Phase 01 暴露系インフルエンサー
「どーも!暴露系インフルエンサーのにっしーですっ!今日はあの人気アイドルの裏の顔を暴いちゃいたいと思います。その前に、基礎知識として『半グレ集団』を知っておく必要がありますね。彼らは暴力団では無いものの、犯罪行為に手を染めたり、薬物の売買をしていたりと事実上の反社会的勢力と言っても過言ではありません。『半グレ集団』は、芸能人ともコネクションを持っており、中には人気アイドルグループである『P』の『J.M』も『半グレ集団』とのコネクションを持っているとの噂です。これは僕が芸能マネージャーをやっていた時からずっと言われていたんですけど、事務所側から圧力がかかっていたので中々言えませんでした。しかし、マネージャーを辞めた今だからこそ言えます。『P』の『J.M』は半グレ集団とコネクションを持っています!」
馬鹿馬鹿しいと思いつつ、僕は動画サイトでその動画を見ていた。仮に「P」が「プリティ・プリンス」だとして「J.M」が本村准二だとしたら、今後公開が控えている『レジェンド・オブ・ノブナガ』にも支障が出ることになる。この作品は東堂映画が巨額を投じて制作した夏休み映画だ。この動画が事実だとしたら、最悪公開中止やお蔵入りも辞さない。まあ、事務所の圧力によって「無かったことにされる」のがオチだろうけど。
「薫、そういう動画見るんすね。なんか意外っす」
「ああ、拓実か。いや、職業柄こういう動画も見ておかないといけないからな」
「職業柄って、映画館のアルバイトのことっすか?」
「ああ、そうだ。日本映画というのはだいたい12月から1月ぐらいに映画会社の方からその年のラインナップが発表される。そして、超大作はゴールデンウィークや夏休みに公開されることが多い。今、暴露系インフルエンサーが紹介している『P』の『J.M』は恐らく『プリティ・プリンス』の『本村准二』だ。彼は夏休み映画として『レジェンド・オブ・ノブナガ』の公開が控えている。このタイミングでの暴露となったら、興行収入に支障が出る可能性も高い」
「流石映画館で働いているだけあって、そういうの詳しいんすね」
「そうだ。ただ、僕は今どきのアイドルには
「俺もそういうのあまり興味ないんすよね。どちらかって言えば邦ロックの方が好きっすからね。ただ、流石の俺でも『プリティ・プリンス』ぐらいは知ってるっす」
「そうか。話が早いと助かる」
「まあ、俺の妹がファンというのもあるんすけどね」
「というか、拓実って妹がいたのか」
「そうなんすよ。頭がキレて、結構かわいいっすよ。これ、写真っす」
拓実がスマホの画面を僕に見せる。今どきの女子高生にしては、清楚な見た目がかわいいと思った。
「かわいいな。僕に恋人として紹介してほしいぐらいだ」
「お前には碧がいるっしょ」
「そうだな。口が滑って申し訳ない」
そんな話をしている時だった。ドアが開いたことを知らせるベルが鳴ったのだ。これは、依頼人か? そんなことを思いながら、僕はドアの方へと向かった。
「ここ、『歌舞伎町トラブルバスターズ』ですよね。僕は
確かに、さっきパソコンで見た人物と同じスキンヘッドで痩せぎすの男性が、そこに立っていた。
「マジっすか」
「本物なのか。確かにさっきまで君の動画を見ていたのだが」
「それは本当ですか。どんな動画を見ていたんですか?」
「まあ……『P』の『J.M』が半グレ集団とコネクション持っているとかそんな内容だった気がする」
「そうですか。あの、『歌舞伎町トラブルバスターズ』には本村准二の動向を調査してほしいんです」
「矢っ張り、『P』の『J.M』は『プリティ・プリンス』の『本村准二』で間違いないのか」
「はい。間違いないです。彼は半グレ集団の『
「そうか。祖露門にはあるメンバーをスパイとして潜らせている。そのメンバーから話を聞くことにするよ」
「本当ですか! ありがとうございます! 明確な証拠が掴めたらさらなる特ダネを得ることが出来ます!」
「そうか。互いにWin-Winの関係だな」
「それ、俺も協力するっすよ」
「拓実、どういうことだ」
「『にっしーチャンネル』に俺が出るんすよ。俺なら動画サイト映えするかもしれないっすからね」
「まあ……良いけど、あまり迷惑をかけるなよ」
「分かってるっすよ」
「そうだな。『歌舞伎町トラブルバスターズ』のメンバーが実際に僕の動画チャンネルに出てくれたら視聴者数も右肩上がりだ。歓迎するよ」
「あざっす!」
こうして、僕たちは「にっしーチャンネル」と共同で本村准二の腹を探ることになった。
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