第3話 色々と試してみる

「結局、箱罠もすっからかんか……」


 ユウサキのホーム画面をみて受けた衝撃の事実を受け止めきれないまま、とりあえず最後の箱罠を確認する俺。しかしそちらも、何も獲物はかかっていなかった。


 意気消沈したままでいるのも嫌なので、俺は背負っていた薪を一度下ろすと、木の根もとに座り込む。


「いつまでも落ち込んでてもしょうがないしな。いま確認できることをしよう。うん。それが建設的だ」


 声に出して俺は自分に言い聞かせる。


「まずは俺の前世の名前だが……」


 いきなり、詰まる。


「思い出せない。コペコペというキャラネームは思い出せたのに……」


 そして思い出せないのはそれだけではなかった。親の顔も名前も。いたはずの友達のことも思い出せないのだ。

 逆にユウサキでよく絡んでいた『お友達』──フレンドは何人も名前が出てくる。


 念のため確認しようとガラケーを操作するも、当然『お友達』の項目もグレーアウトしていて選択することが出来ない。


「思い出せる前世のことはユウサキことだけなのか──ま、まあ。一つは確認できたな。次行こう、次!」


 無理やりポジティブに考えることにして次の確認にうつる。


「次は、やっぱりこれだよな『ガラケー召喚』」


 右手に現れるガラケー。

 そのまま操作しないで木の根の上に置くとじっと観察してみる。

 体感で三分ほどたっただろうか。スーと空気中に溶けるように消えていくガラケー。


「おおっ! 消えた。オートスリープ機能ならぬオート消失機能でもついているのか」


 そうやって俺は色々と条件を変えて試してみる。


「なるほど。どんなに離れていても操作しないでいると三分すると消えるのか。そして消えた場所に関わらずガラケー召喚と告げると必ず右手に現れると……」


 何度も繰り返したガラケー召喚。

 毎回、現れる時は消えるときと逆再生のような感じだ。空気中から出てくる、という風にしか見えない。


 ──色々とわかったぞ。しかしこれは要注意だな。なくしたり奪われても回収できる可能性が高いけど、万が一、俺が右手を失うようなことがあったら、どうなるかわからないってことだ。


「……試すわけにもいかないしな」


 ボソッと呟くと一度身震いして次の実験を始める。

 俺はいつの間にか気分も晴れてとてもワクワクしながら返事を自身のスキルの検証をしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る