7話 山頂へ



ついに3日目の夜になった



「明日の朝はこの山を登りましょう」

「食料も尽きるかもしれねぇ……確かにうごくならその時間がいいな」

「そこで相談で大事な物をこの拠点において行くのはどうでしょうか?」

「確かにここは拠点として申し分ねぇな」


元々の山であれば4時間で頂上にたどり着ける

でもゲームの中にいる異常事態であればそれは憶測にしかならないが

上の方は道が途切れている雰囲気が今の所は見当たららず

長く見積もっても1日で頂上へ行って拠点まで戻る事は出来そうだ


「持っていくものですが」

「スマホって代物は地図が出るって話だったな?」

「はい」

「それは必ず必要だと言っていい、山の中は驚くほど迷う」


確かに山での遭難事故はよく聞く

原因としてよく似た木が並ぶので方向感覚が狂うのだ

RPGでも洞窟や細かい城などは雰囲気が似てて迷いやすい

最近のゲームでは画面上に地図が表示されるからどうにかなる


スマホに電池が必要なマークは今の所ついてないしやけに長持ちしそうな雰囲気があった。


「途中で使えなくなるかもしれないです」

「MP切れか?」

「そうですね、充電が切れるって言い方を分かり易くいうなら」

「水と食料に包帯だけは絶対に必要だ」

「僕も同意です」


山を登っておりるまで8時間かかるとすれば朝7時に出て午後3時には戻れる

何も無ければという条件がつくことも考えるなら1食では足りない

思ったより食料の消費は早くて本気できりつめたら10日ほど

でも満足に動けない程度にしか摂取しないという事になる


「俺は―――多分げんじつって世界をまだほとんど思い出せないんだ」

「でも、僕は徐々に記憶が戻りつつあるのでヒロさんも」

「慰めはいらねぇよ、飴だって言ってたその食料も俺は喰い方すら分からん」

「え?」

「鞄だってことは分かるがどれが何のための鞄か、お前なら分かるか?」


たしかにリュックサックと呼べるものからスクールバッグなど

小型で女子高生が軽いお出かけに持つようなスマホとハンカチと財布しか入らない物

さまざまな種類のものが並んでいるが結論は



「山に登るなら僕のリュックサックを使いましょう」

「それは他人の物を使いたくないとかいう気持ちの問題か?」

「この鞄が山に登るのに適した物だと覚えているんです」

「理由があるなら話して欲しい」

「メーカーです」

「え?」

「このリュックサックは頑丈で傷も付きにくい」

「確かにそれが理由なら納得だな」

「軽くて頑丈だから―――このリュックサックは必須です」


ブランドのロゴが消えてしまったがいわゆるスポーツメーカーの物

靴や服を作っていて激しい運動に耐えるだけの性能がある

憧れていたけど手にすることが無いと思ってた


「軽くて頑丈でっていうなら俺が反対する理由はねぇな」

「……父さん」

「え?」

「これ買ってくれたの父さんだったんです」


高校2年になって部活に誘われてリュックも無いからと断った日

夜遅くに帰って来た父さんが抱えていた大きな袋に入っていた

『もう好きに生きていいんだ』何故こんな事を言われたのか思い出せない


「優しい親父さんなのか」

「……顔も思い出せないんですけどね」

「ならそれと決めて入れるものを決めなきゃな」

「小型のガスコンロは置いて行きましょう」

「ここに戻るまで8時間ぐらいって事なら確かにそうかもな」

「スープの粉はお湯で無ければ溶けないんで置いて行きます」


スマホ、タオル、コッペパン4つ、1.5Lの水、包帯、飴を4つ


「軍手があったのでこれも」

「それは防寒着の手袋だな?」

「寒さ対策ではなく怪我をふせぐ為です」

「ん?『防具』か?」

「そうですね、モンスターからの攻撃はほぼ防げないですけどマシにはなります」

「着替えはどうする?」

「上着の替えはかさばりますからシャツとズボンに下着を」

「この『Tシャツ』『ジャージズボン』にこの小さいパンツか」

「すごい言いにくいんですがブラジャーしてください」

「ブラじゃあ?」


やっぱりか!!


「これです」


部活仲間に女性がいたらしくリュックをあさった時に出て来た

最低って言われるのは仕方ないと理解している

でも山に登ろうとしているのに『ヒロ』の身体でブラ無しはキツイ

大きさも適しているもので本当に良かった


「胸当て?」

「そう!!この世界の女性がさらし……ええと胸が揺れないように着る下着です」

「確かに胸をささえる所が無い服ばかりで困ってたから有難く着させて貰う」



ヒロが元々着ていた服は胸を支えるようなものが仕込まれていた

着替えるのを見てしまった時に不思議な服だとは思ったのだが

胸が揺れてしまうのを防ぐ特殊な物らしい


「便利なもんがあるんだな」


服を入れれば既に大分埋まってきた

懐中電灯をどうするかで話し合った結果持っていく事に

雨などのトラブルで暗闇にでもなれば身動きが取れない恐れがある

見つかったものが単三電池2本で軽く重量もこれなら背負える


「キングソードは」

「これ持って無かったらモンスター対処出来ないだろ」

「重そうですけど大丈夫でしょうか?」

「持ってみるか?」


急に持たされたが思ったよりも軽かった

でも『ものすごく重い』が『ちょっと重い』程度の差

これも持ってさらに何か持つのは厳しい


「前はどうしてたんですか?」

「シゲトがリュック持ってたんだけど『一緒に消えた』な」



親は覚えていなかったが写真フォルダにあったシゲトは記憶にある

消えたって事は『死んだ』ではなくゲームオーバー?

謎は多いが何にせよまず生き残らなければ


「今までの山って何か特徴とか」

「もしかしたら俺が上った山は4つではなく3つかもしれねぇ」

「えっ?」

「同じ山を2回登った可能性があるんだ」

「詳しく教えてください」

「頂上があまりにもそっくりでな」

「でも頂上には『箱』があったんですよね?」

「取った筈の箱が山頂にあるから誤解で3つ目の山だと思ってたんだがな」



また同じものが同じ場所に出現する?


「僕それ分かるかもです」

「ん?」

「モンスタークエストと同じ会社なら『キラ』かもしれないです」

「きら?きらめき?ランプ?」

「ではなく薬などの素材が落ちていた箇所ありませんでしか?」

「あった」


RPGにはよくあるのだが光っている箇所を調べると何かが出て来る

おもに時間経過でまた同じ場所が光って素材回収が可能になる

だとすれば拠点をそもそも移動した方が良いかもしれない


目的が変わってきた。

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