第39話 年の差


萌が楽しんでいる裏では、また一つ物語が動いていた。


( ちょっとちょっと…… 勢いで来ちゃったけど、一体どうすれば良いのよ。 )


萌の家の前に彩芽の姿がありました。

そわそわしながら行ったり来たりと、何度も動き回るを繰り返していました。


( 良く考えてみたら男一人の部屋に、学生の女の子が一人行くって…… それも如何なものか? )


ここまで来てモラルを気にしたりして、何かと行かない言い訳を作ってはいました。


「 あら? 萌の友達じゃないかい? 」


彩芽は振り向くとおじさんが立っていた。

手提げ袋を持っていて、中にはコンビニで買ったお酒やおつまみが入っている。


「 こここ…… こんにちわ。

ってかもう動いて大丈夫なんですか!? 」


頭には包帯が巻かれていて、痛々しい見た目をしていた。

まだ安静のはずなのに外に出ていたので、彩芽は心配になり聞きました。


「 あっ…… これ? 大丈夫大丈夫。

大したケガじゃないし、もう痛くないのに萌がうるさいから休んでるだけなんだ。 」


明らかに酷いのに本人は全く感じていない。

それどころかヘラヘラしている。


「 絶対ダメです! さぁ部屋に戻って下さい。 」


彩芽は強引におじさんを部屋まで押して入る事に。

萌が言っていた子供みたいだ、の意味がやっと分かりました。


「 さぁさぁ、早く横になってください。

まだ安静にしていて下さい。 」


さっきまで緊張していたのに、おじさんの身を案じるあまり、強引にでも強く安静にさせました。


( 何だよ…… 大丈夫なのに。

萌と似ててうるさいんだから。 )


子供と同じでじっとしていられず、少し不満に思うのでした。

彩芽はおじさんを横にならせて、コンビニで買った物を確認する。


「 ちょっと! お酒じゃない!

怪我人のくせしてこんな物。 」


相変わらずの子供のような我慢出来ない所を、彩芽に口うるさく注意されてしまう。


「 ちょっと口直しに…… 。 」


おじさんは強気に攻める彩芽にたどたどしくなってしまう。

少し後ろめたさの現れなのだろうか?


「 赤沼さんこんなに散らかして。

私が片付けるのでじっとしててください。 」


散らかっている部屋を直ぐに掃除し始める。

彩芽は家事は得意ではないけど、掃除とかは萌ほどではないけど上手く出来る。

いつもは楽しくない掃除でも、おじさんの為にしてると思うと苦ではなかった。


おじさんは申し訳なさもありつつ、ゆっくりとテレビを見ていた。


「 赤沼さん、良かったらケーキ食べません? 」


そう言い買ってきたケーキを出される。


「 ありがとう、美味しそう。

今日はもしかしてお見舞いに来てくれたの? 」


「 はい、心配だったので。 」


優しい彩芽におじさんはほっこりしていた。

萌の周りには優しい人が居てくれて嬉しかった。


おじさんは折角買ってきてくれたので、ケーキに手を伸ばしました。

美味しいケーキ屋さんのケーキだったので、一口食べただけで凄い衝撃が走る。


「 これ美味しい…… もぐもぐ。

本当にありがとう。 」


彩芽はお礼を言われて嬉しかった。

そして二人だけの時間は緊張してしまうけど、好きな人と過ごす時間はとても楽しかった。


彩芽は掃除を終えて部屋に戻ると、おじさんは満足そうに眠っている。

お腹がいっぱいになり眠ってしまったようだ。


「 寝ちゃったのか…… 。 」


まだ全快ではないからか、体が回復しようと眠ってしまった。

人間の自己回復力は凄いのだ。


( 本当に寝ちゃってる。

にしても…… 本当にカッコいいなぁ。 )


憧れのおじさんが目の前で眠っている。

こんな幸せな事はない。

と彩芽は思っていた。


暇になったので部屋を見渡す。

部屋はかなり狭いけど、整理整頓されている。

萌はしっかりものだと言うのが良く分かる。


( 萌ちゃんは幸せだなぁ。

こんなおじさんと一緒に暮らせるなんて。

しかも新しいお父さん…… 最高じゃない。 )


羨ましそうにしていました。

少しずつ疲れていたのか、眠くなってきました。

うとうとしている内にリビングで眠ってしまう。

おじさんを近くで見ながら幸せそうに眠るのでした。


夕方になり萌と朝倉は食事を終えて出て来ました。


「 うっぷ。 食った食った。 」


妊婦のようにお腹を膨らませて出て来た朝倉。


「 食べ過ぎなのよ。

ほどほどってのを知らないんだから。 」


喜んでくれて嬉しかった。


「 今日は…… ありがとうな。

初めてだったから凄い楽しかった。 」


萌も同じ気持ちでした。

男の人と来るのは初めてで、こんなに笑いながら食べたのも初めてだった。


「 朝倉が良かったら…… また、来ても良いよ。」


恥ずかしそうに言いました。

朝倉はそれを聞くと直ぐに。


「 女の友達居ないから助かる。

また付き合ってくれよ。

次は俺が奢るからさ! 」


そう言って笑っていた。

暗くなっていて街の明かりに照らされて、いつもより格好良く見えていた。


「 ありがとう…… 私も楽しみ。

次こそはテーブルマナー守ってよ? 」


守るとは言わずに手を振りながら帰って行く。

萌も一日楽しい時間を過ごしていた。


( ヤバい…… ご飯に遅れちゃう!

早く帰らなきゃ!! )


萌は急いで帰るのでした。

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