『音質がいい』とはなにか。ハイレゾが最強でMP3はゴミ? 数字のマジックに惑わされず、もっと純粋に音楽を楽しもう

たけや屋

第1話

『やつらは音楽を聴いているんじゃない、情報を聞いているんだ』

 という名言もある音楽業界ですが、皆さんどんなもので音楽を聴いていますでしょうか。


 Sp○tifyやAp○le Musicなんかのサブスク系。

 音源をPCに取り込む系。

 昔ながらにCDやレコードなんかの円盤をプレイヤーにかけてじっくり系。


 各自、自分なりの環境で楽しんでいるうちはいいんですが……。

 しかしこの業界には、ユーザーを奈落の底に引きずり込んでやろうという闇あります。

 そう、オーディオ沼です。


「音源は最低でもハイレゾだよね〜」1曲500円以上。

「ケーブルを変えると音質もガラッと変わるからさ〜」1本ン万円。

「やっぱプレイヤーがまともじゃないとまともな音が鳴らないよね〜」ン十万円。

「ASMR最強のマイク!」120万円。

「スピーカーをちょっと良いのにしちゃってさ〜」ン百万円。

「自宅にスタジオレベルの環境構築しちゃったよ〜」ン千万円。


 このように音質の追求は底が知れない。深みにハマったら最後、しまいにゃ発電所直結の電線を引くとか言い出しかねません。


 ですがちょいと立ち止まってみてほしいのです。

【音質って、そこまで追及するべきものなの?】と。


 音質のデータ量を数値で表しますと。

 サブスク配信なんかは(特別料金のハイレゾ配信ではないMP3の圧縮音源だと)大体16bit・192kbps。

 CDは16bit・1,411kbps。

 ハイレゾ音源は各種ありますが主に24〜36bit・3,000〜6,000kbps。

 このように、段階が上がるごとにデータ量もハネ上がります。


 じゃあ、ハイレゾ音源は圧縮音源の数十倍も『音質がいい』のか? というと、たぶんそんなことはない。

 192kbpsでもしっかり音は鳴っています。どこかの楽器のパートが欠けていたりとかはないのです。音楽を『楽しむ』のに全く問題のない数値がこれなのです。

 たしかに6,000kbpsともなれば、人間の可聴域を超えた【超音波】まで録音されているのかもしれませんが。


 スピーカーやイヤホンもそうです。音質は数万円レベルの製品で頭打ちになり、それ以上の高級品でも性能自体は大して変わらない、というのが定説です(諸説あります)。


『でも実際、高いやつで聴いてみたら家で聞くのとは全然違って聞こえるよ?』という意見もあります。

 それはたぶん『いい音質』を聞いてるんじゃありません。違う『味付け』の音を聞いているんです。


 B○SEのように低音ズンズン効かせまくるのが有名なメーカーもあれば。

 SH○REのように高音キラキラ響きわたるのが有名なメーカーもあります。


 メーカーによって出てくる『音の味付け』は全く違うのです。同じメーカー内でも、違う商品ではまた違うチューニングが。

 スピーカーやヘッドホンを変えると、同じ曲でも全く違って聞こえるってのはこれが原因です。


 他にも、人間は『高いカネを出して買ったものは、いい物だと思い込む』性質があります。

 そして音源の数値的なデータ量を見て『ハイレゾこそが至高! それ以外はゴミ!』という過激派が生まれてしまうかもしれません。


 人間の感覚というのは非常にあやふやなモノです。音楽を聴くときに上記のように錯覚してしまうこともあるでしょう。そしてより良い音を求めて、オーディオ沼に引きずり込まれてしまうのです。


 ◆ ◆ ◆


 まあこんなことを書いたのは、自分も最近は某サイトでハイレゾ音源をポツポツ買っているからです。それと同時に、未知なる新曲をサブスク配信で聴いたりもしています。

 ですがメインで聴いているのは、昔から溜め込んだPC内の音源です。


 で、10年20年とじわじわストックしていった物ですから、個々の音質はバラバラなんですよね。数値で見ても192kpbsだったり1,411kpbsだったり3,232kbps(ハイレゾのうまぴょい伝説)だったり。


 中にはヘルベルト・フォン・カラヤンやギュンター・ヴァントの、レコード音源時代のもあります。

 さらにはそれより古い音源——ソノシート版の『黄金バット』や『スーパージェッター』などテレビまんがの主題歌もあります。


 ソノシートってのはレコードのさらに廉価品ですから、音質もお察しなんですが……。

 それでもいい音なんですよね、これが。


 スピーカーやイヤホンごとに味付けがあるように、レコードやソノシート音源にも独特の味があるんですよ。白黒アニメ時代の音を直接聴いたことはないんで、別にノスタルジーってわけじゃないんですが。

「たしかにザラつきとかあるけど、これはこれでいいものだ」

 と思えてしまう。


 たとえ録音状況の悪い音源しか残っていなくても、それが青春時代に聴いた曲なら、いつまでも輝いて感じられるでしょう。


 音楽を楽しむのに数値なんて気にしちゃダメです。気にしだしたら最後、それはオーディオ沼への第一歩なのですから。


 音質を表す数値は所詮参考値。それを聴いて楽しめるかどうかは全く関係がないんです。

 曲や機材の値段・音源のbps数値という『情報』を聴くんじゃなくて、音楽を楽しみましょう。


 曲の全編にわたってザラついたノイズが入っていても、オーケストラの演奏中に思いっきり雑音がまぎれ込んでいても、自分にとって良い曲ならそれでいい。

 超高額機器を売らんとするオーディオメーカーの陰謀に負けず、純粋に音楽を楽しもうではありませんか。


 音質の追求も、一般的日本人ならイヤホンやヘッドホンを数万円レベルの物にすればそれで充分(有線のなら長持ちするからコスパ良し)。

 それ以上を求めて沼にハマるくらいなら、素直に生演奏や映画館のD○lby音響を体感しに行きましょう。


 やっぱ生演奏が最強ですからね。

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