6.2
唖然とする彼女に、社長は悪びれもなく言った。
―これは私のデザインよ。あなたのデザインなんか、私は見たことすらない。
―私のデザインのどこがあなたのデザインと似てるっていうの。頭がおかしいんじゃないの。
―そんなに似てるって言うなら、証明してみなさいよ。
実際問題として、デザインの模倣を証明するのは簡単なことではない。彼女は引き下がらざるを得なかった。
しかし、この出来事のせいで、彼女の中で何かが変わった。今まであったものが壊れて無くなったたのかもしれないし、今まで無かったものが生まれ出たのかもしれない。
彼女は、会社の口座から現金を無断で持ち出すという行動に出た。経理を担当していた彼女には簡単なことだった。
犯行は複数回に分けて行われた。その期間は半月以上にも及んだが、社長も他の社員も、会社名義の預金通帳の残高がどんどん減っているのに気が付かなかった。
そして彼女は、社長の机の上に、残高が数百円になった預金通帳を置いて、失踪した。
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