4.1
「失礼します」
見ると、黒いウサギが彼女を見上げている。
「アンソニーです。よろしくお願いします」
(あら。また黒い子が来た)
黒いウサギは優雅に跳躍し、音もたてずに彼女の隣に収まった。
(まあ、別にいいか…)
そのウサギは、しなやかで美しい姿をしていた。黒いベルベットの首輪の真ん中には紫色の石が輝いており、彼女はそれを見て、紫色をしているということはアメジストか紫水晶あたりかなと、ぼんやり考えた。
実はこの時、店の奥で何人かのスタッフとホストが、こんなことをひそひそと囁き合っていた。
「おい、アンソニーさんがユキヤさんの後に入ったぞ」
「何でだ?」
「さあな。どっちにしろ、あの客、運が良いな」
「指名なしでナンバーワンと飲めるなんてな」
スタッフ達が言い合っている通り、アンソニーはこの店のナンバーワン・ホストである。
ナンバーワン・ホストが空いていることなど滅多にないのだが、たまたま空いていたのだろうか。
いや、実はここにいるスタッフ達は知らないが、アンソニーはちょうど店にやって来た自分目当ての客に頼んで、ユキヤを指名してもらったのだ。
アンソニーも「暁の古城」のクロード同様、彼女の中にある危ういものを感じ取ったのである。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます