不思議なホストクラブにようこそ!
サビイみぎわくろぶっち
1.
夜の街には、常識では説明が付かない不思議な一角が存在する。
そこを訪れた時の反応は人によって様々だ。ある者はそこで出会った光景に驚いて怯え、ある者は喜びのあまり涙を流す。
彼女も、そんな一角に足を踏み入れた一人である。
それは暑くて騒々しい、人の感情や欲望を煽って、冷静に物事を考えることを許さないような、ある真夏の夜のことだ。
彼女は元気のない様子だった。普段は来ない街の、初めて来たバーのカウンターで、ジンフィズなんか飲みながら、オニオンスープとフィッシュ&チップスを落ち着かない顔で食べている。どこかの店に遊びに行く前の腹ごしらえらしい。
どうしてそれが分かったのかというと、さっき彼女が、自分の前に立っているバーテンに、こんなことを尋ねたからだ。
―ぱ~っと遊べる店はないかって?ホストクラブでいいですか?
一度話し出すと、バーテンは必要以上に馴れ馴れしかった。
―そうねえ、それならね…。あそこのビルとビルの間に小さな路地があるでしょ。その路地に入ってすぐの、向かい合わせの2軒がお勧めかな。
バーテンは、そう言って窓の外を指し示した。確かに、ビルとビルの間に路地が見える。
―どっちがいいかは、その人によるね。お客さん、ぜひ行ってみなよ。癒されるよ。大丈夫、恐い店じゃないから。あんな店、他にはないよ。マニアック過ぎるっていう人もいるけどね。
彼女は、頼んだものをさっさと食べ終えて席を立った。教えられたホストクラブに行くようだ。
―いってらっしゃい。楽しんできて!
バーテンは、その後ろ姿に手を振って見送った。
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