第21話 片想いと誓い


ある昼下がり…… 。

おじさんはゆっくりジャージ姿で休日を堪能していました。

昼になってもゴロゴロ。

休みは誰にも邪魔されずゆっくりするのが大好き。


( はぁーー 最高だなぁ…… 。

ガキんちょは何してんだろ。 )


ゆっくり起き上がりテーブルを見ると、ご飯の支度がされており手紙が置いてある。


( おじさんへ。

友達と少し出掛けて来ます。

夕方には帰ります 萌より。 )


綺麗な字でそう書いてありました。

ゆっくり立ち上がり顔を洗い、歯磨きをしてからご飯を食べる。


「 何でだか…… 何時もならこの一人の時間。

至福の時間なはずが、静か過ぎてすげぇ気になる。

アイツが何時も騒いでるから、それに慣れちまったんだ。

慣れって怖い…… 。 」


残さず全て食べ終わり横になる。


( 食べたら台所に持ってくる事! )


萌の言葉が脳裏を過る。


「 仕方ない…… 少し片付けしてやるか。 」


台所に食器を持っていき、水に浸けて置きました。

何時も言われているので、日課になっている。


「 寝癖とか酷いけど散歩にでも行くかな。 」


気分転換に散歩に出掛ける。

行きたいとこもなく、適当に歩く。

風を感じながら歩くのが心地好い。

ベンチに座り缶コーヒーを一口。


( 一人の時間の方が少なくなったんだな。

この時間が当たり前だったのに。

変なもんだよな…… 金に釣られた俺が悪いけど。)


おじさんはお金には一切手をつけていない。

凄い大金でビビってしまっている?

罪悪感?? 色んな感情を持っていますが、一番使いたくない理由も。

あのお金は萌のお母さんが大切にしていた遺産。

それが一番の気掛かりに…… 。


( 洋介君は変わらないでね?

私は優しい洋介君が大好きだからさ。 )


おじさんの記憶の中では、何時も萌のお母さんは笑っていました。

思い出しては缶コーヒーを強く握り締める。


「 つまんねぇ…… 死に方しやがって。 」


おじさんは萌のお母さんへ片想いしていました。

気持ちは伝えずに終わってしまっている。

あまり会ってはいませんでしたが、幸せになってくれているのを祈っていました。


亡くなった日の事…… 。

急に連絡していなかった同級生から電話が。


「 何の用だよ? 今は忙しいんだが。 」


「 洋介…… 桜ちゃんが…… 。 」


言いにくそうに告げられる。

おじさんは何も考えられなくなり、スマホを地面に落としてしまう。


「 死んだ…… ? 」


状況を受け入れられず呆然と立ち尽くす。

何処かで幸せであって欲しかったのに、突然の不慮な事故…… 。


「 洋介? どうした? 」


仕事中動かなくなったおじさんを心配しておじいさんが駆け寄ってくる。


「 いや…… 何でもない。 」


直ぐにスマホを拾い、仕事に戻る。

とても受け入られない現実。


「 じいさん…… 葬式ってどう行けば良い?

何持ってけば良い? 何着てけば良い? 」


「 えっ!? 」


あの辛い日を思い出していました。


( チッ…… また思い出しちまった。 )


そう簡単に忘れられる訳もない。

一人になるとたまに思い出してしまう。


( あのガキを拾った理由はずっと金の為、って思ってたけど何か気掛かりがあった。 )


泣きたくても泣けない萌を見て、強く生きようとしているのが直ぐに分かりました。


「 おじちゃんこんにちわ!」


急に子供の女の子と挨拶をした記憶が。


「 俺は…… あの日…… 初めてじゃない。

そうだ! 前に会ってたんだ…… 。 」


町で偶然会ったとき、萌はまだ五歳でお母さんの後ろをくっついていました。


「 ほら、萌? ご挨拶は?? 」


「 おじちゃんこんにちわ! 」


風で吹き飛んでしまいそうなくらい、小さくて可愛い子供。

地面に膝を着きながら目線を合わせる。


「 こんにちわ、お母さんそっくりだな。 」


そう言いながら頭を撫でる。


「 そうだ…… あの時のちっこいのが…… 。 」


記憶を色々思い出してしまう。

萌は小さくて覚えてませんでしたが、おじさんはどうにか思い出せました。


「 そうか…… あの時のちっこいのが。 」


感傷に浸ってしまう。

一人母桜のお墓に足を運ぶ。

お墓には何時も綺麗な花が埋けてあり、頻繁に誰かが掃除をしているのが分かる。


「 桜…… お前の娘は元気だぞ。

俺なんかより立派で、頭良くて料理も上手い。

見た目もお前そっくりだな。 」


一人お墓に向かって話している。


「 俺決めたわ…… 。

あいつが立派な大人になるまで面倒見てやる。

何か良く分かんねぇ大学なり、専門学校入りたいなら死にもの狂いで働いてやる…… 。

だから…… 心配すんなよ。

また暇なとき来てやるからな…… またな。 」


お墓に向かって強く誓いました。

萌が大人になるまで支える事を。

ゆっくり歩いて行く。

そして一本の電話を仕事場にかける。


「 部長さんですか…… ?

社員の枠ってまだ…… 空いてますか? 」


おじさんは少しずつ前に進む事にしました。

萌を支える為に仕事を頑張る事に。

亡くなった桜に心配させない為にも。

お墓には半分食べかけの板チョコ置いてありました。


萌はそんな事が起こってるとも知らず、クラスの友達と仲良く遊んでいました。


その頃家に一人の女性がやって来ていました。

チャイムを鳴らそうかためらいつつ、何度も家の前を行ったり来たり。

そして一枚の手紙をポストに入れました。

直ぐに早歩きで行ってしまう。

何者だったのでしょうか…… ?

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