第20話 まさかの再会


萌は自宅に彩芽を連れてきました。

どっから見てもボロボロで、良い家とは言えない。


「 す…… 凄いね…… 何か、あのぅ。

そう! 昭和の文化が残ってるって言うか。 」


「 無理して言わなくて良いから。

さぁ、二階だから早く行こう。 」


無理に誉められても胸が痒くなるので、早く部屋に案内しました。

階段を上がるのにもいちいち音が鳴ってしまう。


「 狭いけどどうぞ。 」


そう言い二人は部屋へ入りました。

彩芽は直ぐに中を見渡すと、凄い狭いけど綺麗に整頓されている部屋がそこにありました。


「 凄い綺麗に整頓されてる…… 。

奥が萌ちゃんの部屋?

わぁーー 凄い可愛い部屋。

コーディネートが完璧だね。 」


凄く目を輝かしながらキョロキョロと周りを見ていました。


「 大した事ないよ。

狭いけどどうにか部屋くらいはね。 」


二人は萌の部屋で座り、飲み物とオヤツを広げました。


「 そう言えば…… おじさんはここに一緒に住んでるんだよね?? 」


「 そうだよ?? どして? 」


彩芽は返答を聞くなり少し表情は曇ってしまう。


「 そのおじさんって独身なんでしょ?

こんな若い女子高生と二人で暮らしてたら、変な気でも起こしたらどうするの。

私は心配になってきちゃった。 」


妄想癖が激しく、萌に何かあってしまったら?

と思うと言わない訳にはいかなくなっていました。


「 全然大丈夫! あの人は女性嫌いなのよ。

一人で居るのが何よりも好きなくらい。

私なんか邪魔なくらいにしか考えてないから。」


彩芽はまた曇った表情に。


「 なら違う意味で心配だよ。

だって…… 40代まで独り身った…… 。

とんだ変わり者だよ。 」


凄い言われようでした。

心配してるから仕方ない事でも、少し大袈裟に騒いでしまう。


「 んーー 、変わり者っちゃ変わり者かな?

だらしなくて自分勝手だけど、優しいとことかも少しはあるんだよ。

だからそんなには酷くないかな。 」


そう言うと全然納得出来なそうに、オヤツを口に入れました。


「 ザクザクっ! ゴクンっ!

全然納得出来ない…… 。 」


納得出来なくてスナック菓子を口に沢山頬張りました。


「 彩芽は優しいね。

本当に大丈夫なんだから。

そんなに食べ大丈夫? 太らない? 」


あまりの食べっぷりについ言ってしまう。


「 バクバクっ…… んぐっ!

私は食べないとストレスで逆に太っちゃう体質なのよ。」


何やら自分に優しい解釈をして、食べる言い訳にしている。


「 あはははっ、何よそれ!

食べたいからってそんな言い訳ある? 」


大声で笑ってしまう。

彩芽は真面目に話したつもりでも、ふざけた言い訳に笑いが止まらなくなりました。


「 本当に本当! お母さんもそうなのよ。

遺伝なのかしら? 」


またそれで笑ってしまう。

壁の薄い部屋なので、その笑い声はアパートの外まで響いてしまっていました。


( んっ? …… 何やら楽しそうな声が?? )


隣で受験勉強をしている浪人生が、楽しそうな声に気づきました。


( 女の子が二人…… それ行けいっ!! )


サンダルを履き凄い勢いで外へ走って行きました。


「 それでそれで、おじさんはお酒飲んでつまみ食べてるだけで泣くくらい喜ぶんだよ?

凄いウケるでしょ? 」


「 それはまた変なのーー 。

ウチのお父さんもお酒飲むけど、そこまでじゃないかなぁ。

やっぱりだらしなくて、酒飲みで、ギャンブル好きってろくでなしよ! 」


彩芽はだらしないおじさんを、凄い嫌悪感を示していました。


トントンッ!!


ドアをノックする音が聞こえました。


「 はぁーー いっ。 」


直ぐにドアを開けると、Tシャツとジャージを着た浪人生が立って居ました。


「 このお菓子凄い安くて、買いすぎちゃったから二人でお食べよ。

つまらないもんだけどさ。 」


下心丸出しでコンビニに走っていき、沢山お菓子を買って来たのです。

来る口実を作るために。


「 わざわざありがとうございます。

良ければお茶でも飲みますか? 」


沢山のお菓子を貰って申し訳なくて、試しに誘ってみました。


( キタ…… その言葉を待っていた! )


「 嫌々悪いよ、友達だって居るじゃない。

僕みたいな大人が来たら申し訳ないよ。 」


これっぽっちも思っても無いことを言いました。

人はこう言われると決まって返す言葉は?


「 全然大丈夫ですよ。

狭いですけど良かったら。 」


( 決まった…… 最高のシナリオだと思わないかい?

これで自然に女の子達と会話出来る。

これが巧みなる計算された話術さ。 )


下心丸出し男は勉強は全然上手くいかないのに、こう言う事にだけは頭が回る。


「 そうですか? なら遠慮なくっ! 」


ゆっくり入ろうとすると、首もとを思いっきり引っ張られる。


「 うわっ!! ちょっと何ですか!? 」


直ぐに後ろを振り向くと、大家さんが立っていました。


「 ぐるぁっ!! 何女の子の部屋に、汚ない男がのこのこ入ろうとしてんだよ! 」


大家さんの鬼のような表情に、浪人生もしどろもどろになってしまう。


「 ななな…… 何を言うんですか。

僕はですね、買いすぎてしまったお菓子をお裾分けしようとしただけで。

疚しい気持ちなど、これっぽっちもないです。

ただお茶をご馳走になろうと…… 。 」


必死に言い訳をすると、大谷さんは凄いスピードで浪人生のポケットからレシートを取り出す。


「 なんだいこれは? 」


「 わぁーー それはダメですよ。

プライバシーの侵害です。 」


必死に隠そうとするレシートを見ると、コンビニで沢山お菓子を買った物でした。

時刻もついさっき…… 。


「 何が買いすぎてだよ。

コンビニで安売りなんかしてる訳あるか!!

下心見え見えなのよ! バカもん! 」


直ぐにバレてしまい怒鳴られてしまう。

浪人生もしどろもどろに汗をハンカチで拭きました。


「 すみません…… つい出来心で。 」


「 うるさい!! そんな暇なら私の腰をお揉み。

さぁこっちに来なっ。 」


凄い勢いで浪人生は大家さんに連れて行かれてしまう。

萌はそれを見届けていました。


「 何だったのかしら…… 大丈夫かな?

まぁいっか! 早く戻ろう。 」


良く分からないまま部屋に戻りました。


「 何か色々大変だったね。

ここって変な人多いの? 」


彩芽は心配そうに聞くと、萌は少し考え…… 。


「 楽しい人沢山居るのよ。

話せば直ぐに仲良くなるから。 」


彩芽は慣れてないと上手く付き合えないので、新しい人との出会いに消極的。


「 そうなのかな…… ?

そろそろ帰ろうかな。

今日はスッゴく楽しかった。

また来ても良い?? 」


嬉そうに話す彩芽に笑ってうなづく。

満足そうに帰って行きました。

萌も当然楽しかったのです。


「 すっかり暗くなっちゃった。

早く帰らなきゃ…… 。 」


遊び過ぎたので急いで帰っている。

遅くなると叱られてしまうからです。

走って角を曲がろうとすると、勢い良くぶつかってしまう。


「 うわぁっ!! 」


倒れそうになるとその手を掴み、倒れないで済みました。


「 悪いな…… よそ見してた。

悪かったな、気をつけて帰りなよ。 」


暗くてあまり見えませんでしたが、その顔に見覚えがありました。


「 えっ…… もしかして…… 。 」


ぶつかったのはおじさんでした。

彩芽はいきなりの再会でびっくりしてしまう。

おじさんは早足で行ってしまいました。


「 また…… お礼言えなかった。

カッコいいなぁ…… ここら辺に住んでるのかな?

ヤバいっ! 早く帰らなきゃ!! 」


彩芽はまた再会出来たのを嬉しく思い、また会えると信じながら急いで帰りました。

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