2.1

 バーテンが言ったとおり、2軒のホストクラブは、路地を入ってすぐのところにあった。

 2軒のうちの、向かって左側の店を選んで、彼女はドアを開ける。

「ようこそ。ホストクラブ『あかつきの古城』へ」

 生真面目な顔の男性店員が、彼女を迎え入れた。

 ここまでは、普通のホストクラブと変わらない。あのバーテンもそう言っていた。

―でもね、次の瞬間、お客さんは目を真ん丸にして驚くよ。『きゃー、かわいい!』ってね。なにせ、その店のホストは、全員ミニブタなんだから。

 ミニブタのホストクラブ。一体、どんなところだろう。

―え?ミニブタに酌ができるのかって?嫌だね、お客さん。できる訳ないでしょ。その店ではね、ホストは客の隣に座ってるだけ。水割りなんかは、客が自分で作るの。野暮なこと言わないでよ。

 通されたソファの席に座って、ビールを飲みながら待っていると、彼女のところに一匹のミニブタがやって来た。

 白地に薄い茶のブチ模様の、若いオスのミニブタだった。首に青い首輪を付けている。

「ロミオです。よろしくお願いします」

 ミニブタのホストは、彼女が座っているソファにぴょんと飛び乗った。

「きゃ~、かわいい~」

 彼女は嬌声を上げて身悶えしてみせた。普段はこういうキャラではない。

「ねえ、頭を撫でていい?」

「本当は、この店はボディタッチはNGなんですが、少しだけなら…」

「きゃ~。柔らかい毛~。ふわふわ~」

 彼女はロミオの頭を撫でながら、キンキンと響く声を上げた。

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