第9話! 強襲のお義母様!

「エヘヘヘヘ! デヘヘヘヘヘヘ! グヒヒヒヒ! グフフフフフフ、グフフフフ!」


「花様、お顔がはしたのうございますよ」


「はっ!? やべー、グッチーのこと考えてたらつい!」


グレゴリオから正式にプロポーズされた翌朝。仕事に行く彼を見送り、幸せいっぱいの花はメチャクチャだらしなく表情を緩ませながら、一足早い新婚さんムードに浸っていた。あまりの喜び用に、意味もなく笑い声が5・7・5・7・7になってしまう程度には頭の中が幸せいっぱいになってしまっている。


 ☆


『行ってくるぞ、花』


『行ってらっしゃいグッチー! ほら! 行ってらっしゃいのチュー!』


『う! そ、それはその……そういうのはまだ早いだろう! 皆の目もあるし!』


『えーなんで!? 昨日はグッチーの方からチューしてくれたじゃん!』


『あー、なんだ! そういうのは結婚式を挙げた後でしよう! な! な!? では行ってくる!』


麻の玄関ホールには旦那様をお見送りするための使用人たちも勢揃いしている。そんな状況下で、照れるあまり自ら墓穴を掘ったことに気付かず、グレゴリオは慌てて出ていく。


焦らしプレイってことね? オーケー。言質は取ったからね! とニヤリと邪悪な笑みを……じゃなかった。恋する乙女の天使の微笑みを浮かべた花は、ブンブン大きく両手を振って仕事に行く彼をお見送りする。


『行ってらっしゃーい! 早く帰ってきてねー!』


 ☆


「あーグッチーの照れ顔可愛かったなー! なんなん、あんな武骨な見た目なのに中身アレとか、恋の大量殺りく兵器なん? あー、朝からほっぺが筋肉痛になりそう!」


「おふたりの仲が大変良好で、わたくしも嬉しゅうございます」


ガーフィールドが淹れてくれた味わい深いコーヒーに山盛りのホイップクリームと削ったホワイトチョコレートを載せてもらった自家製ウインナーコーヒーを飲みながら、花はすっかりご満悦だ。


昨日の騒ぎで結構ボロボロになってしまった制服の代わりに貴族のお嬢様が日常的に着用しているようなドレスに身を包み、気分は完全に夢見るプリンセスである。


柄にもない、とは言うなかれ。誰しも嬉しいことがあった時は浮かれてしまうものだ。まして素敵な恋人に結婚を申し込まれた翌日なのだから、浮かれるなという方が無理だろう。


「ねえガーちゃん! 産まれてくる子供の名前とか、今から考えておいた方がいいかな?」


「些か早計な気も致しますが、何事も備えておくに越したことはございませんかと」


「だよね! えーどうしよう! 迷っちゃーう! うち、外国風の名前とかあんま詳しくないから、女の子だったら桜とか、男の子だったら猛とか!」


そこまで考えて、はたと気付く。そういやこの国の公用語って何故か日本語なのに、名前とかその辺は横文字よね、と。会話も読み書きも全部日本語だし、ひらがなカタカナ漢字アルファベット全部揃ってるし。


なんでだろ? 不思議。とも思うが、『ま、いっか別に!』で済ませられる範疇でもある。むしろ全く言葉も通じず、見知らぬ文字を1から覚え直さなければならずに済んだだけよかったとも言える。


花はバカだが頭は悪い方ではないのだが、やっぱり勉強は苦手だ。外国語や武道場・ジム通いはモチベーションがあったから頑張れただけであって、普通に学校に行って授業を受けるのはあまり好きではない。


「そんで? うちは今日はどうすりゃいいの?」


「午前中は花様が望まれました通り、一般的な社交界での礼儀作法のレッスンを不肖このわたくしめがつけさせて頂きます。昼食を挟んで午後からは自由時間、ということで」


「はーい! よろしくお願いします、ガーフィールドせんせー!」


それはつまり、裏を返せば自分の興味のある分野においてはどこまででも頑張れるということだ。素敵なマッチョおじさまの後ろ姿に見惚れている間にトライアスロンを完走していた女は伊達ではない。


とまあ、こんな風にとても平和だったのだ。午前中は。


 ☆


「なーに? このいかにも頭も育ちも悪そうな、品のない小娘は。まさかこんなのがチャンドラー家の花嫁になるだなんて、何かの冗談よね?」


「ハァ!? 初対面の相手にいきなりそんなこと言い出すような失礼な奴にとやかく言われる筋合いはないんですけどお!? 頭も育ちもいい人間は普通初対面の相手にそんなこと言わないでしょ常識的に考えて!」


事件が起きたのは午後。いきなりチャンドラー邸にアポなしで乗り込んできた見知らぬ美魔女が、中庭で優雅に3時のティータイムを楽しんでいた花を見つめるなり、いきなりそう扱き下ろしたのである。


風になびくサラサラ黒髪ロングの花とは真逆の、セレブの如き夜会巻きの白髪に豪奢な髪飾り。いや、髪だけではない。全身黒ずくめのドレスに、ジャラジャラと大量の宝飾品を着飾り、口紅は毒々しいまでの紅。


多少化粧はきつめではあるものの、香水共々決して下品にならない程度に抑えられ、サングラスを外して現れた目はとても鋭く涼やかだ。チャームポイントの泣き黒子も、彼女の妖艶な魅力を際立たせている。


「そんで? その歳で一般常識も社会的良識も身に着けてないような失礼オバサンが一体なんの用なわけ? 不法侵入なら警察呼ぶけど?」


「躾のなってないガキね。不愉快だわ」


「不愉快なのはこっちじゃボケ!」


「キャ!?」


腹が立った花は、やおら立ち上がるなり美魔女の豊満なバストを包むドレスの胸倉を掴み上げる。成人男性をぶちのめせるだけの筋力の持ち主だ。成人女性の胸倉を掴み上げ、メンチを切るぐらい楽勝だ。


「何をするの! 放しなさいこの無礼者!」


「なーに被害者ぶってやがんだテメー! いきなり失礼すぎる暴言吐きやがってのはオメーの方だろうがよ! 喧嘩売るなら相手選びやがれってんだ! ママにどういう教育受けてきたんだゴラァ!」


「非常識にも程があるでしょう! 恥を知りなさい!」


「うるせー! その言葉、ソックリそのままお前にお返ししてやるぜ! 恥知らずの失礼ババアにンなこと言われたかねーっつーの!」


これでも花は他校のギャルたちとの縄張り争いに勝利し続けてきた女だ。売られた喧嘩は買うし、なんなら3倍どころか300倍ぐらいにして返す。舐められたらしまいなのはどこの世界でも変わらない。


加えてその短気さと喧嘩っ早さを危惧して黒帯は取らせてもらえなかったが、その気になれば有段者になれるだけの実力と、経験則に裏打ちされた場慣れした胆力も備わっている。


が、そんな花に凄まれようとも、美魔女は怯えもせずに真正面からキっと花を睨み返してきた。その眼差しには覚えがある。こういう目をした女は強く、そして、敵に回すと厄介だと。そう確信できる強い目だ。


「どこの誰だか知らねーが、喧嘩売るなら相手選びな! つーかそもそも、初対面の相手にいきなり喧嘩吹っ掛けてくるんじゃねーよ! 常識ってもんがねーのかオメーは! あ!?」


胸倉を掴み上げられ、ガコガコと激しく揺さぶられながらも全く臆する気配のない美魔女の腹に渾身のギャルパンチが炸裂! する前に、何者かがふたりの間に割って入った。


「おやめくださいおふたりとも!」


「邪魔しないでガーちゃん! うちだけならまだしも、うちのパパとママのことまでバカにされたんじゃ、黙ってらんねーでしょーが!」


花の拳を手の平で受け止め、美魔女の胸倉を掴み上げている彼女の手首を鷲掴みにしたのは、武闘派老執事ガーフィールドだ。


「奥様! ご無事ですか!」


睨み合う3人の後ろから、年季の入ったメイド服に身を包んだポッチャリ系のお婆ちゃんメイドがバタバタと駆けてくる。


「このお方はグレゴリオ様の御母上、アレキサンドラ・サロメ・チャンドラー様にあらせられます!」


「マジで!?」


「キャ!?」


「奥様、しっかり!」


花の絶叫が庭先で揺れる洗濯物を揺らす。咄嗟に手を放すと、彼女はガクっと尻餅を突いた。慌てて彼女の専属のお婆ちゃんメイド、マーガレットが駆け寄り抱き起こしている。


(こんなのがグッチーのママ!? えー!? それって超ガッカリなんですけど! じゃなくて! うーわー、やっちまったか!?)


なんせ相手はお嫁さんの天敵、お姑さんである。いい結婚相手の三大条件、『金持ってる』『長男長女じゃない』『両親が既に亡くなっている』の一角を担う強敵だ。


何かと面倒事を押し付けられがちな長男の嫁はちょっと、とか、義両親との人間関係のいざこざや将来的な介護を回避できるのならそれに越したことはない、とか。


もっとシンプルに、いい歳して実家暮らしで家のことは全部ママにやってもらって当然だと思ってる男はちょっと不安が残るわよね、みたいなその辺の諸々の問題を回避できるなら、それに越したことはないわけで。


「ゲホ! ゲホ! ハア、ハア! ガーフィールド! 一体なんなのこの娘は!」


「安静に! すぐに回復魔術をおかけ致しますわ、奥様!」


「結構よ!」


お婆ちゃんメイドのマーガレットに介抱され、ヨロヨロと立ち上がった謎の美魔女ことアレキサンドラ・サロメ・チャンドラー夫人。立ち上る怒りのオーラはさながら陽炎の如く、揺らめいて見えそうだ。


並みの小娘であればヒっと怯えてしまってもおかしくない程の凄まじい形相で睨み付けられたが、自分独りで立ち上がれないような女に凄まれても、とどこ吹く風の花は、やっちまったかなー、と椅子に座る。


(ハァ。せめてもうちょっとマシな女ならまだよかったのに、よりにもよってコレとか終わったかなー、うち。いやいやでも、さすがに初対面でいきなりあんなこと言われたら普通怒って当たり前だよね?)


飲みかけのホイップクリームドカ盛りコーヒーをお行具悪く飲みながら、とにかく甘いもの、甘いものを摂取して落ち着こう、と上のクリームをスプーンですくって口に運ぶ。苦いのはコーヒーのせいだけではなかろう。


「で? 結局何しに来たのよ、あんた。嫁入り前に嫁イビリってんなら、性格だけじゃなく趣味も悪いのね。人様にケチをつけてる暇があったら、まずは自分の歪んだ性格と根性矯正してからにしたらどう?」


「つくづく不愉快なガキね! ガーフィールド! お前という者がついていながら、何故このような問題外の娘をあの子の傍に近付けさせたの!」


「は。それには一言でご説明させて頂くには深すぎる事情がございまして」


「言い訳は結構! 説明なさい! 即刻この娘を追い出してから、すぐに!」


あーやっぱりそうなるよねー、とヤケ食い気味に、お茶請けのケーキをパクつきながら成り行きを見守る花。


どれだけムカつこうが、先に手を出した方が負け、という世間一般における暗黙の了解を鑑みるに、状況はこちらが不利である。加えて相手はグレゴリオの母。


こっちはどこの馬の骨とも知れない異世界人の召喚聖女。立場も権力も財力も、手持ちの戦力はあちらの方が圧倒的に上なのだ。


「残念ながら、そうは参りません、奥様」


だがガーフィールドの口から出てきたのはこの場の誰にとっても意外な言葉だった。むぐ? とケーキで頬を膨らませた花も、カっと目を見開いてワナワナと拳を震わせるアレキサンドラも、驚きの視線を彼に向ける。


「なんですって!? わたくしの命令が聞けないというの!」


「失礼ながら、仰せの通りで。わたくしの今の主、この邸宅の主人はグレゴリオ・チャンドラー様唯一人(ただひとり)。たとえ奥様と言えど、グレゴリオ様の御意向を窺わずして勝手を働くわけには参りません」


「そう、随分と偉くなったものね!」


「お褒めに与り恐悦至極」


ピシャリと断言するガーフィールド。憤懣たるやないといった表情で、唇を噛み締める姑アレキサンドラ。ハラハラと不安そうな表情を浮かべるお婆ちゃんメイドのマーガレット。そして、やるじゃんと親指を立てる花。


かくしてギスギスムード満点のティータイムは、第2ラウンドの舞台をチャンドラー邸の食堂に移して、仕切り直しと相成った。


 ☆


「聖女!? 別の世界から呼び寄せたですって!? 冗談じゃないわ! 幾ら結婚相手が見付からないからといって、そんな得体の知れない女をあの子に娶らせるだなんて、こんなバカな話がありますか!」


「バカはオメーだろ」


「花様、どうか今は穏便に」


「はいはい、悪いのはぜーんぶうちですよー。グッチーのお嫁さんが全然見付からなかったのも、太陽が東から昇るのも、紅茶が紅いのもぜーんぶうちのせい」


ふーんだ! と椅子にふんぞり返った花は、腕組みをしながら天井を仰ぐ。嫁入り前の娘が相手方のお義母様にとんだ失礼を働いてしまった、と状況だけ見るなら圧倒的に気まずい事態だ。


グレゴリオと母親の仲がよいのかどうかは知らないが、どうあれ花がアレキサンドラの胸倉を掴み上げて突き飛ばしてしまったことは紛れもない事実。それが彼にどんな印象を与えるかは、まあ想像したくもない。


人間としてまともなガーフィールド、当事者であるアレキサンドラと、彼女の専属メイドだというマーガレットの証言がある以上、やったやってないの水掛け論に持ち込んで有耶無耶にすることも難しかろう。


「出ていきなさい! 即刻、この家から出ていきなさい! お前のような者を、グレゴリオの妻とは認めません!」


「オメーが帰れよ! グッチーのママだろうがなんだろうが、いきなり来て勝手なこと言ってんじゃねーぞ! 何様のつもりじゃボケ!」


「おふたりとも、どうか冷静に。此度の一件をどう解決するか、判断はグレゴリオ様に仰がねばなりません」


「なんですガーフィールド! よもやあの子がわたくしの正しい判断に従うのではなく、この小娘を庇うとでも言いたいの!」


「それを決めるのはわたくしではございません。ともかく、今夜旦那様がお戻りになられますまで、おふたりともどうか荒ぶる心をお鎮めになられてお待ちくださいませ」


埒が明かない。アレキサンドラはもう完全に花を敵視して追い出すつもり満々のようだし、花もこんな風に思い込みだけで悪しざまに罵られてしまってはお姑さんだろうがなんだろうが好きになれるわけがない。


「わたくしに、辛抱せよ、と? 冗談ではないわ! グレゴリオのためを思えばこそ、こんな小娘、追い出さなければまたあの子が不幸になるに決まっているじゃないの!」


「うるせーなあ! なんだってそんなヒステリックにうちのこと嫌うんだよ! 確かに殴ろうとしたのは悪かったかもだけど、元はと言えばテメーが先に喧嘩売ってきたんだろうが!」


「当然でしょう! お前のような小娘が、本気で20も30も年上のあの子を好きになるとでも思っているの!」


「あ!? それどーゆー意味だよ!」


ダン! と両手をテーブルに叩き付け、立ち上がって花を睨むアレキサンドラに、聞き捨てなんねーんだけど! と花も立ち上がって睨み返す。


「所詮お前も今までの、あの子の地位や財産目当ての女たちと同じに決まっているわ! そうでなければ、誰があの不憫な子に愛を囁くというの!」


「……ふざけんな!」


憐れみという名の悲しみで覆われた義母の言葉。その言いたいこと、つまり。


「ふざけんなふざけんな! ふざけんな! さっきから聞いてりゃアンタ! グッチーのママのくせに、グッチーのこと悪く言うのかよ!」


「っ! お黙り小娘! わたくしが、あの子の母であるこの! わたくしが! 言いたくて言っているとでも思うの!?」


金目当てじゃなけりゃ、あんなブサイクな男と誰が結婚するもんか。


花に胸倉を掴まれ、突き飛ばされ。どんな暴言を浴びせられた時よりも、アレキサンドラは激しい怒りを露わにした。そして、その奥に潜む悲しみも。


「うちはまだ出会って半月も経ってねーけど、グッチーのことブサイクだとか思ったことは一度もねーかんな! マジだかんな!」


「今までにあの子に近付いた女たちも皆、そう言って取り入ろうとしたのよ! 人は利益のためなら心にもない嘘を幾らでも吐ける生き物! 口先だけならなんとでも言えるわ!」


「口だけじゃねーよ! うちはグッチーとハグもしたし、なんならチューもしたぞ! それに!」


ガーフィールドが止める間もなく、花とアレキサンドラは取っ組み合いの大喧嘩を始める。相手の髪の毛を、或いは顔を掴んで、綺麗に整えられたネイルで引っ掻き、見苦しく肉体言語で争う。


「昨夜は正式に、プロポーズだってしてくれたんだからあ!」


「なん……ですってえええええ!?」


「奥様! 花様!」


衝撃の一言に、呆然自失のアレキサンドラ。ガツーン! と脳天をハンマーでフルスイングされたような途轍もない衝撃に、全身から力が抜けていく。そしてその隙を見逃す花ではない。


完全に無力化されてしまった彼女を絨毯の敷かれた床に組み伏せながら、まだやるか! と息を荒げ、頬から一筋の血を滴らせる花。そんなふたりの間に慌てて割って入るガーフィールド。


悲鳴を上げて、目の前の惨状を見守るよりないお婆ちゃんメイドのマーガレット。遠巻きに控えていた使用人たちも、ハラハラドキドキしながら事の成り行きを見守っている。


分かっていたことだ。彼らはアレキサンドラ・サロメ・チャンドラーという人物の人柄を知っている。個人差はあれど、それなりに長い付き合いだから。だから、早かれ遅かれこうなるだろうと。


「嘘よ! 嘘、嘘! あの子は騙されているんだわ!」


「奥様! 嘘ではございません! わたくしどもも、確かに旦那様の求婚の言葉を耳に致しました!」


「ああ、なんてこと! なんてことなの! あり得ない! あり得ないわ! 嘘よ、そんなの嘘!」


「だったら、本人に聞いてみることね!」


フン! と鼻息荒く、力尽くで抑え付けていたこのわからずやの姑の上から退く花。放心状態でガーフィールドに縋り、叫び続ける彼女を冷たく見下ろし、手の甲で頬の血を拭う。


いいだろう。もしこの期に及んで、グレゴリオが母親を庇い花を責め立てるようならば、幾ら見た目が100億点満点だろうがなんだろうが、そんなマザコン坊やは願い下げである。


それこそ追い出されたとしても悔いはあるまい。花は言うべきことは言った。やるべきことはやった。ならば、後は結果を待つだけ。


「お望み通り、部屋でグッチーの帰りを待っててあげるわよ!」


「花様! まずはお手当てを!」


「要らない! この程度の怪我、なんてことない!」


「ですが!」


「うるさい! それぐらい、自分でできるし!」


アレキサンドラを抱きかかえたまま、何をしている、早く花様を追え! と指示された使用人たちが追いすがるも、不機嫌になった花は取り付くしまもなく。


はてさて嫁入り前から勃発してしまった嫁姑戦争の行方やいかに。仕事で疲れて帰ってくるなりこの難題に巻き込まれる可哀想なグレゴリオに合掌。頑張れ。結婚するならこの手の問題は避けては通れないぞ!

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