第5話 ドラゴン退治 その2
あれから、さらに山を登り、ようやく山頂へと着く。
そして…
「よぉ、ドラゴン。なんで人里に降りて来たんだ?理由によっては見逃してもいいぞ」
俺はドラゴンと対峙していた。
ドラゴンは知能を持っているため、人間の言葉を理解し、話すことができる。
俺は不可解な点があったため、探りを入れるが…
「ゴォぉぉぉぉ!!!!」
大気を震わすような咆哮を上げる。
「くそっ!やっぱり話にならんか!」
(だが、これで確定だ。このドラゴンは操られてる)
俺はここに来るまでの間に不可解な点を分析し、俺はドラゴンが操られているという結論に至る。
そして…
「さっきから俺の様子をコソコソと見なくていいんだぞ?」
俺は近くにいるであろう誰かに聞こえるよう、大きな声を出す。
「はぁ、出てこないかぁ」
(仕方ない。迎えに行ってやるか)
俺は『
「お前に言ってんだよ」
岩陰に隠れてコソコソと見ていた、フードを被った人物の背後に一瞬で回り、攻撃を仕掛ける。
その人物は驚きつつも、後ろにジャンプすることで俺の斬撃を回避する。
その際、フードが外れ、男の顔が露わになる。
「お前か。このドラゴンを操っているのは」
そこには褐色の肌をした魔族の男がいた。
「おやおや、まさかバレるなんて。しかも、私の背後を一瞬で取るとは。さすが勇者シオン。いや、神速のシオン」
男は俺の二つ名を言う。
「そんな褒めなくていいぞ。男に褒められても全く嬉しくないからな。そんなことより、なぜ魔族がここにいる?魔王は死んだから、お前は静かに力を蓄えてるんじゃないのか?」
魔族とは歴代の魔王に仕える種族で、魔王が倒されると、次の魔王が復活するまでの間、表舞台には出てこないはずだ。
「理由は簡単ですよ。魔王は倒されていないからです」
「なっ!」
(いや、これは奴の嘘だ。俺たちは魔王が消滅するところを確認した)
「まぁ、正確にはいずれ復活すると言った方が正しいですが」
(おいおい、そうなると力づくで復活方法を聞いて、阻止しなければならないぞ)
「ですが、まさか勇者がドラゴン退治に現れるとは……。誤算ですね」
「やっぱりか。お前の狙いはこの国の有力な冒険者をまとめて殺すこと」
「えぇそうです。そのために、村の人は殺さず、恐怖を与えて国に通報してもらったのですよ。ドラゴンを討伐してほしいとね」
どうやら俺の推理通りのようだ。
「本当は冒険者共が下の村に集まっている時に村ごと焼き払う予定でしたが、まぁ、いいでしょう。いずれは勇者シオンにも消えてもらう予定でしたから。あぁ、死ぬ前に私の名前を教えてあげましょう。私の名はネフケス。魔王復活を望む者の一人だ」
(魔王復活を望む者の一人ってことは、他にも仲間がいるってことだな)
「さぁ、ドラゴンよ。勇者シオンを殺せ」
その声にドラゴンは反応して、俺に襲いかかってくる。
俺は横にジャンプしてドラゴンの突進を回避する。
(さて、操られているとわかったから、できるだけドラゴンには痛い思いをさせたくはないが、俺が使えるのは光属性の魔法と雷属性の魔法だけ。どうやって無力化しよう)
この世界の人たちは、魔法適正となる属性が備わっている。属性の種類は火、水、風、土、雷、光、闇の7つ。
光属性は勇者のみが使え、闇属性は魔王と魔族のみが使える。
そして、適正にない属性はどう頑張っても使えることはない。
そのため、俺は光と雷属性の魔法しか使えない。
ちなみに、魔術師のルナは光、闇、雷以外の4属性が使える。
俺はドラゴンの攻撃を捌きつつ考える。
(無理だな。ダメージを最小限に抑えて無力化するのはできそうにない)
高みの見物をしているネフケスにも気を配る必要があり、難しいという結論に至る。
(ごめんな、ドラゴン)
俺は覚悟を決める。
ドラゴンとの距離が空いたところで、火を纏ったブレスが飛んでくる。
俺は紙一重でブレスを躱し…
「レスティ真明流、初の型〈紫電〉」
俺はドラゴンに向けてものすごいスピードで突きを繰り出す。
光属性によって得られる光の速さと、全身に雷を纏うことで、常人では視認できない速さの突きを繰り出す。
ドラゴンは避けようとするが、避けきれず、翼を貫かれる。
「まだだ。レスティ真明流、二の型〈飛雷〉」
今度はドラゴンの後ろから雷を纏った斬撃を飛ばす。
俺は、もう片方の翼に斬撃を当て、ドラゴンが飛べなくなるようにする。
「グォぉぉぉ!!!」
両翼を攻撃され、ドラゴンは痛みのあまり叫び声を上げる。
(ごめんな、ドラゴン。せめて苦しまずに殺してやるからな)
そして…
「レスティ真明流、初の型〈紫電〉」
俺は抵抗しないドラゴンのお腹を貫いた。
ドラゴンが死んだことを確認して…
「おい、次はお前だ!ネフケス!」
今まで高みの見物をしていたネフケスに声をかける。
すると…
「いやぁ、お見事です。私が操ったことによって凶暴化してるので、かなりいい戦いができると思ったのですが、まさか無傷で倒されてしまうとは。さすが、歴代最強の勇者と言われるだけあります」
拍手をしながらネフケスが話し出す。
「だから、男に褒められても嬉しくねぇよ」
「ここは素直に受け取ってほしいものです。勇者の証である光属性に加えて、この世で珍しい雷属性を宿しているとは。これは勇者シオンを殺すのは先延ばしにしたほうが良さそうですね」
ネフケスはそんなことを呟く。
「おい、俺はお前に聞きたいことが山ほどあるんだ。だから、このまま大人しく投降してほしいんだが」
「それは無理な話ですね」
「なら力づくで……」
――投降させる、と言おうとした時、突然ネフケスの体が光出す。
「本当は勇者と遊びたかったのですが、このままでは負けてしまいますので、逃げさせてもらいます」
「っ!待て!」
俺は慌ててネフケスに攻撃するが、俺の攻撃は空を斬る。
「くそっ!逃げられたか」
(ただのドラゴン討伐かと思ったら、魔族が現れるとは……。しかも、魔王がいずれ復活するとネフケスは言っていた。これは一度、みんなで話した方がいいな)
俺はそんなことを思いながら、山を降りた。
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