第14話 星が番えた矢


小暑の時候の下、箒星が黒い裾野に小さな千人針を刺すように飛び去っていく。



旱星や平家星、源氏星、真珠星、三連星、寒北斗、鋤星、宇宙の望外へと縦横無尽に散りばめられる、星屑もふわふわと舞っていく。



万葉集の一首の、星の林みたいだ、と私はその百花繚乱の星空の光景を見上げてふと思った。



ここは星の花畑なんだ。


峻厳な森に大河の一滴となる小川が沸々と流れるように、青々と生気に満ち足りた草原に徒花が咲き乱れるように、宇宙にも星の花が咲き乱れる。



蒼茫の光芒、あれは星が番えた鋭利な征矢。


星の花が咲き乱れ、光彩の羽毛が生まれた、極彩色の青蓮花の白鳥が今にも旅立ちの地へ向かうために羽搏いたようだ。



本物の闇はどうして、こんなにも息を呑むほど清らかで美しいのだろう。


 


私は切り裂いた宙をさ迷いながらも片足が取り留めもなく想像がつかず、そのまま、下方へと滝壺のように落ちていく。



ブラックホールに飲み込まれてしまうのだろうか。


――あなたの哀しみの渦へと落ちてしまうのだろうか。



私はあなたの哀しみまで背負って生きなければいけないのだろうか。


あなたの哀しみは星を抱く夜空のように切々と苦難に満ちている。



心に潜む闇が私は恐懼する。




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