第3話 ホント、センパイって揶揄いやすいですね!

 俺は生徒会室に3人を集め、今日も会議を行う。


 そして、ホワイトボードに『今度の校内清掃について』と書く。


「こほんっ!えー、ホワイトボードにも書いたように、今度、全校生徒による校内清掃が行われる。春菜ちゃんは今年入学でわからないと思うから詳しく説明するよ」


 俺は簡単に校内清掃を説明する。


「つまり、1限と2限の授業時間に全校生徒で校内を隅々まで清掃するんですね!」


「あぁ。これが生徒会として初めての仕事になる。頑張って取り掛かるぞ」


「そうね。これが私たちと初めての4Pになるから頑張らないとね」


「違ぇよ!何を聞いてたんだよ!」


「セ、センパイ。童貞卒業が4Pはヤバいと思います」


「あぁ。しかも、堂々とアタシたちに4Pを頑張るって宣言してるからな」


「そんなこと言ってねぇだろ!」


 先々悪いスタートでした。




 俺は無理やりスタートラインに戻す。


(これだけで疲れたんだけど…)


 そう思いながら、話を進める。


「例年ではクラスごとに割り当てられてる掃除場所をこなすだけだから、俺たちが話し合うこともなかったんだが、今年から1カ所掃除場所が増えたため、今回、会議を開くことになった」


「そういえば去年の冬くらいに蔵ができたな」


「そうだ。そこの掃除をどのクラスに担当してもらうかを話し合う」


 俺はそこまで話をすると、例年、各クラスが割り振られている掃除場所を記した紙をみんなに配る。


「あれ?生徒会のメンバーは生徒会室だけなんですね?」


「あぁ、生徒会は生徒会室の掃除が終わったら生徒たちが掃除しているか校内を見回る予定だ」


「なるほどです!」


「でも、正直どのクラスにお願いするのが正解なのか、わからないわね」


 雪野先輩が紙を見ながらそう呟く。


「そうなんだよ。どのクラスも今、割り振られている掃除場所で手一杯になる。だから、蔵の掃除をどうすれば良いか分からなくてな。みんなの意見の意見が聞きたい」


 俺は今回の会議の目的を話す。


 すると…


「それならいい案があるぜ」


 カエデが手を上げる。


「お!ホントか!?」


「あぁ、アタシはこの蔵を潰してしまうのが得策だと思う」


「完成して半年も経ってないんだけど!」


「あ、ただ壊すってわけじゃもったいない。せっかく立派な蔵を壊すことになるんだからな。壊す時にはこの学校をPRするため、生徒会で動画撮ろうぜ!」


「壊す時の利用価値なんか聞いてねぇわ!」


「えー、絶対蔵を壊す動画見て、この学校に入学したいっね思う人いるぜ?」


「そんな理由でこの学校選んだ奴、絶対器物破損の常習犯になるわ!」


「じゃあ、壊す時に……」


「いい加減、壊すところから離れて!」


「えー、じゃあ、アタシはなんも思いつかねぇな」


「コイツ、壊す方法以外思いつかなかったんかよ……」


 俺はカエデとの会話を終わらせる。


「はいはーい!次はウチの案を聞いてください!」


「お!自信満々だな。期待してもいいんだな?」


「はい!」


(おぉ!これは期待できるかもしれんぞ!)


「で、その案とはなんなんだ?」


「それはですね!業者にお願いして、ウチらは楽するのが良いと思います!」


「ふむふむ。それはアリかもしれん。実際、お願いできるクラスがないからな」


「はい!なので、解体業者にお願いしましょう!」


「お前も壊すんかい!」


 春菜ちゃんもダメでした。


「その流れなら清掃業者にお願いするところだろ!?」


「なに言ってるんですか!毎年清掃業者にお願いするお金と、今年解体業者にお願いするお金、いずれは解体業者の方が安上がりになります!なので、解体業者にお願いしましょう!」


「だから、蔵が完成してまだ半年も経ってないんだって!」


 俺は春菜ちゃんとの会話を切り上げる。


 今も「ぶーぶー!」と言ってるが無視する。


「雪野先輩は何か良い案はありませんか?」


「そうね、私は蔵が残ってる方が嬉しいから、壊すのには反対だわ」


「お!やっと会議が始まります!」


(さすが雪野先輩です!)


「じゃあ、蔵の掃除はどこがしましょうか?」


「そうね、そこが問題なのよ。どのクラスに割り当てても、蔵でエッチなイベントが発生しそうだもの」


「問題点が違う!」


 雪野先輩もダメでした。


「あら?たしか蔵でエッチなイベントが発生しにくいクラスを選ぶのではなかったかしら?」


「違うわ!どのクラスも担当してる掃除箇所で手一杯だから、どこにお願いすれば良いかを話し合ってるの!」


(なんも話を聞いてねぇ!)


「そうだったかしら。蔵の掃除を担当するクラスを選ぶ際に、1番重要なところだと思うのだけど……」


「なんでそんなところを第一に考えないといけないんだよ!」


「拓海くん。よく考えて。蔵は校舎から離れた場所にあるから声が届きにくいのよ。そして、内側から鍵を閉めれる。そんな条件が揃えば、クラスで集団エッチが始まるに決まってるわ」


「決まってねぇよ!」


(ダメだ!これ以上はこの会話を続けたらダメだ!)


 そう思い、俺は3人にもう一度お願いする。


「いいか?俺は蔵の掃除を、どのクラスがすれば良いかを考えてるんだ。蔵を壊す以外で良い案を出してくれ」


「そんなの私たちがすれば良いだけじゃないかしら?」


「あぁ、だってアタシたちの掃除箇所は生徒会室だけなんだろ?」


「生徒会室の掃除が終わった後、見回りをせず、蔵の掃除をすれば良いと思いました」


「それを先に言えよぉぉぉぉ!!!!」


 俺は3人に向けて叫ぶ。


 すると、3人がニヤニヤし始める。


「あれ?もしかして、拓海は気づいてなかったのか?」


「まさか、そんなことないわよ。だって生徒会長なんだから」


「そうですよね!センパイは気づいてて、ウチらを試しただけですよね!?」


「うっ………お、俺、職員室に用事があったんだ!だから、今日は解散っ!」


 俺は図星をつかれ、逃げるように生徒会室を出た。


 その後、生徒会室では…


「ホント、センパイって揶揄いやすいですね!」


「あぁ!とても楽しい時間だったな!」


「えぇ、だからやめられないのよね」


 そんな会話が繰り広げられていた。

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