49話 暑さ


あまりに暑くて全身で湖に入った。


「ふぃー」

「しんどい」

「弱音は珍しいな」

「妹は絶対に助けるけどしんどいはしんどい!!」


寒さには耐えてきたが暑さも厳しい

湖があったのが幸いだがこの山はレベルが高い

ヒツジがいつ出るか不明


「馬はまだパワーってだけとはいえ」

「拠点の近くに犬が出てんな」

「今更あいつが出た程度なら僕でも」

「油断するなよ」


近づいてナイフで一撃だと思っていたが

先に動かれて嚙みつかれた

幸い大きな怪我と言えるようなものではないが

ただでさえ指を無くして動かしにくい左手をやられた


「経験値にはなってる?」

「おい!?」

「動けはするから平気」


今までの犬より明らかにかまれた時の威力が弱い

やはりレベル上げをした身体はそれなりに頑丈

とはいえ血は出ているので処置だけなんとか―――


「やりにくい」

「ほら包帯かせ」

「うん」


『戻った』


ウサギ定石が出現


「召喚獣じゃねーか」

「HP切れでいなくなってたの?」

『そうだな』

「お前およげる?」

『無理だ』

「じゃあ魚はとれないか―――」

『食料があまりに窮地ならば考える』

「窮地だよ」

『泳げはしないが魚を切る事は出来る』

「え?」

『二人がこちらに魚をおいつめてくれれば―――』


こうして湖で長い枝で下の方をつつきながら泳ぎ回り

拠点に近い場所に魚を追い込んでいくことに

こんなので上手くいくのか疑問だったが

思ったよりも魚が生息していて


『エックスカット!!』


5匹か6匹ほどウサギ定石が手に入れた。

1時間うごけないデメリットこそあるものの

今は食料が手に入ったのが何よりうれしかった


「この大きさだと鍋で煮るしかないかな」

「火ぃ使いたくねぇな」

「こういう食材は生で食べる訳にいかないから」


最も恐ろしいのは『寄生虫』がいること

焼けばその脅威はなくなるに等しい

しっかりと煮詰めて魚を食べた


「いい味してんな」

「うん」

「次はまた雪山か?」

「ウサギ定石、動けるようになったら偵察で」

『分かった』


だがその夜にヒロが倒れた

腹が痛いと言い聞いたところ

昼間に作った鍋をさきほど食べたら痛い


「水のんで」

「うぅ……ッ」

「食材が悪くなるのも早い事を考えて無かった、ごめん」

「それよかお前ひとりで―――」

「無茶はしないよ」


ウサギ定石は次の山へ偵察にいってしまっているし

自分に何かあればそれこそヒロさんを守る人がいない

今は水を沢山のませて回復を待つ


「……うぁ!?」

「え?」


指をさしてくれたのですぐわかった

蛇が近づいてきていたのだ

ナイフで攻撃したら半分になりつつ噛みついてきた


「うわ!?」

「たっ」

「この、野郎ッ!!」


残った半分の頭に刺した瞬間消えた

確かに変な模様の蛇だったがモンスターと思っていなかった。


「いや、まずい!!」


蛇のモンスター

いや蛇全般に言える事だが毒があれば死ぬ

かまれた箇所から血を吸いだして吐き出した

多少は抜けたかもしれないが


「ショードクってのはどうだ?」


消毒液をかけてさらに腕に包帯をきつく巻いてもらって

もし毒があったら全身にいかないように処置

腕が膨れ上がるような事態が起きれば毒の可能性が高い


「そうなったら腕ごと―――いくしか」

「毒を消す薬じゃなかったのか?」

「多少の解毒効果はあるけどせいぜい入口の余計な毒を取る程度」

「テントがねぇのはやっぱり無謀だな」


もしも死ぬような毒ならば膨れ上がるような事が起きるが

腕はほとんど変化が無い

でも感じるのはし『しびれ』で


「これもしかして『しびれ毒』かな」

「……なんだアレか」


状態異常にもいろいろあるが

身体が動きにくくなるだけの毒もなかにはある

ターンの行動が時々できなくなるだけでHPが削られることは無く


「テントを作ろう」

「あのバリケードも蛇は通り抜けそうだな」

「まだ痛い?」

「きちぃけど何とか」

「ここで下手に動くよりしっかり治して」

「そうか?」


テントを建てられるだけの確保は本当に困難で

切りにくい木にごつごつした岩

それでも何とかまずは切れそうな木を切って周りを整えて


「この木さえ切れればなんとか」


ナイフでは傷がほとんどつけられず

つるはしでどうにか少しずつ削り

翌日の朝を迎えた


「一晩寝たらマシになったな」

「この木さえ切れればテントが張れそう」

「なら―――イッテンブレイク!!」


ヒロの必殺技で大きな木は倒れ―――なかった

まだもうすこしかかるのでナイフで削り出して

やがて倒すことだけは出来たが大きすぎて運べず

ヒロの力でもむずかしかった為


強引にテントをたてる事に決めた。


「出来るのか?」

「この状態ならなんとか」


巨大テントを鞄から出してかなり強引な建て方をした

本来ならば支えになる部分を別の枝などで代用して短くし

大木がたおれている部分にのせて端っこにした


「完成!!」

「もう夜なんだよな」

「暑さと敵の警戒といろいろが重なったからね」


『今もどった』


偵察に行ってくれたウサギ定石の話では次は雪山

つもってはいないし枯れ木なども所々ある

一番の問題はクレパスがある事


『あちこち割れていて落ちそうになった』

「氷の割れ目?」

『岩が凍り付いている、が正しそうだな』

「梯子でなんとかなりそう?」

『俺が見た物だけならば梯子で渡れはする』


無理やり作ったせいか風でテントが揺れ始め

一旦箱から出てきた外れ枠のビニール紐でテントを周辺の木にくくりつける

まだ少し揺れはするが壊れる確率は下がったように思う


「箱でたな……なんだ?」

「食料だ」

「缶詰っていうやつだよな」

「……次の場所へ行こう」

「まじ?」

「この拠点には二人にいてもらう」


缶詰めは30個あり種類が『肉の缶詰』で

次の地点にいけるだけの食料が揃った事を意味していた。

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