37話 メール


From:田中空美

『天井百各山珍1制限在治攻魔法も出現未6』




「空美!?」

「だれだそれ」


唐突に来たメールは文字数たった20

制限がかけられているのか文章が謎めいている

けれど信じて送ってくれた事がよくわかる


「妹から手に入れた情報が送られてきました」

「この旅はその妹さんを助ける為で俺はそれを忘れてるんだったな?」

「はい」

「内容を教えろ」

「『てんじょうひゃく』」

「山に屋根ねぇよ」


確かに天井というのは主に屋根を指す言葉

ゲームにおいては必ず出るタイミングを差す

例えばUFOキャッチャーでぬいぐるみを3000円入れても取れなかったら

景品をその段階でくれるという事


「同じ個所で箱を100あければ必ず珍しいものが手に入る」

「1日だいたい3、4回しか開けられねーのに?」

「聞いて無ければ同じところに30日とどまろうとは思わないから」

「たしかに焦って次に行きたくなるかもしれねぇな」

「何が手に入るか確認する為に留まって貰う」


メールでこの文章が来た事を彦星に連絡し

そのおおまかな意味を伝え天井まで粘ってくれと連絡

既に明らかな雪景色である以上ここからは登山靴程度では足りない


「ウサギ定石は十二支の『未』についてどれぐらい知ってる?」

『j_8か』


AIだから声に違和感があるのは当然だが

日本語を返している感じがしない

何か別の言語で妙な事を言われたような


「魔法の呪文か何かか?」

『俺が知っているモンスターについて役立つ情報はその程度だな』

「じぇーはち?」

『未のゲーム内ソースコードだが分かりやすく言えば役に立たない情報』


夜になって『カロリーバー』が出た

現時点では十分に役に立つ貴重な食料

向こうから出たのは紐と釘のような物くらいだと連絡が来る


「釘って家を建てるのに使うアレ?」

「いえロープを張る為のものですね」


登山では地面に輪っか付きの杭をうちこみロープを張る事がある



『ハーケンだな』

「んーいまいち役にたつか分からねぇ」

『落下していくのを防ぐことが出来るといっても?』

「超いるな」

『地面に刺して自分をロープでつないでおけば落下しない』


これは2回出たらしくレアアイテムはメールからして

1回だけ出て来る制限がかかっている可能性が高い

何にせよ今は耐久の時だ


「しっかしガスの消費が激しいな」

「寒さがありますからね」

「昼の天気がいい時にウサギ定石に薪とってきてもらうのは?」

「確かにそれは在り」

『了解した』


次の日は天候が晴れていたし早朝なのに気温が高く

ウサギ定石を出発させて自分たちは暖かいスープを飲む

ちょっと罪悪感があるが彼曰く必要とされているならばいいらしい


戻って来たのは夜遅く

薪の量が多くて時間がかかっただけだと聞いてほっとした

着火剤(燃えやす木などを差す)が少なく


『コンロである程度の着火作業は出来ると予想した』

「正解だと思う」


3人で夜を明かした朝

昨晩はブルーシートだったか今日は相変わらずビニール紐

いわゆる外れアイテムかもしれないが使い道はある


「焚き木をブルーシートでつつんで雪がしみるのを防ぎましょう」

「テントに入れておけばいいような気もするんだが」

「量がありますからテントのサイズからして厳しいかと」

「寝る場所が無くなりそうではあるな」


メールが届いた

またブルーシートが被ったらしい

色々と考えたがウサギ定石に様々な物を向こうから持ってきてもらう事に

カロリーバー(プレーン味)が30箱も出たので10箱ほど向こうへ渡す


「気を付けてね」

『食べ物は貴重だから紛失する訳にいかないな、注意しよう』

「早く行った方が良いぜ日が落ちる」


こうして彼を送り出しテントの中で寒さに耐える

今日は日があるが寒さが厳しい

ウサギ定石の体温が無いのは辛いが


「じゃあ俺の腕の中であったまってろ(物理」

「……お願いしますね」


抱き合う(物理)で少しでも寒さを凌ぐ


「なんか顔が赤いけど熱じゃねぇだろうな」

「違うので大丈夫ですが大丈夫じゃないです」

「なんかチンコでか」

「ちょっと黙ってて貰えませんか?」

「―――おう?」


非常に恥ずかしいが今はこれが最善

やらずに後悔したくない

だがヒロの柔らかい部分が当たり続けるのはメンタルに悪い




翌日の昼にウサギ定石が色々と持って登って来た


『ご主人やつれてないか?』

「色々と耐えていたからね」

「寒さが酷くてだきあってたんだが中々にきつかったぜ」


ウサギ定石が持ってきた道具を確認

スコップにナイフとブルーシートとランタン

さらにハーケン(杭)が無事に届いていた


「これでテントの上にブルーシートをかけます」

「何でまた?」

「テントだけだと外からの気温を遮断出来ないから」


人間も冬にペラペラの薄着をしないのと同じで

テントも本来は断熱がしっかりされているものが理想

実は今のテント『夏~秋』用で寒い


「屋根に屋根つけるってのが不思議だが出来たぞ」

「あとはスコップで雪をどけて穴にして焚き火でスープが作れるようにして……」


温かいスープを焚き火で作って飲んでテントに戻る

ライトがあるので足元もよく見える

ヒロが入った瞬間に言った


「なんか温度あがったんじゃね?」

「そこまで簡単に効果が……出てるね!!」


間違いなくテントの中は今までよりも温かい

それもそのはずで振ってくる雪とテントの布には空気の層

明日の朝はブルーシートから雪を下す必要があるが

温かい室内を考えれば安い代償だった


翌朝外に出た瞬間その気温の違いにテントに戻りかけた

しかしテントが雪で潰れない為に最低でも雪を降ろしておく必要がある

ウサギ定石と極寒の中で雪をどうにか降ろして箱を見てテントに戻った


「おはようさん」

「外すごく寒いッ」

「何で手に包帯もってるんだ?」

「箱から出たから」

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