27話 アイテム


「ここからどうする?」

「水の位置にいって水を取って来ます」

「暑いから確かに必要そうだな」

「テントは置いてここに戻りましょう」

「分かった」



マップを見て川の位置まで降りて水を確保した

暑さで汗も酷くて身体を洗う

今までは寒さに震えていたが暑さも体力を奪う


「喰えそうな草があったから生き残るのは出来るだろうな」

「パッチテストをしてみてからですよ」

「何だそれ?」

「毒かどうか確認する方法で」


①物体を切ったりして断面を出す

②手の甲に出て来た汁などをぬりつける

③ここで塗りつけた時にピリピリしていたら毒

④痛みが無ければ口に含んでみて5秒で吐き出す


「確かに毒かどうか確かめるのはそうやるな」

「よく似た毒草かもしれないので油断は禁物です」

「分かった」


こうして食べられそうな植物をかきあつめて

頂上へ戻ってきたら箱が再び出現していたの触れる

チャッカマンに変わった


「なんだそれ」

「ライターの一種でここから火が出るのでライターより安全です」

「便利なもんだな」

「やっぱりまだ現実の事は思い出せませんか?」

「……タロウ」


急に抱きしめられた

今まで生きて来た世界が造り物だった事はショックだったと思う

けれど僕は確かに生きた人間だ


ザザッ


「男の身体なんかどこがいいのやら」

「でもお兄ちゃんヒロさんの話をするときちょっと嬉しそうだよ」

「そ、そう!?」

「私のせいで一生お兄ちゃんに彼女出来なかったらどうしようって思ってたからさ」

「彼女ってほどじゃ」

「それだけ好かれてるなら押せばいけるって」


ザザッ



「こんな状況だから不安だよな」

「えっ」

「大丈夫だ現実世界って奴はきっとある!!」


自分が不安になって聞いたと思われたらしい

けれど訂正する気もなくおとなしく抱かれていた(物理)

しばらくしてようやく離して貰えた


「有難うございます」

「生き抜けばいい事あるからな」

「上に戻りましょうか」



頂上に戻ってパンを食べていたらメール

向こうも箱が出たと『このタイミング』でメールが来た

つまり箱の出現までは場所ごとにランダムな時間である事がこれで分かった


『箱が出たのだけど匂いの無い香水っぽくて戸惑っているわ』


匂いが無くて香水

思い当る瓶があるのだ

MPを回復する『聖水』と呼ばれるアイテム

写真がメールに添付されて送られて来た。



『僕ら急いで戻るので絶対に中身を使わないようにお願いします』


と返事をして



「ヒロさんこれ見て下さい!!」

「そのスマホって機械を―――この写真!?」

「手にしたそうです」

「状況が変わったんだが説明するのは苦手でな」

「元の拠点に戻りたいんですが」

「速攻で行くぞ俺も賛成だ」


荷物を全部まとめて山を下り始める

食料はまだ16個のパンがあるので持つ

道中でMPを回復できるアイテムについて自分も知っている事を話した



「なら話が早いな」

「一刻も早く戻って二人を『完治』させましょう」

「そこまで出来るかは分からないがもう一発のカイフ最低限で使える」



かなり急ぎ足で降りていき元の山へ

気温と季節が代わり非常に寒い

登っている最中に真っ暗になるも


「ここまで登れているならあと2時間か?」

「確かにかかっても3時間ぐらいのものでしょうね」

「いけるか?」

「歩けますよ」


真っ暗闇の中でモンスターにも出会わずに元の山を登り切る事が出来た

明かりが見えて本当に我が家に帰ってきたかのように一気に安心し力が抜ける

久利巣が迎えてくれた


「おかえりッ!!」

「腕はどうだ?」

「少しだけ痛いけどもう動かせるよ」

「ならスマホの!!瓶!!」

「これや」


一気にヒロが聖水を飲み干し身体から緑色のキラキラ光るエフェクトが見え

襲うんじゃないかという勢いで彦星のテントに入っていく

5分ほどで出てきたのは彦星の方で


「これなら歩けるわ!!」

「その魔法は完全ではないのでまだ安静に!!」

「トイレだけいかせて頂戴、ほとんどいけてないのよ」


二人で登ったのは失敗だったかもしれないと頭を抱えたが

彦星が用を足して戻って来たので向こうの山について話した

向こうは『夏』であり場合によってはここよりいいがクリアから遠ざかると


「で、パンも獲得したのね」

「こっちも報告どおりカップ麺が出たけど妙なもんも出たで」

「ナニソレ」

「ほら課金キャラが出たって言ったでしょ?アレが久利巣の所へ来てね」

「買いましたか?」

「何か在れば絶対に飼って欲しいって話をしてくれたやろ?」


そう、あのあとメールでもしも課金キャラに出会えば

どんなものでも買っておいてほしいと連絡しておいたのだ

たとえ割り箸でも重要なものを逃すよりはいい


「対価として2万円って言われたねん」

「この世界をクリアしたら僕が払いますから」

「ほんで買ったもんがカロリーバーに似てるけど妙なんや」


箱には『カロリーバー チョコ』と記載され

全部で10箱であり価格は約10倍と言ってもいい

けれど今は買うとしか出来ない


「チョコ味ってだけでカロリーバーですよ」

「美味しいん?」

「じゃあ皆が無事になった事を祝って皆で食べましょうか」


1箱4本入りなので1本ずつとって齧る

味は甘くて少しだけ苦くて市販品のクッキーと言っていい

皆で歓喜の声をあげた


「これ滅茶苦茶美味いぜ!?」

「ほんとろくなもの食べれてないと効くわねぇ」

「ええやんけ」

「美味しくて涙が出そうです」


皆が1本では足りないし寒い

そこで焚き火をして鍋を作る事に

カップ麺は塩味だった


「今日はもう眠りますか」

「アタシもう動けるけど」

「安静に!!」

「はーい」

「どう分かれて眠るのがいいかしらね」

「今までの奴でいいだろ」



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