第38話 揺れる心


あの事件から数日が過ぎて、学校の日になりました。

おじさんは念の為に安静にする。

本人は仕事行こうとしていたが、萌に猛烈に反対されて渋々休む事にした。


「 全くぅ…… たまにはゆっくりするか。 」


まだ安静の為に無理せず自宅療養に。


萌は少し心配しながらも、いつも通り学校へ歩いて行きました。

学校に着くと直ぐさま彩芽が駆け寄る。


「 萌ちゃん! 大丈夫だった!!?

私心配で心配で。 」


「 ありがとう、もう大丈夫だよ。

私は何ともなかったから。 」


潤美は飲酒が学校にバレて謹慎に。

萌はその場に居たけど、お酒は飲んで居なかったので厳重注意で済みました。


「 騒がしいな…… 。 」


彩芽が道をふさいでいたので、無理矢理道を通ろうと肩をぶつけて行く。


「 あっ…… ごめんなさい。 」


彩芽はぶつかったので直ぐに謝る。


「 ちょっと気をつけなさい…… 朝倉。 」


萌が注意しようと思ったら、相手は朝倉でした。


「 朝倉…… この前は本当にありがとう。 」


朝倉が必死に探してくれたお陰で、潤美を見つける事が出来た。

まだしっかりお礼を言えてなかった。

朝倉は席に座り相変わらずのぶっきらぼうで寝てしまう。


( 何よ…… こっちが折角お礼言ってるのに。 )


朝倉はおじさんの入院中にお見舞いに来ていた。

病室に入ろうとすると、萌とおじさんの話が聞こえて来る。

萌のお母さんの話でした。

その内容を聞いてしまい、入るタイミングが分からなくなり帰ってしまう。


( 何処も大変なんだな…… 。

あんなにいつも笑ってても、誰かを憎んだり悲しんだりしてる。 )


朝倉は色々な事があってから、萌の事が気になってしまう。

それがぶっきらぼうになってしまっている理由の一つだった。


授業中に萌は朝倉にどうしてもお礼をしたくなっていた。

色々考えても何をして良いか悩んでしまう。


放課後になって帰る時間。

朝倉は何の予定もないから帰ろうとする。


「 ちょっと待ってよ。 」


帰ろうとする朝倉の前に立つ萌。


「 何だよ、何か用か? 」


「 ちょっと付き合いなさいよ。

どうせ予定もないんでしょ? 」


そう言って朝倉を無理矢理何処かへ連れて行きました。


その頃彩芽は急いで何処かへ向かっていた。

そこは有名なケーキ屋さんでした。


「 すみません…… そのショートケーキとガトーショコラ下さい。 」


彩芽はケーキを買って何処かへ向かいました。


( 怪我人ってケーキ大丈夫なのかな?

いきなり行くなんて、私って大胆! )


向かった先はおじさんの家でした。

相変わらず年上のおじさんに片想い中で、少しでもお近づきになろうと大胆に動くのでした。


その頃二人は駅前を歩いていた。


「 ここのお店に入ろ。 」


そこはフルーツやデザートなどの食べ放題のお店。

女性に人気なお店でした。

女の子達が並んでいる。


「 …… 帰るわ。 」


その光景見るなり帰ろうとする。

直ぐに腕の袖を掴み引き留める。


「 ダメーーっ!! 帰らないで。

折角お礼をしようと連れてきたんだから。 」


そう言って無理矢理一緒に並ぶ事に。

朝倉は場違いだと思ってそわそわしてしまう。


「 何よ…… そんなそわそわして。

初めてだったりするの? 」


「 当たり前だろ、こんな店そう簡単に来るか!

もっと良い店沢山あっただろ。 」


恥ずかしそうに話す朝倉を見て萌は笑いました。


「 うふふっ、そんな恥ずかしがって。

たまにはこんな店でも良いでしょ? 」


萌は笑っていた。

色々突っ掛かっていたものが取れたような気持ちだった。

お陰でいつもより楽しく感じていた。


表情が前よりも柔らかくなった萌を見て、恥ずかしくなり目をそらす。


( 何でコイツいつもよりニコニコしてんだ?

俺なんかと来ても楽しくないのに。 )


萌の純粋な笑顔を恥ずかしくて真っ直ぐ見られずにいた。

少し並んでいると中へ案内される。

中を見ると甘い匂いに、沢山のスイーツに囲まれた世界がそこにはあった。


「 なんじゃこりゃあ…… 。 」


目を大きくしながら周りを見渡してしまう。

喫茶店やファミレスなどが当たり前の朝倉には、こんな華やかな場所は初めてで、見るもの全てが新鮮でした。


「 そんなキョロキョロしないでよ。

さぁ、並んで好きなの取りましょ。 」


バイキング形式なので、トレイを持ってお皿に好きなのを乗せていく。


「 おいおいおいっ、そんなに乗せて大丈夫か?

凄い高そうなのに。 」


耳元でお金を気にしてささやくと、萌は大きく笑ってしまう。


「 あはははっ、何言ってんのよ。

ここはバイキングだからいくら食べても、金額は変わらないから安心して。

あはははっ…… お腹痛いっ!! 」


大笑いされてしまい、朝倉は恥ずかしそうにする。


( 落ち着け、落ち着け…… ここは気持ちを入れ換えて行こう。

大人の行動をしよう。 )


深呼吸をして気持ちを落ち着けて、お皿にスイーツを盛っていく。


( ケーキにこのチョコの変なのに。

それとプリンに…… フルーツと。

それとピザに飲み物っと。 )


トレイに乗せた皿の上に、犬の餌のように山盛りに盛っていきました。

周りの女性達もそれを見て笑っている。


「 何笑ってるんだろ…… !?

ちょっと、ちょっと! 不慣れだからって何よそれは!

山盛りにしないでよ。

恥ずかしいからほどほどにして! 」


周りの目を気にして盛るのを止める。

席に着き食べる事に。


「 そんなに取って、食べれるんでしょうね? 」


「 バカ言ってんじゃねぇよ。

男が残すなんてするかよ。

女じゃあるまいし…… 。 」


相変わらず文句ばかり言いながら、ケーキを一口食べる。


「 うめぇ…… ばくっ!! 」


一口、また一口と食べてしまう。

色んな方向からスイーツマウンテンを食べる。

何処を食べてもまた新しい味。

朝倉は美味しそうに口の周りにクリームを付けてもお構い無しに、夢中で食べ進めました。


萌は笑いながらそれを見ていた。


( いつもぶっきらぼうで、何考えてんだか分かんないけど。

ずっと気になってたけど、朝倉っておじさんに似てる。

素直じゃないとことかもね。 )


「 ん? 何見てんだよ? 」


「 別に…… 美味しそうに食べるなぁって。 」


朝倉は恥ずかしそうに横を向いて食べた。

いつの間にかもう一皿を軽く食べてしまっていた。


「 ちょっとババロアが置かれたみたいだから、ちょっと取って来るわ。 」


目が良くて新しく置かれたババロア欲しさに、立ち上がって向かいました。

凄い食欲に感心するばかり。


( 本当似てる…… 素直じゃないけど、食欲は凄まじいんだから。 )


ガシャンッ!!

皿が落ちる音が聞こえる。


「 ご…… ごめんなさい。 」


女子高生が前を見ていなくて、朝倉にぶつかってしまって制服にソフトクリームをつけてしまう。

周りからは心配の目をされている。

朝倉は他人からしたら、凄い身長が高くて金髪の不良そのものでした。


( ヤバい…… 早く止めに行かないと。 )


萌が立ち上がろうとすると、朝倉が口を開いた。


「 大丈夫っすか?

すみません! 落としてしまったんで、掃除してもらっても良いっすかね? 」


朝倉は全く気にせずに、店員さんに掃除頼みました。

直ぐに店員が掃除をしてくれる。


「 あ…… あの制服汚してしまって。 」


相手の女性が気にすると、朝倉はおしぼりで軽く拭いている。


「 洗えば良いだけなんで。

ババロア出て来ましたよ。

早く取らないと失くなってしまいますよ?

それではお先に! 」


そう言いババロアを取りに急ぐ。

女性達の目は朝倉に釘付けになる。


「 ねぇねぇ、今の人格好良くない? 」


「 ウチも思った! 」


「 私の彼氏ならクリーニング代払えってわめいてると思う。 」


「 凄い大きくて格好良いよね。 」


「 名前なんて言うのかしら? 」


あちらこちらから朝倉の話が聞こえてくる。


( 何よ…… ちょっと良いことしたからって、みんな勘違いして。

ちょっと見た目が格好良いからって。

背も高くて…… って、ないない!

何を気にしてるんだ、私は!? )


周りが好意的に見ていると、萌は少しヤキモチを妬いてしまっていた。


「 ババロア四種類の味があったぞ?

何にするか悩んで全部取ってきた。 」


またもや犬の餌のように持ってきた。

萌は全く周りをお構い無しの朝倉に腹が立った。


「 勝手に食べなさいよ!

またそんなに盛り付けて。 」


ちょっと冷たく当たってしまう。

キョトンとして何も分からない朝倉。

まっ良いか! っと食べ始める。


萌の心は少し揺れ始めていた。

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