45話 家をあさる


「消毒液って最近は使わんのとちゃんけ?」

「涎まみれのモンスター犬や猿に噛まれたりする世界だからね」


確かに消毒液は治りが遅くなるので近年は使われない傾向にある

水洗いすべきという意見は出てきそうだ

だがここはゲームの中

どんなウイルスや未知の毒でもゲーム世界である以上おかしくない

何がいいたいかというと最悪の事体よりマシ

傷の治りこそ遅くなるものの清潔に保つのが難しいここから先絶対に必要なものだった


「次の家にいかへんか?」

「うん」


こうして他にもあった建物に足を運んだ

一つは本当に民家で中に入ると靴が並ぶ

いいものを見た


「子供靴!!」

「そうかこれ全部をもっていってええんか」

「ゲームの中だから」

「ゲームん中でなくても持っていくときは持っていくねんな」

「ガチストーカー目線止めて」


2階に子供服

リアリティがありすぎて不法侵入気分だが

久利巣が本当に着替え全部ぶかぶかなのでありがたく拝借してもらうことに


「着るものが丁度いいって助かるなぁ」

「うん(下着などを見ないようにしている)」

「上着も結構ええダウンあるし靴下も丁度ええで!」

「うん(必死で目を反らす)」


他にも救急箱や食料がないかと探索

冷蔵庫の中にはものがほとんど無く

さらに何日も放置されたやばい物体と化していた



「あ、でもこれはいける」


ラーメンの袋が出て来たが水滴やカビがついてる様子は無く

賞味期限の表記がなくて分かりにくいが食べられそうだった

大人部屋からも着替えを拝借



「人の家って感じがして落ち着かないな」

「箱が出てるかみにいかへん?」

「確かにもう夕暮れだね」


頂上の地点に行けば箱は出現していたし

触ればパンに変わった


「食べ物やんけ!」

「これ持って最初の建物にいこうか」

「何でや?」

「人の家に寝るのは休まる気がしないけどここなら布団で寝られる」

「せやね」


保健室のような場所から布団を拝借

そこまで寒さはないものの電気が通ってなくて暗い

ライトを持ってきているのでまだ探索は可能ではあるが


「暗い中で家を探索するのありだと思う?」

「止めた方がええで」

「だよね」

「トイレが使えたんなにげにうれしいわ」

「確かに」


ベッドから持って来た布団と

長居座布団と仕舞われていた毛布

久利巣は身体がすっぽり入るので座布団に寝た


翌朝に身体を一度清潔にする事を話し合って

偽物とはいえ他人の家で風呂に入った

電気がなくて湯沸かし器も動かず調理器具でお湯を沸かして入らせてもらった



「ソラミちゃんの入った残り湯やったらバケツに持って帰るねんけどな」


風呂から聞こえて来た独り言は聞かなかった事にした。



「身体も綺麗になった事だし探索しようか」

「ごく一般家庭にありそーなもん何かほしいゆーこと?」

「ガスボンベとマッチやライターなんかの火が点けられる道具」

「あー」

「風邪薬と胃薬の市販薬」

「市販薬限定なん?」

「市販じゃない病院の薬は悪化の危険もあるから」


胃の薬というだけで胃の何に効くか分からない

食べすぎに効く薬と荒れた時に飲む薬と

はたまた何か胃の大きな病気に使う


「まぁええけど」



こうして探索して薬を確保して

次の建物がまだあったので見に行った

こんどは田舎の家っぽい雰囲気で

玄関が地面でありトイレが外についていた


「変なつくりやな」

「古い家はトイレが外についてる事がおおいから」


埃っぽい家でろくなものがあるとは思えなかったが

逆に仏壇があったのでチャッカマンと蝋燭を拝借

スマホや懐中電灯があるとはいえ

懐中電灯は重くスマホは普通に使いたい

ソーラーランタンにいたっては雨や室内におきっぱなしにするだけで使えないので



「蝋燭ありだな」

「なんやあれ?」


コタツの上に鍋が乗っている

しかし穴が開いている―――と知らないものなら言うだろう

これは『豆炭コタツ』でありようするに炭を燃やして温まる道具


「候補になる?」

「庭へ行こうか」


外に出たらスコップやツルハシが置いてある場所が

非常にありがたくツルハシを拝借させてもらった

雪山登山に挑むならとても重宝する



「そんなにいるもんなん?」

「スコップだと固い氷は砕けないからさ」


値段がやけに高い(3万の値札がついたまま

そこまで大きく無いがかえって登山に向くかもしれない

他に目ぼしい物はなく箱を見にいった



「まーたこれか」

「ビニールヒモ、か」


印としては優秀なので一応は持っていくことにして

最後に目に見えている家へ向かう

道中で犬に追われ持っていたツルハシで撃退した



「ナイフ持ち歩くんだった!!」

「ツルハシでも撃退できるもんなんや?」


最後の家は2階建ての少し豪華な屋敷

庭は日本庭園が少し荒れている

玄関もなかなかご立派



「おー」

「戸棚からまだいけそーな食料でてきたんやけど」


羊羹(ようかん)があった

登山にはとてもありがたい個包装

拝借して屋敷内を探索して明らかな客間を見つけた


「たたみの部屋はええなぁ」

「埃っぽささえなければね」


襖をあけて布団を取り出すと

きちんとした袋に入れられていた為に

とても寝心地は良さそうで


「一旦むこうに拝借しようか」



こうしてこの山での拠点が充実してきた。



「食料はあるし雪山がいかにきつかったか分かりそう」

「ホンマに大変やったねんな」

「① 寒い②汚い③匂う④空腹」

「よく耐え抜いたと思うでほんま」



箱からはタオルが出て大外れだが

現時点で何日も耐久するのはそこまで苦にならないの目に見えている

暖かさが前と段違いで清潔


「心の余裕が半端ない」

「それでも折れへんのやから―――さすがやで」

「何か嫌な視線があるような気がするけど気にしないで寝る」



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