第7話 学園生活


生活にも少し慣れて、萌は長い休みから学校へ行くことに。

転校するのか? それともまた同じ場所に通えるのかが分からなかったので、やっとまた同じ学校に行ける事に。

家は違くなりましたが、学校までは少し自転車を漕げば遠くない距離でした。


( 久しぶりだなぁ…… 。

毎日自己学習はしていたけど、置いて行かれてないか心配。

皆も私のママが亡くなって気まずくないかなぁ?

気を使われたら嫌だなぁ…… 。 )


久しぶりの学校に少しの不安を浮かべながら、ゆっくりペダルを漕ぎました。

11月の初め、外は寒くて通り過ぎる風が顔に当たり痛い。

手袋を着けていても、ハンドルを握っている内に冷たさが手に浸透する。


なんやかんや考えていると学校に。

今日来る事は誰も知りません。

ゆっくりと自転車小屋に停めて、下駄箱に向かいました。


いつものように靴を履き替えて教室へ。

階段を上っているときは、不安で仕方がないくらいになっていました。

久しぶりの学校は誰でも嫌なもんです。

ゆっくりと教室に入りました。


入ると騒がしかったみんなが、一斉に静かになってしまう。

萌に気づいたからでした。


( うわぁ…… 嫌な雰囲気。

気まずいから挨拶だけでもしよ。 )


深呼吸して勇気を振り絞り。


「 お…… おはよう。 」


小さな声で囁くと、女の子達が近付いて来ました。


「 おはよう、大丈夫??

何かあったら言ってね? 」

「 おはよう! いつでも力になるからね! 」

「 凄い心配してたんだよーーっ!? 」


あらゆる場所から心配して話を掛けられました。

心配してくれていたのです。


「 あ、ありがとう…… 大丈夫。

心配してくれてありがとう。 」


クラスのヒーローのように、周りから傷付いた心を心配されました。

嬉しい気持ちと同時に、少しほっといて欲しくもありました。

まだ考えないようにしているだけで、お母さんの死は受け入れられていないからです。


「 秀才さんのお帰りかいっ?

やっぱり天才は優遇されるねぇーー。 」


学校のストーブの上から野太い大きな声での煽り。

皆も反応して話すのを止める。


「 もう大人なんだからいちいち励ましたりとか、見ててイライラする。

女ってのは本当弱い生き物だぜ。 」


言い返さないと永遠に続きそうなくらいの、煽り文句の数々…… 。

一体誰でしょうか?


朝倉恵あさくらめぐみ

同じクラスの番長的存在。

高身長でクラス一、学校の規則のネクタイはだらしなく着けている。

ケンカが強かったり顔だけは、少し良いからモテている男。

当然萌は苦手。


「 ごめんなさい…… 騒がしくして。

皆ももう大丈夫だから席に戻って?

気持ちは凄く嬉しかったよ。 」


萌は謝り周りの皆を席に戻るように言いました。

女子達はその横暴な行動にイライラしながら、自分の席に戻りました。


「 俺はお前みたいな優遇されたヤツが大嫌いだ!

頭も良くて皆からもちやほや…… 。

でけぇツラすんじゃねぇーーぞっ!! 」


朝のホームルームが始まるまで続きそうなくらいの不満…… 煽りが止まりません。


( イライラする…… 私はバカが大嫌い。

だから謝っただけなのに。

もう我慢の限界…… 、爆発してやる!! )


萌は勢い良く立ち上がりました。

その音にびっくりして煽るのが止まる。


「 さっきから…… 。 」


萌が言い返そうとすると。


「 おはよう! もう大丈夫なのかい?

何かあったら僕に言いなよ。

居なかった間のノート、これ使いなよ。 」


爽やかな声…… 。

野太い声とは正反対…… この声は?


吉良清十郎きらせいじゅうろう

秀才で身長も高く、好青年を絵に描いたような人物。

学校一のイケメンでモテモテ。

制服もビシッ! と決まっていてカッコいい。


「 あっあ…… ありがとう。 」


萌はミーハーのイケメン好き。

吉良君が大好きなのです。

直ぐに怒りから優しい吉良への、メロメロの気持ちに変わってしまう。


「 そうだ…… 朝倉…… 。

廊下までキミの醜い声が響いていたよ。

どうにかするのはキミの方じゃないのか? 」


吉良君が朝倉に注意しました。

勢い良く立ち上がり吉良の元へ。


「 なめてんなよ秀才がよ…… 。 」


顔を近づけて怒っている。

いつ拳が飛んできてもおかしくない。


「 なめているのはキミだろ?

やっと来た藤堂さんにいちゃもんつけて。

誰でも言うこと聞くと思ったら大間違いだよ。 」


お互い負けずに引きません。

バチバチの状態に…… 。


ガラガラーーッ!

教室の扉が開いて先生が入って来ました。


「 よぉーーしっ。

席に着けよーー …… っておい。

藤堂じゃかいか!? もう大丈夫なのか? 」


担任の男勝りな先生が萌を心配しました。

まだ来るのは早いのでは?

と案じての事。


「 大丈夫です…… ありがとうございます。 」


「 そうか…… 何かあったら言えよ?

先生がご飯でも作りに行ってやるからな! 」


昔の熱血先生のように暑苦しい。

萌は少し苦手のようです。


「 ほら! 朝倉っ!!

吉良に突っかかるな、早く席に着けよ! 」


近付いて居た二人はゆっくり離れました。

朝倉はかなり不機嫌に。


( 吉良の野郎…… イチイチ邪魔しやがって。

今度痛い目見せてやる。 見てろよ? )


と悪巧みを考えていました。


対象に吉良は全く気にせず、気持ちを入れ換えて授業に取り組む。

そんな彼を見ている萌。


( はぁ…… 吉良君はいつも優しいなぁ。

それに比べてあの無神経男…… 。

月とスッポン! いや…… それより酷いわ! )


萌の心は吉良にメロメロに。

家は金持ちでお父さんは医者。

お母さんは音楽家。

最高のサラブレッド。

息子は容姿に勉強に性格、何を取っても一流。


萌から見ても高嶺の花。

ライバルは多く競争率は激しい。

無理な理想にため息をついてしまう。


「 久しぶり…… 何かあったら言ってね。

また一緒に勉強出来て嬉しい。 」


隣から小さな声で話しをかけられる。


円谷彩芽つむらやあやめ

昔からの幼なじみ。

気は弱く良く本ばかり読んでいる。

昔から気は弱かったので、萌から話をかけて親友になりました。

萌の前では良く話せます。

彩芽にとって萌は大親友であり、自分の理想の女性なので髪型も同じロングヘアーに。


「 ありがとう! お昼一緒に食べよ。 」


そう言って二人は笑って、気持ちを切り替えて授業に集中する。

いつもと変わらない学園生活が始まる。


その頃…… おじさんはビルの屋上でタバコを吸っていました。

掃除をしながら少しの休憩中。


「 おいっ! 浮かない顔してるじゃないか。

話を聞いてやろうか? 」


先輩のおじいさんが話をかけてきました。


「 なんもない…… 俺の生活が少しずつ変わって来て、少し複雑なんだわ。 」


そう言ってタバコの煙を空に向かって吐き出す。


「 お前ももう40代だぞ?

周りはみんな家族が居て、未来に向かって進んでいる。

それに比べ…… お前さんは、自由に遊び過ぎじゃ。

少しは家族と言うもんを味わえ!! 」


おじいさんに渇を入れられてしまう。

おじさんは不満がある訳ではない。

ただ…… 変化に適応するのが苦手なのです。

今は年頃の娘と狭い部屋で二人。

毎日がモヤモヤの連続。


「 分かってんだよ、んな事はよ。

プライバシーとか色々あって面倒なんよ。 」


「 そうかぁ…… 少しずつ慣れるしかない。

これは私からの奢りだ。

真っ直ぐ帰れよ!! 」


缶コーヒーを置いて仕事に戻りました。


「 定年後のじいさんは立派な事で。

偉そうに…… はぁ。 缶コーヒーは頂く。 」


そう言って一人高い景色を見ながらコーヒーを一気に飲み干す。

そしてまた仕事に戻る。


( 今日のご飯は何かな? )


少し違う楽しみも出来ているのでした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る