第4話 新しい朝


ゆっくりと目が覚める。

いつもと違う景色。

匂いも臭くて鼻につく。

部屋の広さも狭くて、物は散らかりっぱなし。


( …… 本当にこんなとこ住むのかぁ。

何でこうなっちゃうのかな。 )


選んだのは自分ですが、後悔ばかりしてしまう。

お葬式から帰ってから着替えないで寝てしまいました。

お腹も空いてしまい音が鳴る。


昨日と同じく汚い部屋…… 。

ですがテーブルの上には、昨日はなかった沢山お菓子が入った袋が乗っている。


「 なにこれ…… 。

昨日買ってきたのかな?

こんなにいっぱい…… 。 」


沢山あるお菓子を探りました。

菓子パンがいくつかあり、何個か食べることにしました。

本当にお腹が空いていたのです。


( もぐもぐ…… お風呂も入りたい。

髪もべたべただし汗臭い。 )


食べ終わりゴミ箱を探しても見つからない。

人間の住む言えとは到底言えません。

仕方なくお風呂へ。


「 うわぁーーっ、何よこれっ!? 」


お風呂はかなり狭くて、大きな段ボールかと思うくらいの大きさ。

足は伸ばせず足を折って入るくらい狭い。

しかもお湯は出なくて焚くお風呂。

まるでガスコンロのようにお水を張ってから焚かないといけません。

熱くなったら止めるようです。


「 色々最低でシャワーもない。

しかもいつ洗ったかも分からないくらい汚い。 」


萌の想像をかなり越えて来ました。

ドラマで出てくる一人暮らしの男の部屋なんて、ここの部屋に比べたら汚いなんて呼べないくらいに。


我慢出来ずに財布とスマホを鞄に入れて、外へ出て行きました。

ナビを起動させてある場所へ向かいました。

その場所は健康ランド。

どうしてもお風呂に入りたかったのです。


「 最高の一時を楽しむわよ。 それーーっ! 」


広くて綺麗なお風呂に浸かり、しみじみとその気持ち良さを味わいました。


「 ぷふぁーーっ。 これよ、これ。

疲れが吹っ飛ぶわ。 」


萌は温まりながら疲れを取っていました。


その頃おじさんは?


「 むにゃむにゃ…… ん??

ガキはどうした! 」


直ぐに起き上がりリビングに行くと、萌の姿はありませんでした。


「 ガキんちょ…… 出て行ったのか。

まぁ仕方ないな。

こんな環境に耐えられる訳あるか。

だから言ったんだよ…… 。 」


そう言いながらモヤモヤした気持ちで周りを見る。

テーブルの上には沢山のお菓子が。

少し虚しくなったのか、お菓子を一個口に入れる。


「 パリッ! …… チョコうまいな。

意外にイケる…… バリバリっ! 」


一人お菓子を頬張りました。

意外に美味しくて食べ続けていました。


健康ランドではお風呂の後に、マッサージ機で疲れを取っていました。

あまりの気持ち良さに眠りそうになりながらも、寝ないようにしている。


「 んーーっ。これからどうしようか。 」


これからについて考えていました。

何から始めるか…… 。

頭の中であらゆるスケジュールを描き始める。

生活するにあたって必要な事。

衣食住…… これを安定させる為、目を瞑りながら精神統一して考える。


「 よしっ!! 決まったぞ。

まずは掃除だぁ。 」


直ぐに部屋に戻りました。

階段をガンガンと音を立てて駆け上がる。


ガシャッ!!

思いっきり扉を開けました。


「 ただいまぁ…… 。 」


恐る恐る入ると、おじさんは居なくなっていました。


「 何だぁ…… 仕事かぁ。

ん?? 待てよ、何で鍵開いてるんだ!?

良いものないからってふざけ過ぎよ。 」


ちなみにフォローをするとおじさんは仕事に行くときに、もし帰って来たら入れないと思って仕方なく開けっ放しにしたのです。

当然気づくはずはありません。


「 よぉーーしっ! やるぞぉーーっ。 」


頭にバンダナを巻き、やる気満々に!

大きなゴミ袋を片手に…… 。

そしてゴミをどんどん捨てていく。


「 これもこれも!

それにこれもいらない。

食べたら片付ける、これは人の常識なのよ。

それそれそれそれーーっ!! 」


テーブルの周りや台所。

寝室も全てゴミだらけ。

凄い勢いで掃除をしていく。


「 ん…… なんだあれ? 」


ここのアパートの大家さんがアパートに帰って来ると、おじさんの部屋のベランダでお布団を干してるのに驚いてしまう。

びっくりして直ぐに二階へ上がって来る。


ドンドンドンッ!

勢い良くドアを叩きました。


「 赤沼さん、赤沼さん!

一体どうしたんだい。

お布団なんて干して、引っ越しでもするのかい? 」


大家さんが勢い良く叩くと、扉がゆっくり開きました。


「 はぁーー い…… 。 」


出てきたのはバンダナに厚いゴーグルで、マスク姿の女の子が出てきました。


「 いやぁーーーーっ!! 」


凄い大声で叫ぶ大家さん。

男の一人暮らしでだらしないおじさんだと思っていたのに、出てきたのは見知らぬ女の子。

驚くのも仕方がありません。


「 初めまして、申し遅れました。

今度からここに住ませて頂く、藤堂萌と申します。

高校一年生です。

これから宜しくお願い致します。 」


「 うぇっ!? 彼女? 愛人?

今流行りのパパ活ってやつかい?

まさか…… パパ活ってのは暮らしたりもするんだねぇ…… 大変な事で。 」


大家さんは慌ててしまい、意味不明な解釈をしてしまう。

萌は今までの経緯を話しました。

自分が養子としてここで暮らすことも。


「 なんだい…… そうなのかい。

あたしはびっくりしちゃったよ。

掃除は後で良いからあたしの部屋へおいで。

美味しいお菓子があるよ。 」


と強引に手を引かれて一階の大家さんの部屋へ。

大家さんはここの管理を含め、毎日外を掃除したりとこのアパートの管理をしている。


亀山鶴子かめやまつるこ55歳。

お話好きの優しいおばさん。

旦那とは離婚して、子供はもう立派な社会人。


「 うっへっへっへ…… んであんたみたいな可愛いくて頭が良さそうな子が、どうしてあんな汚ねぇ金のない不細工でそんでもって…… クソみたいな男を選んだんだい? 」


とつてもなく口は悪い。


「 まぁ色々ありまして…… 鶴子さんは。 」


「 鶴子さんなんて他人っぽいだろ?

鶴ちゃんって呼んでおくれ。 」


( 何だか口は凄い悪いけど、凄い優しい人。

友達が出来て良かったなぁ。 )


萌は少し笑いました。

辛い事が連続していたので、些細な事でも嬉しく感じました。


長くお話しながらおやつも食べて、また大掃除をしようとする。


「 萌ちゃん一人じゃあれだろ?

若い女の子じゃいつまで経っても終わりやしない。

ちょっと待ってな。 」


そう言って外へ。

そして適当に部屋中の扉を叩き始める。


「 おめぇらーーっ、男の力が必要だよ。

さっさと出てきなぁ。 」


まるで猛獣扱うサーカス団員の如く、大声で男達に大声で呼び掛ける。

するとゆっくり扉が色んな場所から開く音が聞こえました。


( え…… えっ!?

鶴ちゃんはここの住人を手懐けてるの?

凄いわぁ…… 。 )


女性の大先輩。

まさかこんなに強くなれとは思いませんでした。

萌は驚きの連続。


「 うるさいなぁ…… 夜勤帰りなんだよ。

無理矢理起こすなよ。 」


一階の部屋から出て来てのは、トラック運転手のおじさん。

40代の男性、みんなからはトムさんと呼ばれている。


「 力仕事だよ、手伝いな! 」


大家さんはお構い無しに手伝わせようとする。


「 俺は疲れてるんだよ。

他のヤツに頼めよ。 」


眠そうに中へ戻る。

タダでやる人はそう簡単には居ません。


「 大家さんすみません…… 。

僕には大学受験の為勉強がありますので。 」


またその隣の部屋に住んでる浪人生。

三度の受験に失敗しているので必死。

また中へ戻ってしまう。


「 すみません…… 疲れてるので。 」


二階に住んでる建築士の男。

まだまだ新米で雑用ばかりで疲れている。

また部屋の中へ。


「 鶴ちゃん…… そりゃ手伝ってくれないよ。

私一人で頑張るから大丈夫。 」


萌が悪そうにそう言いました。

大家さんは全く諦めてなさそう。


「 若い女の子が困ってるぞぉーーっ。

困ったなぁ。 」


大きな声で大袈裟に言いました。

すると中から男達が出てきました。


「 困ってるのをほっとけないねぇい。 」

「 仕方ありませんね…… 女性には色々キツイ事がありますので。 」

「 物作りは任せて下さい。

女性には優しくしなくてわ。 」


単純で女の子の前でカッコいいとこ見せたくて、どうしようもない男達が出てきました。


「 お前らぁーーっ!

あたしの為だと思ったら逃げた癖して。 」


大家さんは分かっていたけど腹が立ってしまう。

萌は面白くてクスクス笑いました。

部屋の大掃除は周りを巻き込みつつあるのでした。

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