第8話 そこは根性で避けてもらうぜ!

 中間テストが無事に終わり、俺たちは今日も生徒会室に集まっていた。


 俺はホワイトボードに『体育祭について』と書く。


「今日は来月の6月終わりに行われる体育祭のプログラムについて話し合う」


 俺は昨年行われた体育祭のプログラムをみんなに配る。


「毎年、概ねこのような順番、競技内容だ。今回もこれでいこうと思うんだが、みんなはどう思う?」


 俺がみんなに意見を聞くと…


「アタシ、ずっとやってみたかったことがあるんだ」


 勢いよくカエデが手を上げる。


「それはなんだ?」


「あぁ……アタシ、全校生徒でサバイバルゲームがしたい!」


「え?サバイバルゲーム?あのエアガンを使って撃ち合うあれ?」


「そう!それだ!」


「いや、無理だろ?体育祭だぞ?」


「バカやろう!体育祭だからこそ可能な競技だろ!全身を使って動き、仲間と協力をする……これこそ体育祭のメイン競技に相応しい!」


「現実見ろよ!壁とかをどうやって準備するんだよ!保護者に弾が当たったらアウトだぞ!?」


「そこは根性で避けてもらうぜ!」


「保護者にそんなの求めるな!」


「あ!それなら、保護者の方にはビニール傘を持参してもらって、傘で身を守りながら観戦するってのはどうだ!?」


「身を守りながら運動会を観戦することがおかしいわ!」


「なんなら保護者の飛び入り参加もアリにして……」


「そういう問題じゃないわ!」


 というわけで却下する。


(いや、他にも色々と却下する理由あるけど…)


 そんなことを思いながら、他の人にも意見を聞く。


「春菜ちゃんはどうかな?」


「ウチもこのプログラムじゃダメだと思います!」


「お、どうしてそう思ったんだ?」


「はい!これじゃあ、ウチが日光を浴びすぎて干からびてしまいます!なので、今年の体育祭は1時間で終了としましょう!」


「何もできんわ!」


「なぜです!1時間でも譲歩した方ですよ!ホントは体育祭なんてイベントを無くしたいのですが、それはさすがに却下されると思いましたので、泣く泣く1時間にしました!」


「1時間じゃ開会式と閉会式で終わるわ!」


「おー!完璧な時間配分です!」


「完璧じゃねぇよ!大バッシングが起こるわ!」


「えー!ウチ、体育祭なんてせずに教室でゲームがしたいのに」


「コイツ、ついに本音を話し出したぞ」


「そもそも、高校生にもなって体育祭をすることが間違ってるんです!これは運動ができない人を笑う行事なんですよ!」


「いや、そんな目的で体育祭をしないから」


「嘘です!きっと、走るのが遅いウチの姿を見て、みんながウチを笑うに決まってます!センパイも想像してみてください!走るのが遅いうちの姿を!」


 そう言われたので春菜ちゃんを見ながら想像してみる。


(春菜ちゃんが一所懸命走ってる姿か……胸をバルンバルン揺らしながら必死に走ってる姿しか思いつかねぇけど………やべぇ、見てみたい)


「おい、拓海。今、桜井さんのどこを見てどんなことを想像した?言ってみろよ?」


「いえ、胸を揺らしながら一所懸命走る春菜ちゃんを見てみたいとか思ってません。なので、グーにして振りかぶってる拳を収めてください」


「自白しとるし!」


 とりあえず一発殴られました。


「と、とにかく、体育祭を1時間に減らすのは無理だ」


 俺は未だに痛みの続く腹を抑えながら春菜ちゃんに言う。


「えー!センパイならどうにかしてくれると思ったのに…」


 春菜ちゃんが残念そうに言う。


「ご、ごめんね。でも、これは仕方のないことなんだ」


「うぅ……」


 俺は消沈している春菜ちゃんを見て…


「だ、大丈夫だ!もし、春菜ちゃんの走る姿をバカにする奴がいたら俺が怒ってやる!」


 俺は春菜ちゃんを勇気付けるために大きな声で伝える。


「ホ、ホントですか?」


 春菜ちゃんが目を潤ませて聞いてくる。


「あ、あぁ。だから体育祭は安心していいぞ」


「そうですか……センパイがそう言うなら、ウチ、体育祭を1時間に減らすという案を取り下げます!」


「おぉ!さすが春菜ちゃん!」


「はい!なので、センパイ!是非、体育祭の時間を2時間に減らしましょう!」


「おいこら!さっきの感動を返せ!」


 そんな感じで会話が一向に前進しないので、無理やり終わらせる。


 俺は未だに文句を言っている春菜ちゃんを無視して、雪野先輩に聞く。


「先輩は何かありますか?」


「そうね。私は夜の運動会も開くべきだと思うわ」


「うん。俺、薄々そう言われると思ってました」


「あら、何か勘違いしてないかしら?」


「ん?エッチな運動会が開きたいんですよね?」


「そんなことないわよ。全く、私をなんだと思ってるのかしら」


「うっ、すみません。今までの流れから、エッチな方向性かと」


「違うわよ。しっかりと反省しなさい」


「はい、すみません」


(いや、確かに今回は俺が悪い気がするよ?でも、今までの流れからエッチな運動会って思っても仕方ないじゃん)


 心の中で言い訳する。


「じゃあ、夜の運動会ってなんのことですか?」


「えぇ、夜、ベッドの上で行われる運動会よ」


「結局エッチな運動会じゃねぇか!」


 俺は早々に先輩の案を却下する。


 その後も色々と案が出るが…


(おい。ただツッコミをするだけで終わったじゃねぇか)


 全然、有意義な会議になりませんでした。

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