第16話 ドキドキ初デート


それから数日が過ぎて、遂に約束の日が訪れました。

待ち合わせの公園に13:00。

萌は買ったばかりの新品の服を着て、1時間も早く公園に着いていました。

緊張し過ぎて早めに家を出てしまったのです。


( 遅刻するより何倍も良いからね。

1時間後かぁ…… ベンチに座ってゆっくり待ってれば直ぐだもんね。 )


ゆっくりベンチに腰を下ろそうとする。

そこに上下白い服に身を包んだイケメンが現れる。


「 あれ? 藤堂さん?

もしかしてもう着いてたの!? 」


吉良が現れると萌は直ぐに立ち上がる。


「 時間間違えちゃって…… 。

だからゆっくりしてました。 」


楽しみ過ぎて早く来たとは言えない…… 。


「 そうだったんだね。

僕はレディを待たせたらいけないからね。

早めに来たんだけど、少し負けちゃったね。 」


白い歯を見せて笑う。

日差しのせいなのか? いつもより1.5倍増しに見えていました。


「 まだ時間まであるからさ、近くの喫茶店にでも行かないかい?

立ち話もあれだからさ。 」


休日に二人、楽しそうに喫茶店へ向かう。

優しい吉良は道路側をさりげなく歩き、歩くペースを合わせてくれている。

紳士とはこんな人を言うのだろう。


( カッコいい…… 。

今日は横顔も見放題。

にしてもカッコいいなぁ。 )


まだ何もしてないのに酔ってしまうくらいに、チラチラと何度も歩いている横顔を見てしまう。


「 ん? 何か付いているかな? 」


「 じぇ…… ぜぇんぜんっ!

何も付いていません。

学校以外で会わないから新鮮な気持ちで。 」


さすがに見過ぎてしまいバレて必死に弁解をする。

吉良はうなづきながら空を眺めている。


「 そうだよね、学校以外は全然だもんね。

今日は存分に楽しもうね。 」


萌はずっとうっとりしっぱなし。

二人は近くの喫茶店に。

そこは昔ながらのレトロの雰囲気を出していて、コーヒーの匂いが漂うお店。


「 凄いオシャレなお店。 」


吉良が選ぶ店なのでもっと洋風かと思いきや、日本のレトロな雰囲気なお店で、その意外なギャップにびっくりしてしまう。


「 ここはね、昔から結構好きでね。

静かで落ち着ける場所なのさ。

好きなの頼んでおくれ。

僕の奢りだからさ。 」


そう言ってメニューを手渡しました。

店内では静かにジャズが流れていて、レトロな雰囲気がじわじわ感じてくる。


「 凄いオシャレなお店。

ちゃんとお金も払いますよ。

メニューも沢山あって迷うなぁ。 」


二人きりでドキドキしてしまい、少し暑くなっていました。

冬でもアイスの飲み物が飲みたい。

それぐらい喉が渇いていました。


「 絶対萌ちゃんは冷たい飲み物選ぶね。

オシャレしちゃって暑くなってるはずだから! 」


望遠鏡を使って遠くから見ている影が!?

萌が大好きでじっとしていられない、彩芽がこっそりついてきてしまっていました。

当然変装をして地味にしている。


「 にしても…… 吉良って…… 。

なんでもない…… なんでもない。

好みは人それぞれだもんね!

でも本当に…… 嘘臭い笑顔が張り付いてる。 」


彩芽は心底吉良を気に入りませんでした。

自分とは正反対だからなのか?

ただの嫉妬なのかは分かりませんでした。

遠くから心配そうに見詰めている。


二人の飲み物が運ばれて来ました。

吉良は焦がしキャラメルモカ。

萌はカプチーノ。

やっぱりアイスを頼む勇気はありませんでした。


「 そうなんだぁ、新しいお父さんとは上手くやれているんだね。

それは一安心だなぁ。 」


世間話をしつつ二人は飲み物に手をつける。


「 ここはマスターのオリジナルブレンドで、唯一無二の味なんだよ。

カプチーノも美味しいでしょ? 」


萌も一口飲むと口いっぱいに、カプチーノの風味が鼻を抜ける。

一口飲んだだけでも濃厚で、市販のカプチーノとは別物だと素人でも分かる。


「 美味しい…… 。

凄い濃くて、何て言うか…… 凄い。 」


あまり食レポみたいに表現した事がなくて、上手く話す事が出来ない。

でも美味しい気持ちだけは伝えました。


「 そうだろ? 本当に美味しいんだ。

ランチとかも格別なんだよ。 」


いつもは大人っぽいのに、好きな物を語る時の吉良は、子供のように目を輝かせながら話している。

その話に興味があるかは別としても、日頃見ることの出来ない姿を堪能してしまう。


( はぁ…… 幸せ…… 。

なんでこんなイケメンが私とデートしてくれてるのかなぁ?

幸せ過ぎて死にそう…… 。 )


コーヒー雑学や学校の事、沢山話しました。

萌は緊張してしまっていて、自分からは話題を振れないでいても、直ぐに代わりに話題を振ってくれる。

萌の目には天使のように映っていました。


「 へっくしゅんっ!!

いつまで中に居るのよ。

こっちの事も考えてやってほしいよね。

寒い…… へっくしゅっん!! 」


彩芽は寒そうに缶コーヒーを持ちながら、寒さに耐えて監視していました。


その後少しお話をしてから外へ。

バスに乗って駅前に行き、目的のミュージカルのやる劇場へ向かいました。

バスは混雑していて席は一つだけ空いている。


「 さぁ、藤堂さん座って? 」


そう言い遠慮する萌を無理矢理座らせました。

全然立ってても大丈夫だったのに、気を利かせて座らせてくれました。

吉良は本当に周りに目配り出来るのが、またよーーく分かりました。


( 私にも…… 席を譲って…… くれいっ! )


小さな体で揺られながら頑張って立っている彩芽。

手すりを掴み転ばないように必死に耐える。

友達の恋の行方が気になり一生懸命食らいつく!


必死な彩芽に気づくはずもなく、立っている姿を夢中で見続けてしまう。


( はぁ…… 本当にカッコいい。

どっかの誰かさんとは大違い。

気が利くし、頭も良くて優しくて。

見習って欲しいわ。 )


「 へっくしょいっ!! 」


おじさんは大きな声でくしゃみをする。


「 大丈夫っすか? 」


朝倉がおじさんのくしゃみを心配して駆け寄る。


「 へっ、誰かが噂してやがるぜ。

やめだやめっ! 少しあっちで一服だ。 」


そう言い朝倉を連れて休憩に。

直ぐにタバコを吹かしてもくもくマンに大変身。


「 ぷふぁーーっ! 生き返る。

ってか、お前は折角の休みなのに遊ばないのか?

学生なんだからさ。 」


朝倉が日曜日も入っているので気に掛ける。


「 別に…… 少しお金が必要で。

みんなが入りたくないとこにも入れば、結構稼げるかなぁと思って。 」


その表情は少し悲しげに見えました。


「 そうか…… そうか。

だからって無理だけはすんなよ?

体だけは大切にすんだぞ。

お前は見込みあるかんな! 」


そう言いながら朝倉の頭を帽子の上から撫でる。

朝倉は恥ずかしそうに直ぐに止めました。

おじさんは一生懸命な男が大好き。

自分は一生懸命働いてはいないのに。


「 赤沼さん、お子さんって居るんすか? 」


口数の少ない朝倉から話を掛けてきました。


「 お子さん? 居るわけないだろ!

自由に生きて適当にやってんだ。

女だって居ねぇーーのによ。 」


笑いながら話していると、萌の存在を忘れていました。


「 あっ…… でもまぁまぁデカいのが一人。 」


「 えっ!? さっき言ってた事と違くないっすか?

もしかして…… 彼女とか? 」


いきなりの質問にタバコの煙が肺に入る。


「 ゲホッ!! ゲホッ!

んな訳あるかよ。

次ふざけた事言ったら殴るぞ?

…… 同居人みたいなもんだよ。 」


( 何か複雑そう…… 。

面倒くせぇからこれ以上聞くのやめよ! )


朝倉はおじさんの家の事は、あまり聞かないようにするのでした。

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