13話 LVUP
「おはよ……どうした?」
「僕には妹がいて」
「ふーん」
「それと彼女はかなり病弱だった所まで思い出しました」
「とりあえず俺は少し外の様子見てくる」
ヒロがテントから出ていく
記憶にある妹はずいぶんと幼い
一緒に暮らしていた日々はあっという間に壊れた
彼女は心臓の病気で入院した。
『お兄ちゃんはヒーローだから絶対に助けるんだ!!』
体中に機械を付けられていた妹に何かそう言った気がする。
「おーい」
「どうでした?」
「変な紙」
「箱からそんなものが出て来たのですか?」
ティッシュか何かかと思い見てみる
確かに広告っぽいので紙は紙だ
いわゆる『QRコード』が書かれていた。
「これ何か分かるか?」
「スマホで写真を撮れば分かるかも」
「写真もとれるのか、すごいなこの機械」
アプリで読み込むと
『LVUP』の表記
こういう時は普通HPや攻撃力が上がるものだが
「何が変わったのこれ……」
「どうだ?」
「レベルアップって強くなる事なんですけど」
「あーそういえば『レベル』って山が何レべルだとか言ってたな」
「ここは3レベルで―――あっ」
地図を開くと山のレベルが3から4に上がっている
これは難易度だと思っていたが違うのだろうか
足は少し痛みが残る
「どうする?」
「この寒さですからまずは暖をとらないと二人とも動けないですよ」
「確かにずいぶんと冷えて来た……げっ」
外を見た人間の『げっ』ほど嫌なものない
「どうしました?」
「少しだが雨が降ってる、これだと焚き火が……」
「なら雨避けを作って火をおこしましょう」
「燃やす木が湿ってるのにいけるか?」
「……むしろ今のうちに集めて来て下さい、そして絶対に遠くへは」
「分かってるもう1人にしねぇから」
ヒロは太郎をなでると外へ
酷く子ども扱いされた気がしたが
それで怒るほうが幼いように思えて黙った
アプリを触って色々と調べる
「なるほど?」
落ち着いて地図アプリを使ったことで色々と分かった。
世界は滅茶苦茶に広いが円形になっていて内側へ行くほどレベルが高い
先ほどはQRコードを読み込んでしまったのだが裏面に
『ふしぎなまどうしょ』と書いてあった
テストの裏表紙を見逃した気分になり自分に腹が立つ
「火がついたし問題なさそうだぞー」
外からヒロさんの声がする
それだけでかなり自分が安堵していて
本当に子どもみたいな寂しがりやになっているのかとモヤモヤ
「余裕がありそうなら薪を多めに集めてきてテントに!!」
「了解!!」
しばらくして沢山の薪を彼女はテントの中に入れた
汚れはするが雨のなかに木を置いておき後で凍える方が倍は最悪なのだ
思い出した家族について考えている暇はない
「そろそろ足もうごかして大丈夫ですかね」
「飯たべたら確認してみるか、今持ってくる」
二人でカップから出して鍋で作ったラーメンを食べる
温かい物が指先まで染み渡りかじかんでいた手もスムーズに動く
足の方もほとんど痛みが無いので包帯をとってみた。
「足首とか曲げて見ろ」
「動かしても痛みは無さそうです」
「でも雨が降ってるのに動いて平気か?」
「今はそれより薪の確保と食料の確保ですね」
レベルが3から上がる前は天気が晴れ続きだった
もしも関係があるなら最悪の場合これからずっと天気が雨の可能性
そうなれば湿り切った木ばかりで燃えなくなるだろう
少しでも渇いている薪を確保しておくのは急務
「立ち上がった感じどうだ?」
「痛みも無いので『完治』ですね」
「かんち?」
「ええと治ったという事だと思います」
「これから何をすべきか分かるか?」
「まず箱です!」
そう、何はなくとも箱を調べなければ
レベルが上がったらしいがRPGでも何でもレベルが高ければ報酬は多いのだ
より強い武器や貴重な鉱石が手に入ったり
今はダイヤモンドすらゴミアイテムに思えるが
「出現はしてるな」
「触ってみますね」
触った瞬間に『タオル』3枚に変化した
今までよりも大きくなっているが『この程度』で雨被害は厳しい
うっかり先に進みすぎて敵が強くなったゲーム状態だ
「使えはするな」
「そうだ出来ればそこの地面を掘ってみて下さい」
「ん?」
ざくざくと掘り軽い穴場が出来上がる
雨でどれほど溜まるかは不明だが水の運搬は労力と時間がかかる
リスクは対して無くリターンは大きい
「雨水が溜まればいいんですけど」
「なら例のビニールシートだっけ?あれもう一枚持ってくるとか」
「キャンプ場にまた往復するのは迷子が怖いですね」
「昨夜は俺に地図の使い方教えてくれただろ?」
「でもリスクが高いですから」
地図を読むのは一種の技術である
例えば紙の地図では北が上に来ているがスマホの地図はぐるぐる回ったりする
持たせても使いこなせるかどうかが微妙だし1台しか無かった
「なんでお前は持ってて俺はねーのかな」
「今はそういう部分を考えている暇が惜しいので薪をあつめましょう」
「どんぐりは?」
「食料はまだカップ麺もありますしどんぐりは水にぬれても食べられますから」
二人で一緒にテントを出て薪を集め始めたら
体力が低下したのを即座に実感した
寝たきりになると筋力が低下するとは聞くが実際想像より落ちていた
「無理すんなよ重い物とか持てないんだろ?」
「なんとか少しずつ運びます」
「俺がやった方が早い気がするんだが」
「そうだとしても少しでも多く確保したいので」
「何か細かい作業の方がお前には向いてそうだけどなー」
何か細かい事で早急に必要な事を考えたが思いつかず運搬作業に徹する
雨のせいで身体が冷えて来て余計力が出ない
一度二人でテントに戻って冷えた身体をタオルで拭いた。
「コンロの火使うか?」
「少しだけ」
今は雨もふっているしテント内で使っても火事の危険は少ない
もしこれが普通のキャンプなら危ないので絶対に止めておく
冷え切った身体だが空間が温かくなると大分マシだ
「これぐらいで止めましょう」
「食料が切れちまう前にどんぐり拾いに行くか?」
「キャンプ場に一度戻りたいですね」
「お前の体力で!?」
「着替えとかもまだあった筈ですから動ける今のうちに行くべきかと」
「意見は分かれさせねぇほうがいいのは……分かってるんだが」
ヒロは反対したいと言ってきた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます