第18話 それぞれの恋愛事情


その日の夜の事…… 。

ウキウキで帰宅してお風呂にも入り、部屋で一人の時間を過ごしている。


「 はぁーー 、楽しかったなぁ。

ドキドキし過ぎたのか? ちょっと疲れたな。

ゆっくり休んで…… また明日…… ぐぅ。 」


パジャマ姿で布団の上でうつ伏せで眠ってしまう。

突然の睡魔に襲われてあっという間に深い眠りへ。


「 うぉーー いっ! 美味いお菓子あるんだけど、半分っこにしない…… ってもう寝たのか?

どんだけ疲れてたんだよ。

つまんないなぁ…… 。 」


おじさんは萌に布団をかけて電気を消す。

寝顔を見てゆっくりと部屋を出ていく。

ほんの少しだけ子を持つ、親の気持ちが分かりました。


吉良は家の二階の部屋のテラスから夜景を眺めている。


「 たまには頭良い子とデートも楽しいもんだ。

まぁ僕に相応しいかは別として。

遊びとしては悪くなかったな。

多分彼女はもう僕に夢中だろうがな。 」


そして不適に笑う。

萌とは遊びだったようでした。

そして自分の魅力と力を試したかったのです。

何処まで人の心を操れるのか?

だけど少しも楽しそうではありませんでした。


寝ている萌のスマホに着信。

画面には彩芽の名前が。


「 何よ! 全然出ないじゃない。

今日の話沢山したかったのに。

明日聞けば良いっか。 」


彩芽もデートの結果を楽しみにしていました。

自分の事のように楽しみにしているのでした。


次の日の学校での事…… 。

休み時間になるなり、彩芽は萌の席に。


「 萌ちゃん、萌ちゃん!

昨日はどうだったの?

私が電話したのに出ないんだもん。 」


「 ごめんね…… 昨日緊張して疲れてて。

あっという間に寝ちゃったの。 」


そして1日何をしていたのかを細かく話しました。

彩芽は知っていても、初めて聞くように目を大きくして聞いていました。


「 萌ちゃんはそれで吉良君にメロメロって訳ね。

本当にキザなやつなのに。

絶対もっと良い男沢山居るのに! 」


萌は昨日の事を思い出してニヤニヤしている。

彩芽はニヤついている顔を見て笑ってしまう。


そこに吉良が近寄って来ました。


「 藤堂さん、昨日はありがとう。

また何処かに行こうね。 」


いきなり話をかけてきたので、慌てて立ち上がりました。


「 きっきき、昨日は本当にありがとう。

是非!! 私はいつでも大丈夫だから。 」


それを聞くと微笑んで教室から出ていく。

それを見えなくなるまで見届けている。


「 あんな男の何が良いんだか…… 。 」


彩芽はつまらなそうにしてしまう。

萌は嬉しそうにしていると、周りの女の子からは嫉妬の目を向けられてしまう。


( 吉良様とあんなに仲良くしちゃって。 )

( ムカつく…… ちょっと可愛いからって。 )

( 少し勉強が出来るからって…… 。 )


周りからは冷たい視線と妬みが溢れている。

萌も悪いな、と思いながらも満更でもないかな?

とも思ってしまう。

付き合ってると勘違いされているだけでも、萌にとっては幸せいっぱい。


クラスの男子達も違う意味でイライラしている。

萌は性格も見た目も良く、学校には隠れファンが多く存在している。

なので今回の出来事に嫉妬し、吉良への怒りを爆発させている。


それをつまらなそうに見ている男が一人…… 。

番長の朝倉でした。


( つまらん…… そんなんで騒ぐんじゃねぇよ。

だから学校はつまんねぇんだよ。 )


つまらなそうに教室から出ていく。

朝倉はこう言う空気の中に入るのが苦手。

不良だからでもあるが、一番はやっぱり人間関係を築くのが大の苦手なのです。

イライラしながら廊下の真ん中を、態度悪く歩いている。


ドンッ!!

朝倉の肩が上級生とぶつかる。


「 痛ぇなぁ…… ケンカ売ってんのか!? 」


悪そうな不良の先輩に囲まれてしまう。

ですが不良達よりも朝倉の方が背が高く、足も長くてタッパもある。


「 こいつ…… でけぇなぁ…… 。 」


不良達は少し汗をかく。

するとギロっと怒りの視線を向ける。


「 あんっ!? 」


その表情は怒り。

年上に一歩も引かない鬼のような表情。

不良達はびっくりしてしまい、腰を抜かしてしまう。


「 なっ…… 何でもない…… です。 」


口から出たのは負けの言葉。


「 チッ! 邪魔だからどけよ。 」


圧倒的なオーラを出して不良達の真ん中を通って行く。

不良達も朝倉に恐怖している。


「 俺達は…… あそこまで悪じゃ…… ないな。 」

「 ああ…… 、 あれは人を何人も殺してるような顔してやがったよ。 」


不良達も朝倉には絡むのを止めようと決めるのでした。


「 つまんねぇ…… 学校なんか早く辞めたい。

就職出来れば直ぐに辞めてやらぁ。 」


怒りながらも悲しそうに歩いて行きました。


その頃に街中を自転車を漕ぐ女性が居ました。

神宮寺京子、この前彩芽にミュージカルのチケットを譲ってくれた女性。

急いでいる様子。


「 遅刻、遅刻! 寝坊しちゃったわ。

どいて、どいて!! 」


気象が荒く、彩芽とは正反対なくらい積極的な女性。

アパレル関係の仕事をしているので、話すのが得意な性格。


「 ヤバい、遅刻しちゃう!

ギアを上げるわよ。 」


急に何段もギアを変えてしまい、チェーンが外れてしまいました。


「 わっ!! やっちゃった…… 。 」


自転車を止めて原因を調べる。

チェーンが外れてしまったのが直ぐに分かりましたが、乗ることが出来ても詳しい人は少ない。


( どうしよう…… やったことないし。

手も汚れちゃうし出来ないわ。

何処かに自転車屋さんないかしら。 )


周りを見ても見つからない。

どうしようか困ってしまう。


そこに一人の男性が近づいて来る。


「 おい! 困ってんのか? 」


「 誰よ? あんたに構ってる暇ないのよ。 」


京子は髪もバッチリ決めて、モデルさんのように綺麗。

服装と雑誌で人気なのを着こなしている。

周りの男からナンパは日常茶飯事。

またナンパだと思い、冷たく突き放す。


「 構うもなにもお前が大変だから話かけてやってんだよ。 」


男は引き下がらずまた話をかける。


「 あんたうるさいわね!

だから何よ?? 」


後ろを振り向くとそこには、作業着を着たおじさんの洋介が立っていました。


( うわぁ…… 汚いおっさん。

何の用なのよ。

私がちょっと可愛いからって。 )


いきなり話をかけてきたおじさんを、不振に思いながら距離を置く。


「 こっちは時間がねぇーー んだよ。

チェーン外れたんじゃないのか? 」


「 えっ…… ? 」


おじさんはゆっくり歩いていて、後ろからチェーンが外れるのを見ていたのです。


( 何だ…… ナンパじゃないのね。 )


一安心してチェーンが付けられないので、自転車屋を探していると伝えました。


「 ちっ! だから女はこれだから…… 。

ちょっと退いてろよ。 」


そう言いタバコを咥えながら自転車に近づく。


「 えっ!? ちょっと…… 。 」


おじさんはチェーンを触り、直ぐに直し始める。

手慣れた手つきでチェーンをかけ直している。


( えっ…… !? この人すげぇ態度悪いのに。

こんな汚いチェーン平気で触ってるし。

見ず知らずの私の自転車の為に…… 。 )


京子は驚いてしまい、言葉を失ってしまう。

真剣に直すおじさんの横顔を見ている。


あっという間に直してしまい、おじさんは立ち上がる。


「 ぷぅーーっ、こんなんで自転車屋行くと、あっちも迷惑だわ。

これくらい直せるようにしとけよな。 」


タバコを吹かして時計を見る。


「 やっべ!! 仕事に遅れる!

じゃあな、早く行かないと遅刻するぞ。 」


そう言い捨てて走って行く。

おじさんの手はチェーンの汚れで汚くなっていました。

そんなのお構い無しで行ってしまいました。


「 あ、ありがとう…… ございます。 」


京子はその場で立ち尽くす。

京子は他人の為にこんなにした事はなく、自分なら絶対にやりたくありませんでした。

自分の事を恥ずかしくなる。


「 ヤバっ、…… 惚れたわ。 」


おじさんに一目惚れしてしまう。

その日京子は遅刻してしまいました。

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