!」


 信長は城を前にするなり、将兵に城の周囲への放火を指示する。


 信長の指示に部下達は放火の準備を始めていく。


「信長様!それは敵への挑発行為になりかねません!お止めください!」

「何を言うか爺!わしの戦は此度の戦だけではない、火の燃え拡がりかたを知っておいて損はあるまい」

「それは……そうですが……」

「敵が城より討って出れば早々に兵を退けばさして被害はでまい」


 織田軍は次から次へと放火をするが吉良大浜城より兵が出る様子は見られない。


「奴らめ城からは出てこぬか、慎重なのか、臆病なのか」

「初陣でこれ程の働きお見事です。敵が城から出る前に那古野城に戻りましょう」

「いや、今日は野営をする。早々に野営の準備をせよ!」


 なんと信長は敵の城の近くであるにも関わらず野営の準備を部下に指示を出す。


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