26話 ゲーム


この世界がゲームというはっきりした情報が何より大きかった。


「毛布じゃねーか!?」

「ヒロさんに課金アイテムを説明するのは難しいですが『金』で手に入れたとだけ」

「へーそうなのか」

「他の方には出ていないようですね」

「1人1つやのーて1家族様で1パック限定の卵みたいやな」


例えが絶妙に合っている

昨晩はやはり久利巣もヒロも冷えたらしく

抱きかかえて寝ていたらしい


「お前らもやらなかったのか?」

「ソッチ系の作品になりそやな」

「やれば暖をとれたなら僕はやりましたよ」

「何で出来なかったんだ?」

「寝袋が狭すぎて二人で入れないからです」

「確かに俺たちもギリギリだった」


とにかく毛布をヒロたちがねているテントに敷いた

改めて思うが5000円の課金をゲームに?と

しかしゲームオーバーだと記憶を奪われてしまう事を思い出した今

ちっぽけな金額としか思えなかった。


「かなり違うな」

「久利巣さん腕の調子は?」

「そろそろ動かせそうや」

「ヒロさんに相談があります」

「昼飯を食べながらにしようぜ」


焚き火をして鍋に湯を沸かしドングリを調理したものを食べる

美味しいとは言えない料理だったが今は食料があまりない

4人もいれば食料の減りは1日で4×3でパンに換算して12個消費する

あまりにも足りない


「僕はあそこに見える緑色の山を登るべきだと思ってます」

「登ったあと何が起きるかを教えてくれ」

「まず先ほど物を売る商人が現れて消えました」

「ふむ?」

「もういちど現れる為には沢山の山を登った方がいいとの事です」

「だが向こうの山って見た限り結構な距離があるぞ」

「あの山はレベルが1なので防寒具も少なくてすみます」

「早く行きたい気持ちは分かるが1人でか?」

「ヒロさんも来るかどうかは判断を任せます」

「久利巣の怪我は」


久利巣は片腕はまだ支障があるが

焚き火をするぐらいは一人で出来ると薪を持った

ならばと二人で作戦をたてる


「俺もドングリだとジリ貧に変わりそうだなと」

「お腹の調子も悪いですからね」

「そうだったのか?」

「ドングリに含まれる成分はたぶん本来であれば多く食べてはいけない物だと思います」

「なら一番軽いテントと毛布に食料と水を持って出発するか」


遠くに見えるのは『秋』とは思えない山で緑が生い茂っている

中央からは遠ざかってしまうがもしかしたら夏か張るかもしれないのだ

行ってみるまでは分からないが有益な情報となりそうなのは確か


「スマホも持っていくんやろ?休憩する時にウチのスマホに連絡してな」

「そうですね」

「便利な通信器具だな」

「カセットコンロを置いていくのでライターだけ持ちましょう」


荷物をまとめて彦星に伝える

状況次第で数日間をここに帰ってこれない可能性があるのだ

ここの事は久利巣に託して


「分かったわ」

「急いで戻ってくる予定ですが」

「時々こっちからも連絡するわね」


荷物を急いでまとめて食料を持って自立式のポールテントを解体

ヒロと共に少なめの荷物で出発した

テントは特にかなり重いがヒロが持つことでどうにか登れるように


「便所も済ませたし行くぞ」

「はい」

「何かあったらすぐに戻ってくるんやでー!!」


まずは山を降りて行く必要がありまっすぐ進むよりも回り道をしていく

いそがばまわれということわざのごとく

道が途切れていたりする事も考え今までに行った事がある箇所までまずは来た

そこで目的にの山に向かって道無き道を進む

かなり辺りが暗いがまだギリギリ明るい為進ことを決め



「え?」

「何かあったのか?」

「こちらに来てください」


明らかな境界線を超えれば体感温度が上がった

むしろ『暑い』とまで言えるかもしれない

辺りがかなり暗かったのでまずはテントを建てれる場所に建て


寝袋も無しに寝転がるが温度的には適温より少し高い


「暑いから上着だけ脱ぐか」

「ですね」


寝袋は非常にかさばるため毛布しかもって来ていない

しかしそれすら要らなかったかもしれない

現在地が熱いぐらいな事を連絡する


『ウチらの方は問題も無しや、箱からジャージが出て来たでー』


お互いに何事も無くて一安心した

カロリーバーをお互いに2本ほど食べ就寝する

朝になり外を見れば景色は夏のようで


「水の方が危ないかも」

「向こうの方から水音がしている気がする」

「えっ?」

「ただ飲めるもんかは分からん」


少し遠回りになるものの暑かった

荷物をまとめ起きた事を連絡して出発

5分ほど歩いた場所に地形がバグっている川

例えるならパズルのピースが間違ってはまっているような

山と山の境界線が見事に切れているのだ


「透明だし悪くねぇな」

「上流へ登ってみましょう」

「賛成」


山の中腹あたりで川は細くなり途絶えてしまったが

水があるのは大きな収穫だった

身体も全部脱ぎ捨てて一度水浴びで汚れを落とす

暑さもあったので心地よく洗い流すことが出来た


現時点で時刻は16時で思ったよりも早い


「今日はこの付近でテントを張れる場所を探しましょう」

「賛成だ」


中々いい場所が見付からず結局は登る事に

周囲は夏景色なのに暗くなるのは早かった

17時を過ぎた所でもう足元ぐらいしか見えない


「どうする?」

「山頂が近いので登りましょう」

「分かった」


18時25分に山頂へ到達したのが分かった

箱が出現していたので触れるとパン18個に変わる

運よくテントが張れる箇所を見付け二人でパンを食べて連絡をして就寝


『アタシたちもカップ麺が出たからどうにかなりそうよ』

『個数は?』

『22個が出たから蓄えもあるし三日は大丈夫ね』


翌日になって出現した箱を確認

鍋が出ていたのだが火起こし用の枯木が無い

そこらへんの木はあるのだが水分が多くて燃えにくいのだ




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る