44話 揃う道具


「無事で良かった」


夜にウサギ定石と共にヒロの元へ帰って来た。


「向こうではこれが出ました」


軽い鍋だったので持ち帰って来た。


「これが出た」

「ガス缶!?大当たりだね」


1時間が6本も出ていた

これはもう運が良すぎて怖いくらい


「向こうはどうだったんだ?」

「かなり整備されてたし『あずまや』があって水も井戸があった」

「井戸は分かるがあずまや?」

「屋根はあっても壁が無い小屋の事」

「あれぐらいの気温ならテント無しでも布団さえあれば耐久いけるかもな」

「二人に連絡してまずはここに来てもらって向こうかここを頼もう」


こうして行動を開始してまずはスマホで連絡

彦星と連絡を取って一旦合流する事になり

翌朝の箱は『ふえるわかめ』に変わった


「何でわかめ?」

「見た所それ海藻だよな」

「ふえるワカメだから水で戻したらすごく増えるよ」

「どれくらい?」


せっかくだから朝食にワカメスープを作る事に

ほんとうにぱらぱらと入れたが二人分には十分な量が出来た

それを二人で食べる


「おもったよか増えてるな」

「でも食料としてありがたいよ、栄養価……どうだろう?」

「ん?」


ゲームの中で身体に影響するのはどこまでか疑問だ

実際に食べている訳ではないし

中で手に入る限界があるからビタミンが足りないとかそういう問題はないかも


「でも美味しいは美味しい」

「確かにな」


夜になり二人と合流

お互い怪我もなく食料・水も大きな問題を抱えてはいない

もしも何かしたいとおもうならば絶好のチャンス


「とりあえず事前に話してあったとおり向こうとここで別れるよ」

「いつものヒロさんと彦星のペアなん?」

「今回は久利巣と僕で」

「何か理由があるねんな?」

「うん」

「にしても珍しい組み合わせよね?」

「ヒロさんと彦星はここに残って僕と久利巣で向こうへ」


何せ向こうはどうにも実在の施設が多い様子

久利巣はいわゆる現実での知識までは失っていない

現実で二階の窓にべったり張り付いていた事もあるし適任だろう


「えーと久利巣さんは盗賊のスキルを持ってるから向こうで必要なんだ」

「そうだったのか」

「現実世界っぽい建物があったのなら確かに彼女は適任かもね」

「うち盗賊なん?」


ストーカーと盗賊ならどっちの方がマシかはおいておこう


「ダメかな?」

「……ウチはそんなに賢くないけぇソラミが助かるなら何でもやるで」

「こういう時は頼もしいなヤンデレストーカー」

「口にするんじゃないわよアタシも思ったけど」



翌朝に久利巣と共に出発した

5日は生きられる食料と少しの水に最悪の場合に備えた小さなテント

モンスターに出会った場合に備えたナイフ

『ご主人、俺にはどうしてほしい?』

「ここに残ってほしい」

『分かった』

「戦闘力……っていうか二人で大丈夫なのかしら?」

「僕らに何かあったばあい二人を呼ぶ為のナビゲーターとして残って貰います」

「なるほど?」


ウサギ定石は主人である僕の場所を把握できる

つまり例えば怪我をして二人を呼び寄せたとしても

遭難状態であり見付けて貰えなければかなり危険


「ヒロさん、僕らの身に何かあった場合彼の道案内に従って下さい」

「分かった」



拠点を起って30分で久利巣のペースに合わせる大変さに直面した

といっても速度だけが問題になっているならば到着予定が遅れるだけですむ

体力をもたせるためにゆっくり山を降りて行き境目まで来た


「僕の足で2時間もあれば登れるかな」

「なら3時間ぐらいはかかるんちゃうか?」

「でもお昼ごろにつければ問題ないからさ」


11:24分に頂上に到着し公園の様子を目の当たりにする久利巣


「少し雨ふっとるし東屋で早いけどお昼にせぇへん?」

「そうだね」

「道路や家が見えてるっちゅー訳やけど」

「うん」

「何か役に立つもんあるんちゃう?」

「そう、それを手に入れるのに久利巣さんの力を貸して欲しい」

「欲しいもん絞って探索するんがええやろな」

「例えば?」

「まずは今晩の寝床がベッドになるかもしれんちゅうこと」

「そっか―――普通の家にはベッドか布団があるもんね」

「モンスターに襲われない家ゆーなら鍵が締めきれる家がええやろね」


軽食を二人で食べ終えて雨の中でまず一番近くに見えていた家に入った

他人の家だがRPGで他人の家だからって入らないといつまでも進まない

いわゆる公園の管理小屋とでもいうのか


「人が暮らしている建物やないね」

「一度つぎの建物を見に行こうか?」

「食料とか確認せんでええ?」

「あるかなこんな所に」

「一般的な家庭より応急手当てセットがある可能性が高いねん」

「確かに!!」


公園で怪我人が出た時に多少の治療道具ぐらいはあるかもしれない

久利巣が部屋を片っ端から調べて

3つ目で叫ぶ


「アタリやで!」

「どういう―――」


部屋の中を見るとカーテンとベッド

いわゆる学校の保健室にも似た構造をしている

だが戸棚にはダイヤルの鍵がかかっていた


「救急箱見えてるのに開けられ無いか」

「いや?」

「え?」

「たかが三桁のカギやけぇ001から999まで試せばいけるで」

「あ、確かに」

「20分はかかるしほかの場所を調べといてぇな」


ならと思い他の場所を調べる

水道が生きているのを確認できたし

給湯室はガス式なようで火が付いた


引き出しを開けたら使いかけなお茶の葉


会議室のような場所が1階に2部屋

2階にあったのは床にカーペットが敷かれステージのような台

持ち物というか着替えなどをあつめるならここがいいかもしれない


鍵が開いたと叫ぶ声が聞こえ現場へ



「ほら救急箱や」

「包帯と消毒薬やガーゼにテープ―――大きめの絆創膏」

「時間かけたわりにいいもん無かったねんな」

「これだけあれば十分!!」

「そうなん?」


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る