第9話 誘拐犯がするような手口をされてるんだぞ!?

 去年と全く同じプログラムで行った体育祭が無事に終了する。


 そして7月。


 今日は終業式で、明日から夏休みとなる本日、俺たちは生徒会室に集まっていた。


「今日は集まっても議題なんかないはずだが、俺たちを集めた理由はなんだ?」


 俺は生徒会役員である三人に向けて言う。


「センパイ!明日から夏休みです!」


「そうだな」


「夏休みだとアタシたちと会えなくなるだろ?」


「そうだな」


「私たちに夏休みも会いたいでしょ?」


「そうだ……いや、そんなことないぞ!」


 危うく流れで「そうだな」と言いそうになる。


「えー!センパイ、私たちと会えなくて寂しくないんですか!?」


「寂しくない」


「美少女3人と夏休みも会えるんだぞ?」


「夏休みくらいはお前たちに会わず、ゆっくりしたいと思ってる」


「私たちのエッチな水着姿を見たくないの?」


「…………………見たくない」


「今、かなり返答に時間があったんだけど」


「き、気のせいだ」


 俺はジト目で見てくる3人から目を逸らしながら返答する。


(ヤベぇ、すごく見たい!けど、見たいと言ったら負けな気がするから、ここは我慢だ)


「へぇー、見たくないのね」


「あ、あぁ。3人がどんなエッチな水着を着るんだろうとかこれっぽっちも思ってないから」


「ふーん、なるほどね」


 雪野先輩が意味深な表情で俺を見てくる。


「ちなみになんだけど、拓海くんは明日暇かしら?」


「ん?俺は明日暇だが、どうかしたのか?」


「いえ、聞いただけだわ。あ、拓海くんは明日、予定を入れないほうがいいわよ。じゃあ、解散ね」


「はーい!お疲れ様でした〜!」


「おう!お疲れ!」


「じゃ、またね。拓海くん」


 そう言ってみんなが生徒会室から出て行く。


「……………え?」


 俺はわけもわからず、生徒会室に取り残された。




 その後、帰宅中に雪野先輩の発言の真意を考えるが、結局わからなかった。


(明日は予定を入れるなって言われたけど、何かあるのか?よくわからないが、念のため予定は入れないでおくか)


 そんなことを思いながら帰宅し、ご飯を食べて風呂に入り、俺は早めに就寝した。




 “ガタンゴトン!”


 そんな音と揺れるような感覚で俺は目が覚める。


「ん?なんの音……だ?」


 目が覚めると、なぜか車の中にいた。


 しかも、俺は寝袋に入れられ、車の床に転がされていた。


(え?なぜ車の中?しかも、この車って雪野先輩の家の高級車じゃね?)


 そんなことを思っていると…


「あら、目が覚めたのね」


「センパイ、おはようございます!」


「拓海、よく寝てたな」


 なぜか近くに生徒会役員の3人がいた。


(これは夢か?近くに雪野先輩たちがいるぞ?なぜ?)


 俺が混乱していると…


「状況がわかってないようだから説明してあげるわ」


 雪野先輩から今の状況を説明される。


「今、私の家が所有するプライベートビーチに向かってる最中よ。よかったわね。私たちのエッチな水着が見れるわよ」


「もうちょっと詳しく説明してください。昨日の夜、自分の部屋のベッドで寝てたんですが、なぜ俺は寝袋に入れられて車の中で転がってるんですか?」


「そんなの、私の使用人たちが頑張ったからよ」


「そこじゃねぇよ!誰が頑張ったかなんて今はどうでもいいわ!」


「じゃあ、何が聞きたいのかしら?」


「なぜの部分だよ!なぜ俺は寝袋に入れられて車の中で転がってんの!?」


「それは、拓海くんが私たちのエッチな水着が見たいって言ったから、私たちが見せてあげようと思って」


「俺、そんなこと言ってないけど!?」


「いや、あれは言ってるようなもんだろ」


 カエデにツッコまれる。


「こほんっ!そ、そんなことより、俺の家に不法侵入してるよね!?」


「それなら心配いらねぇぜ!幼馴染であるアタシが拓海の親から許可もらったからな!」


「ウチの両親何してんの!?そこは許可したらダメだろ!寝袋に入れられて運び出されるって誘拐犯がするような手口をされてるんだぞ!?」


「それだけ、アタシのことを信用してくれてるってことだぜ!」


 ドヤ顔で言われる。


(ここまでされるとは思ってなかったが、こうなったらみんなに付き合うか。け、決して3人の水着に興味があるわけじゃないからなっ!)


 俺は誰かに向かってツンデレを発動する。


「つまり、俺は海に行くため、先輩の使用人に無理やり運び出されたってことか?」


「えぇ、そうなるわね。使用人たちがビックリするくらい起きなかったわよ」


「……………」


(俺、何してんの?寝袋に入れられて外に運び出されたら起きろよ。ぐっすり寝てる場合じゃないだろ……)


 そんな感じで、俺の夏休みが始まった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

生徒会で美少女ハーレムを築くことになったが、美少女たちがやりたい放題してくるので、生徒会を解散したい。 昼寝部 @hirunebu

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ