Phase 02 三文記事
早速、僕は本村准二と
「もしもし。綺世?」
「あっ、薫か。祖露門への潜入捜査は順調に進んでいるところだ」
「そうか。なら良いんだが」
「それにしても、急に電話してきたな。何があったんだ?」
「実は、祖露門のメンバーの中にある人物がいないか調査してほしい」
「誰なんだ」
「本村准二っていう人物だ。彼は表の顔では有名なアイドルだが、裏では半グレ集団とコネクションを持っているらしい」
「ああ。メンバーじゃないけど本村准二と祖露門がコネクションを持っているのは事実だ」
「それは本当か」
「本当だ。よく見る顔だと思ったら街頭のビタミン剤やスマホアプリの広告で見たことがある顔だったよ」
「それで、本村准二はどういう経緯で祖露門とコネクションを持ったんだ」
「ゴメン、それは僕にも分からない」
「そうか。でも、本村准二が半グレ集団とコネクションを持っているという確実な情報が得られただけでも感謝している。綺世は引き続き潜入捜査を続けてくれ」
「分かった。薫の期待に応えてみせるよ」
「じゃあな」
こうして、僕は綺世との電話を終えた。それにしても、どういう経緯で本村准二と祖露門はコネクションを持ったのだろうか。ネット上で色々な噂を収集しているが、
【熱愛スクープ! 人気アイドルと人気女優の蜜月デート!】
下らない三文記事だと思いつつ、僕はその記事を読むことにした。
「週刊文潮では、人気アイドルグループ『プリティ・プリンス』のリーダーである本村准二と女優の
そういえば、本村准二と福原美月は月9ドラマ『匿名刑事』でバディを組んでいたな。平均視聴率は最近のドラマにしては高く、15パーセントぐらいだったか。僕もリアルタイムで見ていたドラマである。あらすじは「警視庁の匿名課という架空の部署で、未解決事件を2人の天才刑事が解決する」という内容だったか。とにかく、犯人役というか悪役が毎回豪華で、ラスボスが警視庁の捜査一課の刑事という設定が、斬新だと思った。映画館で働く身からすれば、是非劇場版として見たいドラマだと思った記憶がある。それにしても、あの2人がプライベートで蜜月関係にあるとは、僕も思わなかった。週刊誌は所詮三文記事だが、たまには有益な情報になり得るのだ。そんな事を思いながら、僕はコーヒーを口にする。基本的にブラックコーヒーしか飲まないが、週刊誌を買いに行ったコンビニに売っていなかったので、仕方なくカフェラテを買うことにした。そういえば、この缶コーヒーのイメージキャラクターは福原美月だったな。コンビニの小さな広告に、缶コーヒーを持った彼女の写真が貼ってあった。やがて、律がアジトにやってきた。当然、今回の依頼は律にも話してある。
「鯰尾君、今回の依頼ってヤバいですね」
「ヤバいのか」
「人気アイドルの闇を暴くっていう依頼ですよ。ヤバいに決まっているじゃないですか」
「それはそうだが、事務所側の損失とかは考えたことがあるのか」
「そうだな……考えたことはないッ!」
「律、意外と天然だな……」
「そうか。僕は天然なのか。確かに母親の子宮から産まれてきた以上僕は天然物ではあるが」
「そういう意味じゃないって……」
「すまん。それはともかく、信濃君からの話は僕も聞かせてもらったぞ。本村准二が祖露門とコネクションを持っているというのは本当だな」
「本当だ。それで、律にはある事を調べて欲しい」
「それは何だ」
「多分、律じゃないと分からないことだ。これ、オンラインカジノのアドレスだから、ここから顧客データを盗み出すんだ」
「それってまさか」
「そう、そのまさかだよ。僕の見立てが本当ならば、恐らく本村准二は祖露門が運営するオンラインカジノの顧客だ」
「マジか」
「マジだ。情報が定かかどうかは分からないが、『にっしーチャンネル』を見ていたら、オンラインカジノという単語が出てきた。僕は片っ端からオンラインカジノを調べていったが、恐らくそのアドレスは祖露門が運営するオンラインカジノで間違いない」
「どうして分かったんだ」
「いつものアレだよ。そのページを開いたら映像がフラッシュバックしたんだ。そこに映っていたのは、紛れもなく本村准二だった」
「なるほど。面白いな」
「僕は2週間以上の記憶が保てない分、『モノ』を触媒にしたら映像が見えるからな。まさかインターネット上のサイトも触媒になり得るとは思わなかったが」
「まあ、僕に任せて。ここから顧客データを奪い取ってやるよ」
「頼んだぞ」
こうして、僕は律にオンラインカジノの顧客データを盗み出すように依頼した。
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