第5話 奴隷3
夜になって、部屋にサンドラが訪れた。
こんな時間に来て何事かと思ったら、彼女は私に化粧をしだした。
なんで寝る前に化粧なんか…。
「女はね、抱かれる時も美しく装うものなんだ。さあできた。こうしてみるとなかなかのもんだよ。もうちぃっと肉付きが良いといいんだがね」
そういうものなんだ。
そして、着るように渡されたのは、セクシーな下着だった。
スケスケのキャミソールの下に、レースのショーツだけ。
「こ、これ着るんですか…?」
「どうせすぐ脱いじまうんだろうが、まあ雰囲気さ。男ってのは雰囲気に流されやすいからね。こういう色っぽい恰好で気分を高めてあげるんだよ」
こんなの初めて着た。
ショーツも凄く小さくて、何もつけていないよりエロい気がする。
その上から刺繍の入ったベージュのガウンを羽織って、部屋から連れ出された。
そして昨夜、私が襲われたあの寝室に連れて行かれた。
そうか、あそこって主人の寝室だったんだ。
「もうじき旦那様がおいでになる。ここでおとなしく待っているんだよ。お勤めが終ったらさっきの部屋に戻るんだ。昨夜みたいにそのままベッドで寝ていちゃいけないよ。いいね?」
「は、はい…」
それだけ言うとサンドラは私を部屋に置き去りにした。
部屋の中には今朝まで私が寝ていた大きなベッドと、豪華なソファや家具が置かれている。
壁際には高価そうな飾り棚があって、その中にはお酒のボトルらしき瓶とグラスが並んでいる。
ベッドはシーツが取り替えられ、綺麗に整えられていて、昨夜私が純潔を失った形跡はどこにもなかった。
部屋の中はスタンドタイプの照明がいくつか置かれていて、間接照明みたいに部屋を照らしている。
ベッドの枕元にはテーブルが置いてあり、その上には長皿が置かれていた。そこには先程サンドラが点けて行ったお香が入っていて、独特の香りを放っている。昨夜嗅いだ匂いは、これだったのか。確か避妊のお香だって言ってたっけ…。
これをつけて行ったということは、これからそういうことをするってことだ。
私はため息をついた。
好きでもない人と、またあんなことをするんだと思うと、気が重い。
部屋の中を見回してみると、壁際に置かれている高そうなキャビネットの上に、無造作に書類の束が置かれているのを見た。
この世界にも紙が普通にあることは知っている。ただし私の知っているノートや教科書のような上質なものではなく、少しザラザラした感じのものだったけど。
それを手に取って見ると、数字が書いてあった。何かの帳簿のようだ。
商人だと言っていたから、仕事の書類なのだろう。
私は召喚されてすぐにこの世界の文字の読み書きやお金のことを習った。
そこでは軟禁されていて、他にすることもなかったからすぐにマスターした。なのでこの程度の書類なら余裕で読める。
理系の私にとって、こんな計算は簡単だった。
なのでその書類の中にある数字の間違いにもすぐに気づいた。
「ふうん…ここの主人って、こういう商売してるんだ」
しばらくすると、男が寝室に入ってきた。
私は慌てて持っていた書類をキャビネットの上に戻した。
「よう、すっかり見違えたな」
入ってきたのは間違いなく、昨夜の男だった。
「あ、あの…昨夜は…」
なんて言ったらいいんだろう。
挨拶するのもなんだか違う気がした。
昨夜は強姦さながらに犯されたわけだし…。
昨日はそんな余裕がなかったけど、近くで見ると、男はなかなかの
肩に着くか着かないかくらいの髪は、銀髪だと思っていたけど、よく見ると白に近い金髪だったことがわかった。
スッと通った鼻筋と整った顔立ち。
透き通るような青い目も、吸い込まれそうなほど綺麗だ。
商人だというけど、服を脱いだ上半身は筋肉質で、腹筋もシックスパックに割れている。
二十代半ばから後半くらいに見えるけど、まるでスポーツ選手みたいに引き締まった体つきをしていた。
「名前、何ていうんだ?」
「あ、私…?サラって言います。アオキ・サラ」
「サラか。俺のことはガイアと呼んでくれ。昨夜はあんまり話せなくて悪かったな。初モノをいただくなんて滅多になくてな。つい興奮してしまった。無理をさせたか?」
ガイアは私の顎をつまんで上を向かせた。
160センチの私より彼は20センチ以上背が高くて、結構な角度で上を向かされることになった。
「へえ。明るい所で見るとまた印象が違うな。顔は割と好みだぞ?それに、この黒い髪はいいな。綺麗だ。このまま伸ばすと良い」
そう言って彼は私の肩の下までの真っ直ぐな髪に触れた。
男の人に綺麗だなんて言われたのは初めてで、どうしていいか戸惑ってしまう。
「昨日の今日だからな。今夜はこれを使ってやる」
ガイアは香水瓶のような色のついた小さなガラスの容器を手にしていた。
ガウンを脱いで下着姿になった私を見て、彼は「おっ」と声を上げた。
「裸よりやらしいな。サンドラに着せられたんだな?」
「は、はい…」
「なかなか似合うぞ」
彼は香水瓶の中身を手のひらに出して、下着の中に手を入れて来て、私の下腹部に擦り込んだ。
「ひゃうっ」
「クッ…もっと色気のある声を出せないのか?」
「そんなこと言ったって…あっ…」
ガイアは、そのまま私をベッドに押し倒した。
首筋や耳たぶを舌で愛撫される。
私は目を瞑って彼のなすがままにされていた。
早く、早く終わって…。
そう思っていた。
なのに…。
感じたくないと思っても、なぜか体が反応してしまう。
流されるまま彼を受け入れ、気が付けば彼の首にしがみついて甘い声を上げ続けていた。
「あっ…、すご…ッ」
「ハハ、昨日と随分違うじゃないか」
「だって…なんか…すごく…」
「気持ちいいって言えよ」
私は恥ずかしくて顔を背けた。
昨日の今日で、こんなに変わるなんて、自分でも驚いている。
これはきっとさっきの媚薬のせいだ。
そうじゃないのなら、きっと私、おかしくなっちゃったんだ。
その行為は昨日よりもずっと激しくて、昨夜は手加減してくれていたんだと感じた。
男の荒い呼吸が耳元で聞こえる。
「今日もすげー良かった…。おまえの体、名器だぞ」
「め、名器?」
「ああ。それに、良い匂いがする。これはおまえの体臭なのか?」
「ええっ?そ、そんな匂う?お風呂ちゃんと入ったのに…」
「ククッ、そういう類のものじゃない。かぶりつきたくなるような甘い香りなんだ。まるで熟した果実のような…蠱惑的で、俺を虜にする」
「果物なんか食べてないけど…?」
私は自分で自分を匂ってみたけど、何もおかしな匂いなんかしなかった。
けど、匂うって言われたら気にしてしまう。
そんな私を笑って見ながら、彼はガウンを羽織ってベッドを降りた。
喉が渇いていたのか、テーブルの上の水差しからグラスに水を注いで一気に煽った。空になったグラスにもう一度水を注ぐと、それを私に飲むようにと渡してくれた。
「少し話をしよう。おまえのことを聞かせてくれ」
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