7.2

「そっちのクロードさんは、もう少し上手くやるべきだったな」

「うん?」

「クロードさん、あの客に何かきついこと言ったんだろ。すげー愚痴ってたぜ。ああいう鈍い客には、直球でいかないと駄目なんだよ。ホストとしての腕は、確実にうちのアンソニーさんのほうが上だな。ははははは」

 カツリと、背後でひづめの音がした。

「聞き捨てならねえな」

 良く響く、低い声に振り返ると、暗い路地の中に漆黒のミニブタが立っていた。

「アンソニーのほうが俺よりも上だって?」

「い、いえ…。そんなつもりで言ったんじゃ…」

「ク、クロードさん…」

 「スキャンダラス・バニー」のスタッフはもちろんだが、「暁の古城」のスタッフも震え上がっている。

 次の瞬間、ミニブタの眼が狂暴な色に光った。

 ミニブタは即座に低い姿勢を取って、その黒い弾丸を思わせる体躯を深く沈めると、獰猛なクロスズメバチの如くにかわいそうな目の前の標的に襲いかかった。


ぎゃあああ~~~………

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