3.1

 このふたつのホストクラブの形態は同じだ。ホストを務めるのはウサギあるいはミニブタで、彼らは客の隣に座って話しをするだけである。

 飲み物は、水割りの場合は、客が自分で作る。ワインやカクテル等の場合は、バーカウンターで作ったものを人間のスタッフが運んできてくれる。

 今、彼女の隣に座っているのは、地色はグレーで、首の周りと手足の先が白い、ぽっちゃりとした青年のウサギだった。首にはゴールドのチェーンでできた首輪を付けている。

「感じの悪いホストだった。ミニブタのくせに、目付きが悪くてあんまりかわいくないの。体もちょっと大きめだし、背中の毛は立ってるし」

 「スキャンダラス・バニー」に飛び込んだ彼女は、「暁の古城」での不満をぶちまけていた。

 飲んでいるカクテルは、テキーラベースの濃いめのものである。飲みたい気分だと言って、さっき注文したのだ。

「好きなようにできるのは三回目の来店からなんて、そんなルール聞いたことないよね」

 隣に座っているウサギは、こっそりと苦笑いしていた。

 そして、この客にそんなことを言った「暁の古城」のクロードの意図を考えた。嫌な客だったからなのか。それとも…。

 だが、自分がこの客に言うべきは、こんな言葉だろう。

「それは少しひどいかもしれませんね。相手はお客様なのに…」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る