第49話 成長と関係


萌が家に帰るとそこには彩芽の姿があった。


「 彩芽? 何で居るのよ。 」


「 お裾分けしに来てついでにお邪魔してます。 」


かなり盛り上がりお酒が進んで酔いが回り眠ってしまっている。


「 全くぅ、こんなに飲ませて。

ほら、風邪引いちゃうよ? 」


心配して掛け布団をかける。


「 萌ちゃん居なくて寂しそうだったよ。

ほんじゃ、私はそろそろ帰りますかね。 」


萌が帰って来たので帰る事にした。


「 今日はありがとう。

連絡しようと思ったんだけど電源切れてて。 」


「 全然良いって! んで…… 。

実際のとこどうして遅かったのかなぁ?? 」


萌の事には妙に勘が良い彩芽。

いきなり探りを入れられてびく! っと体が反応してしまう。


「 ははぁーーん、分かったぞ。

さては男だな? 」


「 違う、違う! ただ朝倉とご飯行っただけ。 」


慌てて否定をしていると、おじさんが勢い良く立ち上がる。


「 むにゃむにゃ…… あんな男。

俺は許しゃんぞ!! 」


酔ってふらふらしながら朝倉に反対する。

彩芽が倒れないように支える。


「 俺の仕事の後輩でもあるんじゃぞ。

なめた真似しやがって…… 今すぐ叱ってやりゅ!」


呂律が回ってなく、ふらふらで外に向かおうとする。

必死に彩芽が止めても止まろとしなく、酔っぱらい程たちが悪いもんはない。


「 いい加減にしなさい! 」


萌はおじさんを布団に押し倒す。

おじさんは布団の上が気持ち良く、直ぐに眠ってしまうのだった。


「 萌ちゃんすごぉーー いっ。 」


「 慣れたもんよ。

酔っぱらいなんか構ってらんないからね。 」


笑いながらおじさんに掛け布団をかける。

彩芽も安心して笑う。


「 萌ちゃん、洋介さんの気持ちも分かってあげてね?

酔っぱらってるってのもあったかもだけど、萌ちゃんが朝倉君と付き合うようになったら、少し寂しいんだと思うよ。

それに…… 自分の後輩が彼氏になるのは、ちょっと認めにくいのもあるのかもだし。 」


彩芽はおじさんの気持ちを察して、萌に気持ちを代弁してあげました。


「 そんなんじゃないんだって。

でも…… ちょっと嬉しかったりしてね。 」


照れくさそうに笑った。

時間も遅いので彩芽も帰って行った。

おじさんは気持ち良さそうに眠る。


「 ぐぁーーっ! ぐぁーーっ! 」


大きないびきをかきながら夢を見ていた。


「 おじさん? 私彼氏出来たから。 」


「 何ぃーーっ!? 一体何処のどいつだ? 」


夢の中で萌に彼氏が出来ていた。

おじさんは動揺していると、彼氏が目の前に現れた。


「 赤沼さん…… 娘さんは俺が頂きます。

後の事は任せて下さい。 」


仲良さそうに肩に手を置いている。

おじさんは目を大きくして見ていた。


「 お前がか? ダメだダメ!

まだまだ子供なんだ。

付き合うのだってダメだし、結婚なんてもっての他だ。

離れろ、離れろ!! 」


おじさんはその告白に動揺して、朝倉を萌から引き離そうとした。

勢い良く突っ込んで来たおじさんを、軽く突き飛ばしてしまう。


「 うわぁ! 痛ててててっ。

お前ってこんなに強かったのか? 」


「 まぁそう言うことっす。

とりま《とりあえずまぁ》もう萌には貴方は必要ないって事です。

それでは失礼します。 」


なんだか冷たい朝倉におじさんは怒って拳を握る。


「 おじさん今までありがとう。

二人で幸せになります。 」


そう言い二人はゆっくりと歩いて行く。


「 ダメだ…… ダメだ!

俺は絶対に認めないぞぉ!!

待て待てーーっ! 」


走っても走っても追い付けない。


「 はぁはぁ…… 何で全く追い付けないんだ?

俺を一人にしないでくれぇーー! 」


どんどん離れる萌をただ見届けるしかない不甲斐なさに、悲しく膝をつく。


「 行かないでくれぇ! 」


夢から覚めて起き上がる。

今までの事は夢だったと直ぐに分かる。


( 何だ…… 夢かぁ。

にしても何て悪夢なんだか。 )


二日酔いで頭が痛い。

土曜日なので休みで良かった。

萌は既に朝ごはんを作って塾へ。

テーブルには。


( おじさんへ

飲み過ぎちゃダメだよ?

今日はゆっくり休む事。

ご飯ちゃんとレンジで温めて食べてね。

昨日帰って来るの遅れてごめんね。 )


と置き手紙があった。

おじさんは読み終えると、置いてあるチャーハンをゆっくり食べ始める。

何か深く考えていた。


おじさんは休みだけど仕事先に来ていた。


「 おや? 洋介! お前今日休みだろ? 」


おじいさんは直ぐにやって来た。


「 …… 間違えたみたいだ。 」


明らかに不自然。

しかも遅刻や休む事があっても、休みの日に間違えて来るなんて事は、今まで一度だってなかった。

休みの日だけは絶対に間違えない。

直ぐに休憩室へ向かった。

おじいさんも怪しく思い、こっそり付いて行く。


休憩室には仕事を終えて休んでいた朝倉がいた。

そこにおじさんが入って行く。


「 あ…… お疲れさまっす。 」


朝倉は座っていたがおじさんに挨拶するために、勢い良く立ち上がり挨拶する。

おじさんは少し眉間にシワが出来る。


( この野郎…… 夢だとは言え、ウチの娘をあんな一方的に奪って行きやがった。

顔を見るだけで腹が立つ…… 。 )


イライラしながら椅子に腰を降ろす。

そして貧乏揺すりをする。


「 赤沼さんって…… 今日休みじゃなかったすか?」


「 …… 間違えた。 」


朝倉も不思議そうに見ていた。

おじさんはブラックコーヒーを飲む。


「 お前…… 彼女居るのか? 」


朝倉はびくっ! と体が反応する。


「 えっ? 嫌々全然!!

俺なんかまだまだ出来ないですよ。 」


慌てて弁解しているが怪しく見える。


「 そうか…… 。 」


休憩室に重たい空気が流れる。


「 俺…… 帰る。 」


ゆっくり立ち上がり帰ろうとする。

朝倉は怪しい行動に気味が悪くなる。


「 朝倉…… 一つだけ約束しろ。 」


「 えっ? 何ですか? 」


おじさんは背中を向けながら。


「 お前が萌と付き合うのは許す…… 。

だけど悲しませたりするのだけは許さん。

俺は絶対に殴る…… それだけ。 」


「 えっ…… はい!

ありがとうございます。 」


何故か付き合ってもいないのに、裏で勝手に事は進んでいた。

まだおじさんの早とちりとは誰も知らない。

おじさんは帰って行く。


朝倉は深くお辞儀をしていた。

まだ付き合えてなくても、自分の信頼している先輩であり、好きな人の父親に少しでも許されたのが嬉しかった。


おじさんは萌の幸せを願っていた。

ゆっくり歩いているのをおじいさんは見ている。


( 洋介…… お前さんは本当に良い父親だよ。 )


おじいさんは嬉しそうに見ていた。

直ぐに後ろから後を追う。


「 おい、洋介! 今から飲みに行くぞ。 」


「 いきなり!? でも俺二日酔いで。 」


珍しく遠慮するおじさんの首を腕で絞める。


「 ちょっとくらい良いだろ!

さぁーー 飲むぞぉ。 」


おじいさんは嬉しそうに居酒屋に向かう。

自分の子供の成長のように喜んだ。


「 じじい! 当然驕りなんだろうな? 」


「 あっはっはは! 今日は飲むぞぉ。 」


二人もまた血は繋がらなくても、親子のように仲が良かった。

後でまた酔って帰って萌に叱られてしまうのでした。


そこから一年の月日が流れ…… 萌は三年生になっていた。

また大人っぽくなり、長い髪をなびかせて歩いていた。

今は冬…… 受験生は勉強に集中していた。


「 そろそろ帰るぞ。

帰りどっかで食って帰ろう。 」


朝倉が萌の席に来て言った。


「 うん…… もう終わる。

私はイタリアンが良いな。 」


二人はもう付き合っていた。

当然朝倉にちゃんとした告白をさせる、気の強さは萌らしかった。


二人は腕を組みながら肩を寄せ合いながら歩く。

いつの間にか何処から見ても、立派にカップルに見えるようになっていた。


「 私はマルガリータ下さい。

後はドリンクバー。 」


「 俺はこれと…… これ。

後は…… このホタテのグリルも! 」


萌は有名な大学受験に向けて勉強中。

朝倉は近くの建設会社に就職。

それぞれの時間は流れて行く…… 。


「 もしもし。 赤沼ですが。 」


「 いきなり申し訳御座いません。

私は…… 橋本旬と申します。

萌の本当の父親です。 」


また新たな時が流れて行く…… 。

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