第4話 修行室
「さて、ガラケー召喚自体の確認はこんなもんかな。しかしこれには驚いた」
俺は右手にある不思議存在であるガラケーを見ながら呟くと、軽く上空へ放り投げる。
「ガラケー召喚」
空中で弧を描いていたガラケーが消えていく。右手の中に現れるガラケー。
あのあと判明した中で、一番の驚きはこれだった。消えていない時に「ガラケー召喚」と呟くとどうなるか、というもの。
結果としては、いまのように右手の中にガラケーが戻ってくるのだ。
試した限りでは、見えないぐらい遠く離れた場所に置いても、「ガラケー召喚」と呟くだけですぐに右手の中に現れた。
これでいよいよ紛失の心配だけはなさそうだ。
「前世でこの機能があったら、めちゃくちゃ便利だったなー。どこに置いてもすぐ手元にくる。さて次はいよいよ『修行』を試してみるか。ユウサキの時なら一時間に一回できて、経験値が獲得できるってだけのものだったんだよな……」
ガラケーをポチポチしながら操作していく。
「決定、と」
ボタンを押した時だった。再びガラケーが光りだす。
気がつけば俺は、さきほどまでいた森と全く別の場所にいた。
「──移動した! ここは屋内か? ……どことなく見覚えがある──」
まわりを見回していると背後から声がかかる。
「コペコペ様。修行ですか?」
後ろを振り返る。そこにいたのはカゲロウマル。そしてあと三人の小姓たちだった。
「カゲロウマル。えっとここは?」
「ここは修行室です、コペコペ様」
「コペコペ様がー。ここに来るのは、久しぶりー」
「ん」
「スー……」
口々に話す小姓たち。ほんのついさきほどまで起きていたヤマクズシは、既に安定の居眠りのようだ。
俺はそっとヤマクズシから視線を外すと、カゲロウマルとヤクドウへと話しかける。
「久しぶりってことは──ああ、なるほど」
俺は改めてあたりを見回す。ベタな感じのトレーニング器具が部屋の中に並んでいる。この和風なユウサキに似合わない器具の数々。
見覚えがあって当然だ。ここはユウサキがゲームだったときに修行を選ぶと画面に表示される部屋だった。
「修行室に来てる間はー、あっちは時間流れないー」
ヤクドウの補足。
「そうなのかっ! それはまた便利過ぎるな……」
俺は修行の別の有用性に思わず興奮してしまう。緊急時にここへ避難してくればとりあえずは時間が稼げるのだ。対応策を思索することもできる。これは大きい。
「それで、ここにいられる時間に制限はあるのかな」
「はい、コペコペ様。三分となります。ちょうど、そろそろのようです」
そこで頭を下げる姿勢をとるカゲロウマル。他の面々も同じようにしたところで、俺の視界が切り替わる。
気がつけば俺はもとの森で木の根に腰かけていた。
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