Act 04 絡み合う蜘蛛の糸
Phase 00 急襲
ジョニーズ事務所に巣食うアイドルたちの闇を暴露してから、僕たち「歌舞伎町トラブルバスターズ」は逆風の中に晒されることになった。入り口のドアには落書きされ、ガラスは滅茶苦茶に割られ、そして「相談窓口」である僕たちの公式サイトには心無い人物からの誹謗中傷が寄せられるようになった。それだけ、「プリティ・プリンス」というのは国民的な人気を誇るアイドルだったことを痛感していた。とはいえ、あの謝罪会見に関する報道はジョニーズ事務所の圧力によって規制が敷かれてしまったので、今となっては風化してしまったのは言うまでもないのだけれど。
それから、僕たちは日々歌舞伎町で路頭に迷う人たちのトラブルを解決していた。そのトラブルの大半は、痴話喧嘩によるものだったり、半グレ集団が関わっていたりするものである。半グレ集団といえば、例のアイドルの闇を暴いてから祖露門の動きが少ないような気がする。ここまで動きがないと、逆に不安になる。もしかしたら、何かの拍子に自然分解してしまったのだろうか。それとも、新たな犯罪を企んでいるのだろうか。そんな事を思っているときだった。綺世が傷だらけの状態でアジトへと向かってきたのだ。僕は、急いで綺世を手当して話を聞く。
「薫、すまない」
「どうしたんだ」
「僕がスパイであることが祖露門にバレた」
綺世の一言に、僕は言葉を失ってしまった。綺世の素性が祖露門にバレた? そんな事、考えられないし、考えたくもない。一体、どこで綺世がミスを犯したのだというのか。僕は、綺世に対して話を聞こうと思ったときだった。
何かが、アジトを炎で包む。拙い、祖露門のメンバーが投げ込んだ火炎瓶か! 僕と綺世は、火の手が迫るアジトからなんとか抜け出そうとする。しかし、このアジトは元々風俗店が入居していたビルを改装したので建築基準法違反の構造になっている。故に抜け出そうとしても中々抜け出せない。正直、僕と綺世は死を覚悟していた。
「綺世、いいか」
「薫、急にどうしたんだ」
「僕は賭けに出る。仮に、ここから飛び降りた場所にゴミがあれば僕たちは救われる。しかし、ゴミがなければ僕たちは即死だ」
「どうしてゴミなんだ」
「僕の勘が正しければ、この窓の下はゴミ置き場だ。今はまだ夜中だから、ゴミは回収されていないはず。確率は50パーセント。つまり半々だ」
「しかし、それから先の事は考えていないですよね」
「ああ。考えていない。しかし、僕たちはあらゆる事件を経て色んな人と信頼関係を築くことができた。だから、誰かしらが僕たちを救ってくれるはずだ」
「薫、その言葉を信じるよ」
そして、僕は雑居ビルの5階から飛び降りた。目の前に、黒い物体が散らばっている。
――その後のことは、覚えていない。
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